「日なたぼっこ」の「ぼっこ」って何? 【知って得する日本語ウンチク塾】

 「フルぼっこ」とは関係なし。「日なたぼこ」「日なたぼっこう」から変化した語が「日なたぼっこ」

結論を先に言いますと、実はよくわからない謎のことばなのです。

「ぼっこぼこにする」「フルぼっこにする」などと言うときの「ぼっこ」と同じですが、何の関係もありません。こちらの「ぼっこ」は、何回も殴ったりけったりするさまを言う俗語です。 

「フルぼっこ」「ぼっこぼっこ」とは無関係!

 

もともとは別の言い方があった

話が少しややこしくなりそうですが、「日なたぼっこ」はもともと別の言い方がありました。

何かというと「日なたぼこ」「日なたぼっこう」で、「日なたぼっこ」はその変化した語だと考えられています。

「日なたぼっこう」の方は、「ぼっこう」は「北行」の意味だという説があります。確かに、日なたでお日さまの光を背に浴びると、体は北向きになります。でもそういうことなのかどうかはわかりません。さらに「日なたぼっこう」が変化して「日なたぼこう」という語も生まれました。 

しかも、「日なたぼこ」にはさらにもとの語があり、「日なたぼこり」だとされています。文献例を見る限りでは、「日なたぼこり」が一番古い形のようです。平安後期の説話集『今昔物語集』でも使われています。「ぼこり」ですが「ほこり(埃)」とは何の関係もありません。いかにも暖かそうなさまという意味で使われる「ほっこり」にも似ていますが、これとも関係はなさそうです。

ただ、「ほっこり」に似ているせいか、「日なたぼっこ」は、ことばそのものが、何となく暖かさを感じさせるような気がしませんか。同じように日光を浴びることをいう「日光浴」よりも、ずっとのどかな感じがします。 

 

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)が好評発売中。

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