子どもの歯が白く濁るのは虫歯のサイン! 歯が溶ける「脱灰」は「再活性化」で守れます

1歳10ヶ月の定期歯科検診で、上の前歯2本が弱っている(脱灰している)と指摘されました。息子が「何か食べたい」と言えば食べ物を渡したりして、一日中何かしら口に食べ物が入った状態を作ってしまったことを反省。
脱灰して白く濁った歯は元に戻せるのか、生えかわる永久歯に影響はあるのか…など、気になっていることを歯科衛生士の江頭小百合さんにうかがいました。

脱灰とは虫歯のこと

息子の前歯が「脱灰しているけど今のところは治療は必要ない」と歯医者で言われたことを勘違いし「脱灰しているけど虫歯ではないんだ」と思っていた私。

いいえ、違います。歯科衛生士の江頭さんに「脱灰は虫歯」と教えてもらいました。どこまでが「脱灰」で、どこからが「虫歯」という線引があるわけではなく、脱灰の進行段階で虫歯の治療が必要かそうでないかが違うだけなんです。

脱灰は日々起きていて、初期段階では唾液の成分などによって修復されています。修復が効かなくなってくると歯が白く濁り、脱灰が進行するといわゆる治療が必要な「虫歯」と呼ばれる段階になってきます。

再石灰化が脱灰を食い止める

脱灰は日々起きているにも関わらず、治療が必要なほどの虫歯にならないのは「再石灰化」のおかげです。

食事によってお口の中が酸性になると、歯の表面を守っている「エナメル質」のミネラル成分が抜けて「脱灰」を起こします。しかし、食後の歯磨きや唾液の成分によって中性に戻ることで、歯の表面が修復されて元に戻ります。このように修復することを再石灰化といいます。

脱灰と再石灰化のバランスが保たれることで、脱灰の進行を防ぐことができます。

ただし、脱灰の進行を防ぐことができるのは、歯の表面の「エナメル質」までです。次の層の「象牙質」まで達してしまうと食い止めることができないので、削って詰める「虫歯治療」の対象になります。

白く濁った歯は弱っていて安心できない

エナメル質までは再石灰化のおかげで脱灰の進行を食い止められるとはいえ、お口の中が中性に戻る暇なく酸性にさらされて脱灰を繰り返すと、エナメル質の透明感が無くなり、白く濁った色になってしまいます。

一度脱灰して白く濁った部分は、他の歯質よりも弱く、さらに脱灰しやすいので注意が必要です。よく、骨は「骨折したら修復することで逆に強くなる」と言われたりもしますが、歯はそういうわけにはいきません。

また、脱灰しやすい部分は、食べ物や飲み物、歯垢などが付きやすい部位ということなので「脱灰した場所=虫歯になりやすい場所」でもあります。歯磨きの時に汚れが残らないよう、特に注意する必要があります。

乳歯の脱灰は後続永久歯に影響しないが…

脱灰は「酸」によって歯が溶けて起こる現象なので、乳歯が脱灰していても、その時期に後続永久歯は歯ぐきの中で守られていて一緒に脱灰することはありません。

影響があるとすれば、乳歯の虫歯がC3、C4くらいまで進行しているのに「どうせ抜けるから」と放置してしまうと、乳歯の根っこの下に膿が溜まることがあります。そうなると後続永久歯が長期間膿にさらされてしまい、脱灰したような状態で生えてくるという症例はあるそうです。

繰り返しになりますが「脱灰した場所=虫歯になりやすい場所」ということ。キレイに生えかわった永久歯が虫歯にならないように、特に注意してメンテナンスしてあげたいですね。

一度白く濁った歯は元の透明感を取り戻せない

白く濁った歯が乳歯であればキレイな歯への生え変わりも期待できます。一方で、永久歯の場合は残念ながら元の透明感ある歯に戻すことはできません。

前歯の目立つ部分が白く濁ってしまい、どうしても気になる場合は、歯科用プラスチックで虫歯治療のように白い部分を削って埋めるか、セラミック素材でおこなうラミネートベニア(付け爪のような修復)で修復することもあります。
奥歯など目立たない部分は、修復のために歯を削るほうがリスクがあるので、そのまま様子を見たほうが良いと考えられています。

ちなみに「ホワイトニング」は、歯の漂白(脱灰と同じ)で白く見せる処置なので、天然歯の透明感を戻すことはできません。

再活性化を促す3つの方法

時間を決めてダラダラ食べない

3食+おやつの時間はできるだけ同じ時間に決めた時間内で切り上げることを心がけましょう。ダラダラ喰いが一番危険です! お口の中に頻繁に食べ物が入った状態では、酸性に傾いたお口の環境を中性に戻すことがなかなかできないため、再石灰化されず脱灰したままの状態になってしまいます。

ダラダラ喰いのリスクについては、こちらの記事も参考になります

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食べたあとは”うがい”または”水を飲む”習慣をつける

食べたあとは歯磨きで汚れを取ってあげるのが理想的です。でも、磨けないときもあると思います。そんなときは、うがいするか、水を飲むようにしましょう。

お口のなかが中和され、再石灰化しやすい環境にすることができます。

特に、前歯の脱灰は飲み物で生じることが多いそうです。食べ物だけでなく、ジュースなどを飲んだあとも水で中和することを心がけましょう。

もちろん歯磨きできるときはしましょう。

歯科医院で定期的な予防ケアをおこなう

どんなに歯磨きや食事・おやつの工夫を頑張っていても虫歯になってしまうという人もいます。お口の環境や歯質など、さまざまな要素があると思いますが、セルフケアが難しい場合は、予防ケアをプラスすることも方法の一つです。

例えば、このような方法があります

  • 歯科医院でフッ素を塗布して歯質を強化
  • 磨きにくい奥歯の溝にシーラントを埋める
  • ホームケアとして市販のフッ素洗口剤や歯磨き剤をプラスする

※予防でおこなうフッ素やシーラントは強制ではありません。お子さの歯質や特性(歯磨きを嫌がるなど)に合わせて選択してください。

まとめ

「チョコレートは虫歯になるから与えない」という話はよく聞きます。確かに、お口のなかに長く留まりがちなチョコレートは虫歯になるリスクが高くなります。でも、江頭さんの話をうかがい、虫歯のリスクは甘いものだけでなく、どんな食べ物でも起こりうることだと改めてわかりました。

甘いか否かに関わらず、お口のなかに食べ物や飲み物が入ったあとは歯を磨き、酸性に傾いたお口の中を中性に戻してあげること。甘い食べ物だけが「悪」なのではなく、ダラダラ喰いなどの生活習慣を見直すことも大切ですね。

教えてくれたのは…

江頭小百合さん
歯科衛生士、日本Webライティング協会認定ライター、3姉妹の母。子どもたちへ虫歯にならないための知識を伝えたいと歯科衛生士になる。その後小児歯科に通算10年勤務し、3人目出産後Webライターに転身。臨床の知識と経験を活かし、歯科情報サイトの執筆・監修や歯科医院のホームページ制作に携わっている。

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構成・文/村上詩織

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