相対性理論とは?
相対性理論という言葉は知っていても、提唱した人物や2種類の理論があることを知らない人は多いでしょう。
まずは、相対性理論の基本をおさらいします。
アインシュタインが導き出した物理の理論
相対性理論とは、「アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955年)」が導き出した、時間や空間に関する考え方です。
1905年に発表された「特殊相対性理論」と、1916年に発表された「一般相対性理論」の2種類を総称して「相対性理論」と呼んでいます。
アインシュタインは相対性理論のほかにも、従来の常識を覆す物理理論をたくさん提唱した天才科学者です。
1921年には「光電効果の法則の発見」などが評価され、ノーベル物理学賞を受賞しています。受賞の翌年には日本にも招かれ、各地で講演を行いました。
「一般相対性理論」と「特殊相対性理論」の違い
「一般相対性理論」と「特殊相対性理論」は何が違うのでしょうか。名前だけ見ると「特殊」と付いているほうが難しそうですが、実際は逆です。
特殊とは「特殊な条件を前提とした法則」のことで、「特殊相対性理論」は「重力の影響がない状態」を前提にしています。
しかし、地球上では全てのものが重力の影響を受けるため、現実には特殊相対性理論のような現象は起こりません。
そこでアインシュタインは、特殊相対性理論に重力の影響を加味した法則を研究し、「一般相対性理論」として完成させたのです。
光の速さに関する現象を相対性理論で解説
アインシュタインは特殊相対性理論の中で、「光速不変の原理(どこで測っても光の速度は変わらないこと)」の考えに基づき、光の速さに関する三つの現象を説明しました。
小学生にも身近な「光」をテーマに、相対性理論の内容を見ていきましょう。
光の速度よりも速く進むものはない
現在、光が世の中で最も速く進むことは、多くの人が知っている事実です。では、科学技術が発展すれば、人類は光よりも速く移動できるのでしょうか?
相対性理論では、それは不可能とされています。
物体が動いているときは、止まっているときよりも重くなります。速く動くほど重さは増していき、光速に近づく頃には「無限大」の重さとなってしまうため、それ以上は加速できません。
このため、将来どんなに速い乗り物が開発されたとしても、光より速く動けるようにはならないのです。
光の速度に近づくと縮んで見える
相対性理論では、周囲よりも速く動く物質は、周囲から見ると縮んで見えるとしています。人でも飛行機でも、動いているものは全て、止まっているものからは縮んで見えるのです。
ただし、あまりにも縮む変化が小さ過ぎるため、私たちは縮んで見えていることに気付けません。縮み具合は速度によって変わり、明らかに縮んで見える状態にするには光速に近づく必要があります。
もし、光速並みの速度を出せるロケットが地球の近くを飛んでいたら、実際の長さよりも短く見えるでしょう。なお、物体が横方向に動いている場合は横幅が、縦方向に動く場合は高さが変化します。
光の速度に近づくと時間が遅くなる
特殊相対性理論には、おとぎ話の「浦島太郎」のような現象も登場します。動いている状態と静止している状態とでは、動いているほうの時間が遅く流れるというのです。
先述の「縮んで見える」と同じように、歩いている人の時間も、止まっている人より遅く進むとされています。ただ、時間差をはっきり認識するためには、やはり光速に近い速さが求められます。
もし、光の速さに近い宇宙船での宇宙旅行が実現すれば、宇宙船の中と地球との時間差がはっきりと表れ、竜宮城から戻った浦島太郎のような体験ができるかもしれません。
重さに関する現象を相対性理論で解説
「重さ」は光の速さと並んで、相対性理論を説明するときに欠かせないキーワードです。アインシュタインが「重さ」から導き出した内容を、簡単に解説します。
重さとエネルギーは同じもの
相対性理論が提唱されるまで、エネルギーは動いているものや、熱や電気を持つものにだけ存在すると考えられていました。
しかし、アインシュタインは止まっているものにもエネルギーがあり、エネルギーは重さに比例すると提唱します。そして、以下の式で自分の考えを表しました。
E=mc2
Eはエネルギー、mは重さ、cは光の速度です。アインシュタインは、「重さ」と「光の速度の二乗」をかけたものがエネルギーであるとしています。
光の速度は一定なので、重さとエネルギーは比例関係となり、重さが増えるとエネルギーも大きくなるのです。
重力は時間を遅くする
アインシュタインは、一般相対性理論で重力が時間の流れに影響することを説明しています。この説によると、重力に近づくほど時間は遅く流れます。
例えば、重力の影響を受けている地球の中心部に近づく「海底」のほうが、地球の地表から離れる「エベレストの山頂」よりも、時間の流れが遅いことになるのです。
2020年には、東京大学の研究チームが東京スカイツリーで実験を行い、展望台の時間が地上よりも1日につき4/10億秒速く進んでいることをつきとめました。
高低差によって時間の進み方が異なる事実が証明されたことで、地震予知のための海底火山活動の調査や、自動運転に用いる標高差計測システムなど、さまざまな技術への応用が期待されています。
参考:~東京スカイツリーで一般相対性理論を検証~ : 物理工学専攻 牛島一朗助教、香取秀俊教授ら|工学部/工学系研究科 プレスリリース
重力は空間を曲げる
一般相対性理論では、質量を持つ全ての物体は周りの空間を曲げると考えられています。空間の曲がりが引き起こす現象が重力です。
空間の曲がり具合は質量が大きいほど大きく、星のような非常に重いものの周囲では、同様に強い重力が発生します。この世で最も速い速度で移動できるはずの光ですら、吸い込まれてしまうほどの重力を持つ天体が「ブラックホール」です。
時間の流れは光速に近づくほど、重力に近いほど遅くなります。このためアインシュタインは、強力な重力を持つブラックホールの周辺では時間が止まるとしています。
例を使って小学生に相対性理論を説明しよう
速さや重力によって時間の流れが変わるといわれても、子どもにはピンとこないかもしれません。小学生が興味を持てそうな話題を紹介するので、説明に役立てましょう。
アインシュタインが残した言葉
相対性理論を理解するためには、まず「相対性」が何かを知る必要があります。アインシュタイン自身も、一般の人に相対性を説明するために次の言葉を残しています。
「熱いストーブの上に手を置くと、1分が1時間に感じられる。でも、きれいな女の子と座っていると、1時間が1分に感じられる。それが、相対性です!」
出典:なぜ楽しい時間は速く過ぎるのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
現代の小学生には、「熱いストーブ」を学校の授業に、「女の子といる時間」をテレビやゲームの時間にして説明すると、より伝わりやすいかもしれません。
相対性のイメージがはっきりしたところで、理論の内容を説明してあげるとよいでしょう。
理論上はタイムトラベルも可能?
相対性理論に従えば、光速または光速に近い速度で移動することにより、未来へのタイムトラベルが可能となります。
しばらくの間、光速で動く宇宙船で過ごして地球に戻るだけで、何年も先の未来にたどり着けるのです。
ただし、現段階では光の速度に近づく手段がない上に、過去に戻る方法も見つかっていません。仮に光速に近づけたとしても、一旦未来に行ってしまったら二度と現在に戻れないということになります。
これではタイムトラベルの意味がないため、現実的には不可能とされています。もし、過去に戻る方法が見つかれば、アニメやゲームに登場するSFの世界が現実になるかもしれません。
奥が深い相対性理論
ものの速さ・重さと時間の流れを結び付けた相対性理論は、とても奥が深い理論です。科学技術を発展させ、「空を飛びたい」「宇宙へ行きたい」といった夢を実現させてきた人類も、時間だけはコントロールできませんでした。
しかし、アインシュタインは相対性理論によって、時間さえも移動できるという夢を見せてくれたのです。未来を担う小学生にも相対性理論をわかりやすく伝え、物理学の世界に興味を持たせてあげましょう。
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構成・文/HugKum編集部