子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。
子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!
「子どもがお友だちにケガをさせた」と園の先生から連絡を受けました。ただ、その争いは相手の子どもがいじわるをしたのが原因のようです。親としてどのように対処したらいいでしょうか。(神奈川県 M・Kさん)
ケガをした子の親にもケガをさせた子の親にも園から謝罪と報告をします
ケガをするようなトラブルが園で起きる場合、その原因はさまざまです。そして、その原因が明らかな場合もあれば、よくわからない場合もあります。なぜなら、こういったトラブルは、大人が見ていないときに起きることが多いからです。
また、原因が明らかな場合でも、当事者や周りにいた園児たちに細かな経緯や事情を聞くと、どこかチグハグだったり、ズレていて、100%状況を把握できるとは限らないことも多いのです。幼児の認知能力や言葉はまだ発達途上のため、自分のわかっていることを自分の知っている言葉でしか表現することができないためです。
とはいえ、園で起こったトラブルは、その原因が何であっても、園の責任です。ケガをしたお子さんの親御さんには、まず園からきちんとお詫びをします。
原因が不確かな場合は、断定ではなく、わかっている部分とわからない部分を正直に伝え、誠意をもって謝罪します。
この点は、ケガをさせた子どもの親御さんに伝えるときも同じです。時間をおかず、速やかに双方の親御さんにお伝えします。
実際に対面して子どもと一緒に謝罪しましょう
そのうえで、ケガをさせた子どもの親御さんには、相手の子どもの親御さんにお詫びをしてもらうようお願いしています。ケガをした子どもがいの原因をつくったケースでは、ケガをさせた子の親御さんには、いくらかの不満があるかもしれません。しかし、当園では「ケガをさせたという事実に対して、お詫びをしましょう」とお願いしています。
また、謝罪をする際はなるべく早いタイミングで、実際に会ってお詫びするのが原則です。もし、それが困難な場合は、まず電話で謝罪してもいいと思います。
しかし、そのとき会話の中で「また改めてお目にかかり、お詫びしたい」と、ひと言添えるようにしましょう。電話や文字だけでは十分に気持ちは伝わりません。
重要なのは、子どもの前で謝罪を行うこと。謝っている親の姿を見せておくことが大事です。
親の価値観や生き方はさまざまなので、謝罪をしても気まずい雰囲気が続いたり、関係がぎくしゃくするようなこともあるでしょう。そんなときには、ひとりで悩まず、園に相談してください。双方の親御さんのことを熟知しているのは、園の先生方です。責任を持って対処していきます。
当事者双方の子どもには教育的指導とケアを園がしていきます
ところで、このような場合、園では保護者の方とは別に、当事者の子どもに対して、教育的指導とケアをしっかり行っていきます。双方の子どもの言い分や気持ちをしっかり受け止めたうえで、悪い点は諭し、謝罪をさせ、お互いのしこりを残さないよう配慮して保育をしていきます。その点は、ぜひ園の先生方を信頼していただけたらと思います。私たち保育者は、子どものよりよい育ちを何より願っているのです。
回答していただいたのは…
宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。
構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2014年11月号