「兄弟喧嘩を何度諭しても、変わる気配がない。対処法は?」【保育経験41年・元園長先生の相談室30】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

4歳の男の子です。兄弟でトランプやゲームをして負けると、毎回、怒って泣きます。何度諭しても、いっこうに変わる気配がなく悩んでいます。どのように対処したらいいでしょう。

山口県 K・Hさん

 

勝ち負けにこだわるのは成長の証しです。気持ちを受け止めてあげて

成長して、ある一定の年齢になれば、2、3歳の年齢差は能力においてはあまり関係がなくなって、得手不得手という個性となります。しかし、幼児期は月齢によって、発達や発育が大きく異なる時期で、年齢が上のお兄ちゃんやお姉ちゃんには、何度挑んでも、どうしても勝てないことがままあります。そんなとき集団生活をしている園でなら、担任がしっかりと指導をすることができますが、家庭でお母さんが采配をふるうのは、なかなか大変だと思います。

でも、勝負に負けたときに、ふてくされたり、怒ったりして、感情をあらわにするのは、成長の証しです。たとえば3歳児のかけっこでは、スタートしてもみんなで一緒に走ろうとしたりしますが、それが4歳になると、隣りの子を見ながら少し前へ出て走り、勝つことの心地よさもある程度わかるようになります。このような変化が起こるのは、自分のことだけでなく、周囲のことを見る目が育ってきたからです。この点を、お母さんはまず理解してください。

その上で、負けてがっかりしている子どもの心に寄り添ってあげてほしいと思います。

「くやしいね。ママにもこういうことがあったのよ」と共感し、「でもね、あきらめずに頑張っていると、必ず力がつくんだよ」と、励ましてあげてほしいのです。

こうした親の言葉かけや関わり方が、子どもの育ちにはとても重要です。繰り返し、こうした言葉かけをしていくことで、子どもは勝負に負けても、気持ちを上手に切り替え、新たな勝負に臨む意欲を失わない子に育ちます。

「あなたは小さいのだから、しかたないでしょ」となぐさめるだけだったり、「怒って泣いても勝てないのよ」「まだゲームは早いわね」と突き放すような言い方をするのは厳禁。子どもが成長する、せっかくのチャンスを逃してしまいます。

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子どもの気持ちに向き合い、繰り返し伝え続けることが「しつけ」です

言葉だけでは気持ちを切り替えられないようであれば、ときにはお母さんがお子さんと勝負して、たまに負けてあげるのもいいでしょう。大事なのは、常に勝たせてあげるのではなく、勝ったり負けたりする経験をさせてあげること。そうすることで勝負とはどういうものなのか、勝負のおもしろさを理解することができます。

忙しい日常生活の中で、子どものこうした感情にお母さんがつきあっていくのは、大変なことだと思います。でも、これが子どもと向き合う親の務めでもあります。お母さんが諭しても、子どもは感情のコントロールをすぐにはできないのがふつうです。その都度、子どもとしっかり向き合い、繰り返し、気持ちを伝えていく。これが「しつけ」をするということです。

長い人生の中では、さまざまな場面で勝負があり、うまくいかないことがたくさんありますよね。お子さんはいま、その入り口に立っているのです。おとなでも気持ちの切り替えは難しいものです。ぜひ、温かい目で見守ってほしいと思います。

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回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2015年1月号

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