子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。
子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!
3歳の女の子ですが、お風呂に入るのを嫌がります。お風呂場に連れていくのも大変で、毎晩、怒ったり、あやしたりしながら体を洗っています。どうしたらスムーズに入ってくれるでしょうか。
岩手県 J・Oさん
誘うタイミングが大事。お風呂が楽しい場所だと実感させてあげましょう
まず、お風呂に誘うタイミングに気をつけましょう。お風呂がさほど嫌いでなくても、子どもは夢中になって遊んでいたり、テレビを見ている途中で入浴を無理強いされると、機嫌が悪くなります。お母さんの都合だけで誘わずに、子どもの様子を見ながら誘うよう心がけてください。
お風呂が楽しい場所だというイメージを、子どもに持たせることも大事です。そのためには単に体を洗うだけでなく、親子で水遊びをしたり、石けんの泡で遊んだりして、楽しい経験をさせてあげてください。お風呂用のおもちゃやクレヨンを用意しておいて、遊ばせてあげるのもいいと思います。入浴後、パジャマに着替えたら、冷たいお茶を飲ませてあげたり、絵本を読んであげたりなどの「お楽しみ」をつくるのも、ひとつの方法です。このようにさまざまな楽しい体験を積み重ねていくことで、少しずつですが、お風呂がおもしろいところだと思うようになり、徐々に嫌がらないようになると思います。
体がきれいになることは気持ちがいいことを教えてあげましょう
またその一方で、子どもに入浴の気持ち良さを伝えるのも大事です。私たち大人は湯船に浸かれば疲れがとれるし、体を洗えばさっぱりして、入浴は気持ちがいいものだと感覚的にわかっていますが、幼児の場合はその良さをまだ実感できていないことが多いからです。
例えば、子どもは大人より体温が高いので、大人が心地いいと思う温度の湯船にじっくり浸かるのは、熱くて苦痛な場合もあります。風呂場から出たあとの寒さがよほど厳しくない限り、体を湯船で温める際は、温度に気をつけたうえで、長湯を無理強いせずに、出るようにしましょう。
また、体をきれいにすると気持いいという感覚を、子どもはあまりわかっていません。お母さんやお父さんが、子どもの体を洗ってあげるときに、「ああ、汚れもとれてさっぱりしたね。気持ちいいね」という言葉かけを繰り返ししてあげましょう。毎回声かけをしていくことで、「気持ちいい」という言葉の意味と自分の感覚が結び付いて、入浴の気持ちよさが自然にわかるようになります。
手がかかる時期は子育てにおいては一瞬。母として幸せな時間です
入浴は毎日のことなので、お子さんがぐずるのをなだめたり、あやしたりするお母さんは、本当に大変だと思います。
けれども、長い子育ての中で、そうした手のかかる時期を過ごすのは、一瞬とも思える短い期間です。私自身もそうですが、子どもが大きくなってから振り返ると、その時期が、母親としてとても幸せなときだったと懐かしく思えるようになるものです。
回答していただいたのは…
宝仙学園幼稚園元園長。2007年から2019年3月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。
構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2015年3月号