酸化とは?
「酸化」とは、どのような現象を指すのでしょうか。まずは酸化の定義をおさらいしてみましょう。
物質と酸素が化合する反応
酸化とはその名の通り「物質が酸素と化合する反応のこと」です。反対に、酸化物から酸素を除く反応は「還元」と呼ばれています。
酸化と還元を最初に定義したのは、18世紀後半に活躍したフランスの化学者ラボアジエです。後に研究が進み、酸化や還元は酸素以外の要因でも広く起こることが明らかになりました。
現在では物質を構成する原子や分子、イオンの間で電子が移動する反応を、酸化・還元と呼ぶこともあります。
さまざまな酸化
酸素によって起こる酸化は、私たちの日常生活でもよく見られます。身近で起こっている酸化の例を見ていきましょう。
食品に起こる酸化
食品は、製造から時間が経つほど見た目や風味、栄養的な価値が損なわれていきます。劣化を引き起こす要因のほとんどは、食品に含まれる成分の酸化です。
酸化しやすい成分には、脂質・アミノ酸・色素・フレーバー(香料)などがあります。例えば、劣化した食品から放たれるいやな臭いは、アミノ酸が酸化して発生した硫黄化合物が原因です。
鮮やかな色の緑黄色野菜や果物が、色素の酸化によって退色してしまい、残念な見た目になることもあります。リンゴを切って放置すると、断面が茶色く変色するのも酸化が原因です。
一度酸化した食品は、元の状態に戻ることはありません。新鮮なうちに食べるよう心がけましょう。
金属に起こる酸化
金属の表面に現れるさびは、金属の成分が空気中の酸素と結びついてできる酸化物です。身近な例としては、釘やフライパンなどの鉄製品にできる赤さびや、10円硬貨の表面にできる黒いさびがあります。
さびを放置すると、金属が劣化して使えなくこともあるので注意が必要です。金属の酸化はゆっくりと進行するため、いつの間にか色が変わったように見えることもあります。
財布の中から10円玉をいくつか取り出し、並べてみると色の違いがよく分かるでしょう。
人体に起こる酸化
食品や金属の例を見てもわかるように、酸化はほとんどの場合、あまりよい結果をもたらしません。
しかし残念ながら、私たち人間の体の中でも酸化は起きています。人体を酸化させる原因となる物質は「活性酸素」と呼ばれています。
活性酸素とは、呼吸によって体内に取り込んだ酸素の一部が変化したものです。活性酸素が増えると、体内のさまざまな物質と結びついて酸化を促進し、細胞にダメージを与えます。
加齢とともにしみやしわが目立つようになったり、皮膚のハリが失われたりするのは、活性酸素による肌細胞の酸化が原因です。
抗酸化とは
活性酸素の働きを阻害し、体の酸化を抑制する作用を「抗酸化」といいます。人体にはもともと抗酸化物質を作り出す機能が備わっており、酸化から身を守っています。
しかし体内の機能は、加齢とともに低下するものです。そのままでは活性酸素の増加や活動を止められず、がんや動脈硬化などを引き起こすおそれもあります。
足りない抗酸化物質は、食品で補うことも可能です。ブルーベリー・大豆・ゴマなどに含まれる「ポリフェノール」や、緑黄色野菜に多いβ-カロテン・リコピンなどの「カロテノイド」は、抗酸化作用が高いことで知られています。
酸化と還元の違い
「還元」は前述の通り、酸化と密接な関係にある化学反応です。理科の授業でも、酸化とセットで登場します。混乱しないように、違いをしっかりと押さえておきましょう。
還元とは
一般的に、還元とは物事を「元の状態に戻すこと」です。化学においては、酸化物から酸素を取り除き元の成分に戻す反応を、還元と呼んでいます。
鉄鉱石から鉄を取り出す「製鉄」は、還元反応の代表的な例といえます。鉄鉱石の主な成分は、地中で鉄と酸素が結びついてできた酸化物です。
そのため、還元反応を起こして酸素を取り除いてあげれば、酸化前の純粋な鉄に戻せます。なお鉄鉱石の還元は、以下のようにコークス(炭素を主成分とする燃料)を使って行われます。
1.鉄鉱石にコークスを混ぜて加熱
2.鉄鉱石の酸素がコークスの炭素と結びつく
3.残った鉄の成分を取り出す
酸化還元反応とは
「酸化還元反応」は化学反応の一種で、酸化と還元が同時に起こる反応です。ある物質が還元されるとき、反対側には必ず酸化する別の物質が存在します。
製鉄の場合は還元される物質が鉄鉱石で、酸化する物質がコークスです。コークスが酸化し二酸化炭素となって出ていくことで、後に鉄の成分だけが残るのです。
酸化還元反応は、言葉だけを聞くと少し難しく感じられるかもしれません。鉄鉱石とコークスのように、異なる物質同士で酸素の受け渡しをしていると考えると、イメージしやすいでしょう。
意外と身近な「酸化」について学ぼう
酸化は主に、空気中の酸素によって引き起こされる化学反応です。酸素を吸って生きている人間の体内でも、常に酸化が起こっています。
速度の違いはありますが、空気に触れるものはいずれは酸化すると考えてもよいでしょう。食品の劣化やさびなど身の回りで起こる酸化反応を見逃さず、子どもに具体的に例を見せてあげると、より理解が深まるかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部