小3では約3人に1人、小6では約2人に1人が視力1.0未満の現代。1日2時間の外遊びで近視の進行を防ごう!

子どもたちの近視が世界中で増加しており、日本でも問題になっています。文部科学省が2022年7月に発表した「令和3年度学校保健統計調査(速報値)」によると、裸眼視力1.0未満の子どもの割合は、小1で約4人に1人。小3で約3人に1人、小6では約2人に1人という結果に。子どもの近視に詳しい、東京医科歯科大学 眼科学教室 五十嵐多恵先生に、子どものうちから近視になることの問題点と予防について教えてもらいました。

子どもの近視の要因は外遊びの減少と、スマホなどの小さい画面を見続けること

子どもの近視が増えている要因の1つは、屋外活動や外遊びの減少です。コロナ禍、感染対策のため外遊びなどで外に出る機会が減り、ますます近視になる子が増えています。またスマホや携帯ゲーム機など小さい画面を近くで見て長時間ゲームをしたり、動画を見たりするのも近視の要因です。近視になりやすい子の特徴は次の通りです。

【近視になりやすい子の特徴】

□親が近視である

□字を書いたり、本を読んだりするとき姿勢が悪い

□外遊びなど屋外で活動する時間が短い

□スマホや携帯ゲーム機などの小さい画面を近くで見ながら、長時間ゲームをしたり、動画を見ている

□長時間、読書をしている

子どものうちから近視になると、20歳過ぎまで視力が低下し続ける

子どもの近視で問題なのは、進行が早く20歳過ぎまで視力が低下し続けることです。低年齢で近視になるほど、進行は早いです。

また近視だと加齢に伴い、白内障、緑内障、網膜剥離などの目の病気のリスクも高まることがわかっています。

子どもは自分から「見えにくい」と訴えないこともあるので、次のサインが見られたときは近視を疑って、眼科で診てもらいましょう。

【家庭で気づける近視のサインは?】

1.テレビを見るときに近づく

2.遠くを見るとき目を細めたり、顎を上げたり、顔を傾ける

3.黒板の文字が見えにくいと言う

近視予防には、1日トータル2時間以上屋外で過ごすことが有効

近視を防ぐには1日トータルで2時間以上、1000Lux(ルクス)以上の明るさがある場所で過ごすことが有効です。

1000Lux以上の明るさがある場所とは、屋外です。

室内では明るく見えても300Lux程度しかありません。そのためシンガポールや台湾では、子どもの近視を防ぎ、進行を抑えるために学校で屋外活動をさせるなど積極的に取り組んでいます。

屋外活動や外遊びといっても、外でサッカーをしたり、鬼ごっこをするなど走り回らなくてもOKです。木陰のベンチに座って友だちとおしゃべりをしていてもよいので、1日トータルで2時間以上は屋外で過ごしましょう。日差しが気になるときは帽子をかぶっても構いません。

太陽の光が降り注ぐ校庭だと10Lux以上。薄暗いと感じる木陰でも7000Luxぐらいあります。冬だと数値は落ちますが、それでも屋外なら近視予防に有効な明るさがあります。

たとえば小学校の休み時間と体育の授業で1時間30分、屋外で活動するならば、帰宅後あと30分は公園などで遊ぶようにしてください。

ゲームや動画は、テレビやタブレットなど大きめの画面で!

また、なかには「目が悪くなるから、ゲームや動画の視聴をやめさせたい」と悩んでいる、お母さんやお父さんもいると思います。長時間ゲームをしたり、動画を見ることは確かに近視の要因になりますが、1日2時間以上屋外で活動し、スマホなどの小さい画面ではなく、テレビやパソコン、タブレットなど大きめの画面を離れて見るようにして、近視の進行を防ぎましょう。

小学校の視力検査でB判定以下ならば、眼科で再検査を

小学校で行われる視力検査は、結果をABCD4段階で以下のように評価しています。

A 1.0以上 

一番後ろの席からでも、黒板の文字がよく見える。

B 0.90.7 

後ろの方の席でも黒板の文字はほとんど読めるが、近視の始まりのことが多く、眼科の受診を勧める。

C 0.60.3 

後ろの席では黒板の文字は見えにくく、近視以外の目の病気にも注意が必要。

D 0.2以下

前の方の席でも黒板の見え方は十分ではない。

子どもの視力は正しく検査するのが難しいため、B判定以下の場合は念のため眼科で再検査を受けましょう。

眼鏡をかけても外遊びでの予防は心がけて

眼科で眼鏡を作るように言われた場合は、視力にぴったり合う度を選ぶことが基本です。ただし眼鏡をかけても、子どものうちは視力が低下しやすいので、前述の通り外遊びをして予防を心がけてください。また最近は、近視の発症と進行に対する治療を行う近視予防外来も増えているので、気になるときは専門医に相談するのも一案です。

 

記事監修

五十嵐多恵先生|東京医科歯科大学 眼科学教室 助教
医学博士、眼科専門医。2004年 金沢大学医学部卒。2009年 東京医科歯科大学 眼科入局。川口市立医療センター眼科医長などを経て、現職。2021年より同大学眼科 講師(キャリアアップ)を務める。

取材・構成/麻生珠恵

構成/HugKum編集部

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