「漬けて焼くだけ」実験
家庭料理の定番食材である鶏、豚肉を、様々なものに漬けて焼いてみる、この企画。意外な食材の組み合わせや、やってみたかったアレンジレシピを、大胆に試していきます。
食育、味覚の発達は経験から
以前、4歳くらいのお子さんが「ご飯にお味噌汁をかけるとおいしいよ。」と、教えてくれた事がありました。なにげない一言ですが、毎日食べる食事から、自身が発見し、味わってきた気配が伝わり、今も心に残っています。
大人の私達でも、食材の組み合わせは未知の領域。知識と経験が豊富で、味覚が鋭い方でない限り、「やってみないとわからない」のが、本当のところではないでしょうか。
「どんな味になると思う?」と問いかけながら味覚を刺激し、自らの手で調理することで食育にも繋がります。ご自宅のキッチンで気軽に楽しむうちに、大発見に出会えるかもしれません。
実験の準備
今回用意した食材をご紹介します。
鶏、豚肉 × 漬け用食材
肉素材は、鶏、豚の2種です。
漬け用食材として用意したのは、5種類。「三ツ矢サイダー」「ポンジュース」「昆布茶粉末」「ピエトロドレッシング(和風しょうゆ味)」、海苔の佃煮「ごはんですよ」です。
これを、以下の組み合わせで実験します。
1.鶏肉 × 三ツ矢サイダー
2.鶏肉 × ポンジュース
3.鶏肉 × 昆布茶
4.豚肉 × ピエトロ
5.豚バラ肉 × ごはんですよ
実験スタート!
最初に、肉類を漬け用食材に漬け、冷蔵庫で1時間ほどねかせます。
漬けてみた! 【鶏肉編】
最初は鶏肉です。ポリ袋に食材を入れて、全体に行き渡る量の漬け用食材を加え、よく揉みます。これを冷蔵庫へ。
1.鶏肉 × 三ツ矢サイダー
鶏肉のコーラ煮は耳にしますが、色が透明な三ツ矢サイダーのほうが、使える場面が多いのでは!? 炭酸ガスの効果で柔らかくなるはず! 期待を込めて選出しました。甘酸っぱい三ツ矢サイダーはどんな感じになるのでしょうか。カットしたレモンも投入しました。
2.鶏肉 × ポンジュース
ポンジュースのもつ「甘みと酸味」によって、色のきれいな「甘酢煮」になると期待しています。さていかに。
3.鶏肉 × 昆布茶
塩も醤油も加えず、昆布茶粉末だけを全体にまぶしました。原材料欄を見ると、「食塩、砂糖、昆布粉末、調味料(アミノ酸等)」との記載。しっかりと塩が入っています。
漬けてみた! 【 豚肉編】
ここからは豚肉です。
豚肉にはあらかじめ、すりおろした生姜と、潰したにんにくスライスを入れています。
5.豚肉 × ピエトロ
豚肉を、イタリアンドレッシングの人気商品ピエトロに漬けました。しょうゆとオリーブオイルの組み合わせなので、間違いはないはず。
4.豚バラ肉 × ごはんですよ
真っ黒な海苔の佃煮、ごはんですよで、韓国海苔で和えたような下味にできないか、疑問を解消すべく、勇気と共に投入しました。最後に、キムチを加える予定です。
焼いて食べてみた! 結果発表‼
いよいよ焼いていきます。
味と共に、調理のポイントをチェック。活用するために、改良点がないか、探ります。
【鶏肉編】昆布茶は優秀な下味調味料に
1.鶏肉 × 三ツ矢サイダー、旨味が少なくガッカリ…
オリーブオイルをひいて温めたフライパンにのせて焼きました。レモンが焼ける香りが爽やか〜♪
炭酸の効果でお肉が柔らかく、上下を返す際には崩れそうになりました。
三ツ矢サイダーが煮詰まってシロップになり、照り焼きのように色がつきます。しょうゆは入れてないのに、この色。
味は、爽やかなレモンがフヮっと香りますが、旨味が少なく薄味。このままではおいしくありません。コーラ煮で甘味が前面に出るのとは対照的で、こちらはあまり感じられません。
岩塩をかけて、ハーブを添えて改良しました。不思議とレモンの風味がより引き立ちます。
次に作る時は、さらににんにくを加えて白ワイン蒸しを試してみたいと思います。
2.鶏肉 × ポンジュース、爽やかな風味、でも極薄味
次はポンジュースです。甘酢煮をイメージしているので、フタをして蒸し焼きにします。
火が通ったところで味見してみると、やはり薄味で物足りません。
改良として、しょうゆとみりんを2:1の割合で足し、ピーラーでむいた人参を加えました。グツグツと汁気がなくなるまで煮て、タレをからめて仕上げます。
しょうゆとみりんを足しても、甘酢煮というよりはフルーツ煮です。もしくは、みかん風味の筑前煮のような味。柔らかい酸味と柑橘の香りが心地よく、控えめながらポンジュースの存在感はあります。照り焼きなど、濃い味付けの隠し味として使うと良さそうです。
3.鶏肉 × 昆布茶、万能に使える!
油をひいて温めたフライパンに、昆布茶粉末で漬けた鶏肉を焼いていきます。
焦げつきもなく、皮目を押し付けて焼くとパリッと焼けます。
シンプルに焼いただけでおいしく、万能に使える予感。さらにしょうゆをほんの少し垂らすと、旨味がより引き出されました。
根菜や厚揚げと一緒に炒めたり、煮物の際に下味として揉み込んだり、幅広く使えそうです。ただし、塩分の量には注意。
【豚肉編】どちらもがっつりご飯に最適
どんどん焼いていきましょう。次は豚バージョンです。
4.豚肉 × ピエトロ、メイン料理やキャンプ飯にも!
ドレッシングにはオイルが入っているので、フライパンで炒める際に、油は必要ありません。加熱すると豚の脂も溶け出すため、激しい油はねにご注意! フタをして加熱すると、安全です。
味は完成度が高く、手を加えなくてもおいしくいただけます。
次からは、ピエトロと一緒に玉ねぎ、ピーマン、にんじん、セロリも入れて漬けてみたいです。キャンプの前日に仕込んでおくと、あとは焼くだけでメイン料理になるのでは。やってみる価値アリの料理です。他のドレッシングで追加実験もおすすめ。
5.豚バラ肉 × ごはんですよ × キムチ、旨辛レシピの極意!
じつは一番楽しみにしていたのが、この黒い料理です。残念ながら加熱すると黒色は消え、海藻を感じる色に変化しました。
油をひいたフライパンで炒めましたが、かなりこびりつき、はねた油が恐ろしいほど熱いので注意してください!
豚肉が海苔の風味と、やさしい甘さをまとい、なかなかの美味。このままでも十分いけますが、やはり最初の予定通り、キムチを加えてみましょう。
深い旨味とまろやかな辛味を感じる、旨辛豚キムチの完成。おいしいです! たっぷりの生野菜が欲しくなる料理に仕上がりました。ニラ、ネギ、もやし等を足してもおいしそうですよ。大成功。
今回は、キムチを混ぜるだけの非加熱で仕上げました。お子さんには海苔豚として提供して、大人用はお好みでキムチをプラスできる一品としても便利です。
実験のまとめ
ジュースには旨味がなく、ドレッシングや佃煮は、漬け用にも使えることがわかりました。特に広く活用できそうなのは、昆布茶です。酒やみりんに加えて、昆布茶も加えてみてください。
また、この実験からは、出汁や旨味がどうして必要なのか、考えるきっかけとなりました。そして、味を感じる「味覚」に対して意識が高まりました。ぜひご家庭でも、身近な食材を集めてチャレンジしてくださいね。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)