ママ麻酔医が提案。子どもが全身麻酔を受ける時、知っておきたい医療機関のチェックポイントは

全身麻酔を初めて経験するお子さんがいらっしゃるご家族は、麻酔の安全性についてや事前の準備などをしっかりと把握しておく必要があります。
また、麻酔そのものは子どもに安全であっても、それを提供する医療機関の選び方も、注意する必要があります。今回は現役ママ麻酔医である桐田泰江が、医療機関を選ぶ際にポイントになることをお伝えします。

お子さんが全身麻酔を受けることになったら、どんな医療機関を選ぶと安心か

今回はママ麻酔科医ならではの目線で、お子さんが全身麻酔を受ける医療機関の選び方の4つのポイントについてお話しします。

ポイント その① お子さんが全身麻酔を受ける医療機関にに小児科医/小児外科医があるとより安心!

全身麻酔で手術となると、総合病院への入院や手術を検討することが多いかと思います。耳鼻科、眼科、皮膚科などの手術を受ける場合でも、もし自身の子どもなら小規模のクリニックではなく、なるべく総合病院で、かつ小児科医/小児外科医の在籍するところを選択します。


手術前の検査や入院する病棟は小児に慣れたスタッフがいる小児科病棟や小児科外来がある医療機関がお勧めです。なぜなら、投薬量は体重に比例して考慮することが必要であり、子どもの静脈ルート確保や採血にもそれなりに経験と知識が必要だからです。
子どもの場合は、成人と比較しても特別な注意が必要となりますので、普段からその点を意識して業務をされているスペシャリストのいる医療機関がより安全だと感じています。

ポイント その② 麻酔科術前外来があると安心!

前回の記事では麻酔科術前外来の概要についてお話ししました。実際には術前の検査のみの実施で麻酔科の術前外来診察がない医療機関もあり、執刀医が全身麻酔説明をするという場合もあります。麻酔説明は手術当日又は前日のなどの直前に行われることが多く、その時に問診や診察等で初めて異常を発見しても、それに対する必要な検査が間に合わない可能性があります。
このような場合は、手術をリスケジュールしたり、その施設で手術不可能と判断した場合は中止して、他の医療機関に相談することもあります。

ポイント その③ 麻酔科という部署があり、常勤の麻酔科医がいると安心!

万が一、夜間や祝日に対応が必要となった場合も、常勤の麻酔科医がいる医療機関は安心です。麻酔科医をアルバイトで雇っている病院もあります。手術後に何かのトラブルで再手術となった場合に、非常勤の麻酔科医しか在籍していない病院は夜間休日に対応できず、常勤の麻酔科医がいる他の病院に転送されることもあります。

また、麻酔科という部署が医療機関に組織として存在している病院がより安心です。手術には麻酔科医が最低1人、立ち合います。標榜医(※1)を取得されている他科の専門医もいて、執刀医が麻酔科医を兼任しながら手術に執刀するケースもあります。当然のことながら麻酔管理は手薄になります。
夜間や祝日の緊急手術でやむを得ない場合を除き、やはり麻酔管理は専任の麻酔科医が担当するのが安心、安全です。病院、クリニック等のホームページをご覧になり、麻酔科部門、常勤医、麻酔科標榜医の有無をご確認下さい。

※1 麻酔科標榜医とは

「標榜」という言葉は、病院やクリニックで「その科の診療を行なっています」と看板を挙げることを「診療科の標榜」と言います。「麻酔科の標榜」だけは厚生労働大臣の許可が必要と医療法で決められています。麻酔科標榜の許可を得ている医師を「麻酔科標榜医」と呼びます。「麻酔科標榜医」許可基準の概要はこちらをご覧下さい(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000705230.pdf

 

ポイント その④ 並列麻酔を原則禁止としている麻酔科が安心!

並列麻酔とは、1人の麻酔科医が同時に複数の患者の麻酔管理をすることを言います。並列麻酔については日本麻酔科学会が原則禁止としています。

とある県の大学病院で2017年夏に患者が亡くなる事故があったのをきっかけに、その施設での並列麻酔の常態化ということがクローズアップされるようになりました。地方自治体での麻酔科医マンパワー不足もひとつの原因ではありますが、増加する手術件数に対して麻酔科医の補充がないという麻酔科の過酷な労働環境も垣間見えます。
並列麻酔の有無に関しては医療機関のホームページに公言しているところもあります。しかし、説明する義務がないため、患者さんが知らないまま、並列麻酔を行なっているケースは実際にあります。自分が患者だったとしたら、やはり並列麻酔は受けたくないものです。

子どもが手術で「全身麻酔」を受けることになったら。知っておくと安心なことをママ麻酔医が伝授
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お子さんの全身麻酔は安全第一!

麻酔科医であるママとして、子どもが全身麻酔を受けるにあたって医療機関の選択で気をつけたい視点についてお話ししました。何を贅沢なことを言っているんだと、思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、我が子がとなるとやはり安全第一です

私が担当してきた患者さんからは、他の医療機関では麻酔説明を受けなかったので、私の説明を受けてより納得できたという声を多くいただきました。麻酔、麻酔科医について知っていただくことが、慎重で正しい選択につながると思っています。

 

参考:日本麻酔科学会 麻酔科医マンパワー不足に対する麻酔科学会の提言(200529日)http://www.anesth.or.jp/info/pdf/suggestion20050209_1.pdf

記事を執筆したのは

桐田泰江|麻酔医
神戸海星病院麻酔科医長。浜松医科大学医学部を経てを経てシドニー大学医学部で、Pain Management修士号修得。自身が痛みに苦しんだ経験から麻酔科を志す。麻酔科医として勤務の傍ら、アメリカ、カナダなど海外では普及している「子どもの痛みのケア」を日本でも定着させるべく活動中。『イタイのイタイの飛んでけー 子どもの痛みに寄り添う』の翻訳を手がける。2児の母。日本アロマセラピー学会所属。麻酔科標榜医・日本麻酔科学会認定医。日本アロマセラピー学会認定医、IFAアロマセラピスト。日本医師会認定産業医。
麻酔科医として

麻酔科医師、手術室看護師がお子様の必要な情報を得ることができるよう、パパママにご協力いただけることに日々感謝しています。ありがとうございます。そして、皆様が全身麻酔を受けるにあたって必要な情報を提供できますよう、一麻酔科医として今後も情報収集や情報のアップデートのため研磨して参りたいと思います。

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