「対岸の火事」の意味は?「他山の石」との違い、説明できる? 類語や英語表現もチェック

「対岸の火事」の意味は、「自分には関係がなく、痛くも痒くもないこと」。自分とは無関係なことを表すことわざです。当記事では、「対岸の火事」の意味から使い方、類語、英語、「他山の石」との違いまで解説します。

「対岸の火事」とは?

「その事件は、対岸の火事とは思えない」などと使われる「対岸の火事」。簡単に言うと自分とは無関係」「影響がないことを表す言葉です。

ビジネスシーンから日常会話まで、幅広い場面で使われる「対岸の火事」について、意味や使い方、類語など、様々な角度から紹介していきます。

読み方と意味

「対岸の火事」の読み方は、「たいがんのかじ」です。意味は、「自分には関係がなく、痛くも痒くもないこと」。

向こう岸で起きている火事は、その場にいる人にとっては大変なものですが、こちらには何の苦痛もありません。このことから、「対岸の火事」は、自分には影響がなくて無関係であることを表します。

「対岸の火事」と「他山の石」の違いは?

「対岸の火事」と混同しやすい言葉に、「他山の石」という言葉があります。向こう岸を表す「対岸」、よその山を表す「他山」と、似た言葉が出てくるため「同じ意味なのでは?」と勘違いしている方もいるでしょう。では「他山の石」の意味を見ていきましょう。

「他山の石」の読み方は「たざんのいし」。意味は、「他人のつまらない行動や自分に関係のない物事も、学びの参考になること」です。「対岸の火事」は、「自分には関係がなく、痛くも痒くもないこと」という意味ですので、両方とも自分とは関係のない物事について述べているのは一見、共通する点ですね。

しかし、「対岸の火事」は、「自分には関係がない」という意味合いで、「他山の石」には、そこからも「学べることがある」「参考にできる」といった意味合いが含まれていることから、最終的な結論のニュアンスはまったく異なります。両者を混同して使わないように注意しましょう。

使い方を例文でチェック!

続いては、「対岸の火事」をどのように使えばいいのかを紹介しましょう。「対岸の火事」は主に、2通りの使い方があります。1つ目は、自分には関係がないことを伝える時。2つ目は、自分を戒める時です。それぞれの使用シーンや例文を見ていきましょう。

1:自分には関係がないことを伝える時

「対岸の火事」の「自分には関係がなく、痛くも痒くもないこと」という意味をそのまま使うパターンです。大変な出来事ではあるものの、自分にはまったく関係がないことを言いたい時に使えます。

・前の職場は、派閥争いで荒れているそうだが、退職した身からすると対岸の火事だ。
・冷たく聞こえるかもしれないが、対岸の火事であって私にはどうしようもできない。
・隣のクラスでは子ども同士の喧嘩が起きていたが、対岸の火事のため何もしなかった。

2:自分を戒める時

周りの失敗や、他者が置かれている大変な状況を見て、「自分にもいつ起こるかわからないから、気を引き締めよう」「他人事と思わずに、注意して物事にあたろう」といった意味合いで使うパターンです。戒めの言葉として使う時には、大抵の場合「対岸の火事ではない」「対岸の火事とみなさず」「対岸の火事と思わず」など、否定形とともに使います。

・別の県で起きた災害だからといって、対岸の火事と思わずに、今一度災害への備えを見直すべきだ。
・同僚のミスは、対岸の火事ではない。より一層、気を引き締めて仕事をしよう。
・Aくんの失敗を対岸の火事とせず、私たちも対策を考えるべきだ。

類語や言い換え表現は?

「対岸の火事」の類義語には、「川向こうの火事」「高みの見物」「余所事」などがあります。まったく同じ意味のものから、ややニュアンスの異なるものもありますので、一つひとつの言葉の意味をしっかりチェックしていきましょう。

1:川向こうの火事

「川向こうの火事」は、「対岸の火事」と同じ意味の言葉です。意味をおさらいすると、「川向こうの火事」は、「自分には関係がなく、まったく影響がないこと」という意味。「川向こうの喧嘩」と言い換えることもできます。

2:高みの見物

「高みの見物」の読み方は、「たかみのけんぶつ」です。「高み」とは「周囲より高いところ」、「見物」とは「物事を見て楽しむこと」。周囲から高い場所で、下方で起きている物事を見ることから、「第三者の立場で、興味本意に物事を見ること」を表します。見下すようすを含んでいるので、使う場面では注意が必要です。

3:余所事

「余所事」は、「よそごと」と読みます。意味は、「自分には関係がないこと」「関心がないこと」。「隣町で起きた事件は、余所事とは思えない」などと使います。

対義語は?

「対岸の火事」と反対の意味を持つ言葉には何があるのでしょうか。ここでは、「隣の火事に騒がぬ者なし」と「お節介」の2つをピックアップして紹介します。

1:隣の火事に騒がぬ者なし

「隣の火事に騒がぬ者なし」とは、「自分に害が及びそうな時には、どんな人も冷静でいられないこと」。対岸の火事には我関せずといった人でも、隣の家で起きた火事にはどんな人も慌てふためくことからできた言葉です。

2:お節介

「お節介」は、日常的によく使う言葉ではないでしょうか。意味は、「でしゃばって、人のことに立ち入ること」「余計な世話を焼くこと」。「対岸の火事」は、他人のことに介入しないという意味合いがありましたね。他人のことに首を突っ込む「お節介」は、その点では反対の意味の言葉といえるでしょう。

英語表現は?

「対岸の火事」をそのまま訳すと、「fire on the opposite shore」になります。しかし、これだけでは「対岸の火事」が持つ「自分には無関係」といったニュアンスが伝わりづらいかもしれません。そのため、「他人事」を意味する「someone else’s problem」を使ったほうが、「対岸の火事」の持つニュアンスが伝わるでしょう

もし「対岸の火事ではない」を英語で言いたいのであれば、「It is not someone else’s problem.(他人事ではない)」と表現します。

そのほかにも、「〜とは関係がない」という意味の「have nothing to do with~」も、自分とは無関係であることを伝えられますよ。

最後に

「対岸の火事」の意味は、しっかりと理解できましたか? 「対岸の火事」には、自分には関係がないことを伝える時と、自分を戒める時の2通りの使い方があるので、シーンによってうまく使い分けるのがポイントです。ぜひ日常生活で使って、表現力や語彙力をアップさせてくださいね。

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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)

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