「宝島」ってどんなお話? 大人も読みたい海賊小説の魅力とは【7分で読める世界名作】

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亡くなった船乗りの持ち物から、偶然、宝の地図を手に入れた少年ジム。船に乗ってさっそく宝さがしに出るものの、だれもが狙うその宝にたどり着くのはそう簡単ではありません。海賊たちとの戦いのゆくえは? 宝の山はだれの手にわたるのか? ハラハラドキドキ、息をのむ冒険物語のはじまりです。

「宝島」は大人にもおすすめ

宝島は、スコットランドの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソンによって、1883年に書かれた冒険小説です。

当時、イギリスは帝国主義時代を迎え、海外進出や植民地支配が盛んでした。また、この時期は冒険小説の黄金時代でもあり、海賊物語や宝探し物語が人気を博していた時代背景から、「宝島」は大きな注目を浴び、世界的なベストセラーとなります。

ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説

『宝島』(原題・英語表記:Treasure Island)は、スコットランドの作家ロバート・ルイス・スティーヴンソン(Robert Louis Stevenson)に1883年に発表され、その後、数々の映画やテレビドラマ、漫画などにもなっています。

スティーヴンソンは、登場人物の性格描写や物語のテンポなどにもこだわっており、特にジムとジョン・シルバーの関係性は多くの人を惹きつけています。

国:イギリス

発表年:1883年

おすすめの年齢:中学生以上

アメリカ・フロリダ州に実在する「トレジャー・アイランド」島

作者のスティーヴンソンってどんな人?

1850年から1894年にかけて生きたスコットランドの作家・随筆家であり、主に冒険小説やホラー小説で知られています。代表作に『宝島』、『誘拐』、『ジキル博士とハイド氏』などがあります。

スティーヴンソンは灯台技師の家族に生まれ、父親の跡を継ぐだろうと周囲から期待されていましたが、生まれつき病弱で若い頃に罹った結核のため各地を転地療養しながら執筆活動に精を出し、随筆家になります。そして一躍彼の名を高からしめた最初の長編小説こそが『宝島』でした。

彼の小説は、冒険、探検、ファンタジーなど、さまざまなジャンルにまたがり、現在でも多くのファンがいます。

物語のあらすじ

では、気になるあらすじを見ていきましょう。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

あらすじ

亡くなった船乗りビリー・ボーンの持ち物から宝の地図が見つかるところから物語が始まり、お話が大きく展開していきます。

『宝島』は大まかに、以下のように2つの部分に分けることができます。

1部:『ボールド・アドベンチャー』 物語のはじめ

主人公の少年ジム・ホーキンスは、母親の経営する宿屋で働いています。

宿泊していた船乗りのビリー・ボーンは「一本足の男が来たら、すぐに知らせろ」とジムに言うのですが、その後、お酒をがぶ飲みして亡くなってしまいます。

彼の荷物を譲り受けたジムは、その中に宝の地図を見つけます。ジムはどうして良いか分からず、医師で警察官のリバシーと地主のトレローニーに見せました。

トレローニーは海賊が追ってくるだろうから、すぐに船を手配して出発せねば、と3人でブリストル港へ向かいます。そこへ、港で居酒屋を経営しているシルバーが現れ、船員を手配する代わりに自分を料理人として仲間に入れて欲しい、と言います。彼が片足であることにビリーの言葉を思い出しジムは引っかかるものを感じます。

その間にトレローニーは船長をやっている旧友を訪ね、船を出してもらえることになります。船員と船長がそろったところで早速に宝さがしの航海へ出ます。

2部:『シルバーの陰謀』

ジムは一本足のシルバーが気がかりでしたが、彼は航海や船に関しての知識にたけていたため、ビリーの言葉も忘れ、すっかりシルバーと仲良くなります。

しかし、ある晩、ジムはシルバーが実は海賊の船長であると船員たちが話しているのを聞いてしまいます。しかも、なんと、船員たちは全員シルバーの手下で、彼らは宝島に着いたら秘密裏にジム達を殺してしまおうと企てている事が分かりました。

ジムは、やはりシルバーがビリーの言っていた一本足、海賊の船長、だと気づきます。シルバーらは、船上で密かに「宝の地図」のありかをずっと探していたにもかからず、見つけられないことに苛立ちを感じていました。そして、見つけられない限りはジム達に協力する風を装いつづけるしかないのでした。

ジムは、慌てて船長のスモレット、資産家のトレローニー、医師のリバシーにシルバーの裏切りを伝えます。そして、はっきりと味方だと分かるのは、26人のうち7人しかいないことを確認します。

そんな時に、「陸が見えた」との知らせが入ります。宝島に到着したのです。投錨できる場所に行くには、狭い水路を通らないといけなく、船員らは二隻のボートに分かれて下船し、船を外から引っ張って水路に入れ込みます。その時、ジムはシルバーをまくために、ボートから岸辺に伸びた木の枝に飛び移り、宝島に独りで、先に上陸してしまいます。

スモレット船長は、宝島に着いたことで船員たちがいつ攻撃してきてもおかしくないと感じています。そして、シルバー自身も手下である一味がいつ、自分を裏切って攻撃してくるか分からない事を察しており、緊迫した空気が流れています。

ジムが一人で先に島を探検していると、シルバーとその一味と思われる話し声が聞こえてきます。すると、その直後に断末魔が響き、シルバーが誰かを殺したことが分かります。ついに、同士どうしの打ち合いが始まったのです。

宝が隠されているという宝島の墓地で彼らと生き残りをかけた戦いを繰り広げます。

しかし、過去に宝を隠した海賊たちは、後世その宝を守るためその墓地にさまざまな罠や仕掛けを張り巡らせてあり、部外者が簡単に宝を奪えないようにしてあります。

ジムとシルバーは戦いながらさまざまな罠に出くわし、危うく命を落としそうになります。そこで、ここは戦わず協力したほうが良いのではとシルバーは身を引きジムに宝を探させることにします。

その間に、はぐれたと思っていたシルバーの手下の一部が、実は洞窟に隠れおり、密かにジムとシルバー達を出し抜いて先に宝を奪ってやろうと画策しています。

シルバーとジムが手を組んで一時休戦となるや、今度は反逆の一味にシルバーとジムは襲われ、追放されることになります。ジム達とシルバーが先に宝を見つけるのか、反乱組が見つけるのか。

誰が敵で誰が味方か分からなくなる中、宝の場所にたどり着くまでも数々の罠が待ち構えており難航します。

その後、別ルートで行った反乱組は、罠にはまり、どうしても宝を見つけることが出来ず、途中食糧も水もなくなりシルバーたちに降伏、助けを求めます。そして、最後にジムとシルバーが宝を見つけるのですが、当然最後は奪い合いの死闘を繰り広げます。

最終的に、ジムたちはシルバーたちを追い詰め、宝を手に入れます。宝を持ち帰り、その後は普通の生活に戻ります。

あらすじを簡単にまとめると…

要約すると、宝の地図を偶然手にした主人公ジムが、仲間と一緒に苦難を乗り越えながら、宝探しをする冒険物語です。

主な登場人物

以下は、『宝島』に登場する主要人物の性格や特徴をまとめたものです。

ジム・ホーキンス:主人公

主人公。15歳の少年で、母親が経営する宿屋で働いている。海賊から追われる身となり、宝島の探索に巻き込まれることになる。

ビリー・ボーンズ

ジムが働く宿屋に泊まっていた男。亡くなった船乗りの元同僚で、秘密の地図を持っていた。

ジョン・トレローニー

地主で資産家。船の調達をし航海の手助けをするも口が軽いので町のみんなに宝の地図の話をしてしまう困りもの。

ジョン・シルバー

海賊の船長で、亡くなった船乗りの元仲間。宝島の財宝を探すため、ジムたちを乗せた船を指揮する。

キャプテン・スモレット

ジムたちを乗せた船の船長。ジョン・シルバーとは対立している。

ベン・ガン

亡くなった船乗りの元仲間で、宝島に隠された財宝を探すため、孤島で生活している。

サム・アローン

ジムたちを乗せた船の料理人。ジムの良き相談相手であり、冒険に付き合うことになる。

ドクター・リバシー

ジムの肺炎のお父さんのかかりつけ医で、地図を見た時から彼らに船医として加わる。

イズラエル・ハンズ

ジョン・シルバーの部下で、反乱を起こす。

  • 以上が、『宝島』の主要人物たちです。それぞれの性格や特徴が、物語の進行に大きな影響を与えています。ジムの成長や、シルバーの野心など、人物たちの魅力によって、読者は物語に引き込まれます。

大人こそ読みたい魅力とは

大人になって読むとまた違う味わいのある『宝島』ですが、その魅力はいくつか挙げてみます。

魅力的な登場人物たち

キャラクター設定にもしっかりとしたこだわりがあります。

例えば、最初に宝さがしを提案するトレローニーは非常にいい人なのだけど、なにせ口が軽い。医師のリバシーに宝の地図について、絶対に口外しないようにと散々言われているのに、次のページをめくると、町中の人は宝の地図の話題で持ち切り。まるでコメディのように口が軽いのです。また、一本足のジョン・シルバー は悪役ながらも存在感があり、読者の心をつかむキャラクターです。

スリリングで速い展開

次々に展開するストーリーは読み応えがあります。ページをめくるとまた新しい展開、さらに事態は急変とどんどん進んでいきます。船上での戦いや、海賊たちとの駆け引き、宝を誰が最初に見つけのか、そして奪い合い、といった緊張感あふれる場面が多数登場します。

高いメッセージ性

『宝島』は冒険小説でありながら、人間性を描いた作品でもあります。特に、15歳少年のジム・ホーキンスの成長過程や、シルバーという悪役の人となりが詳細に描かれており、人間性や道徳的価値観についてのメッセージが込められていると考えられます。

また、物語の中では、財宝が登場人物たちを動かす原動力となっています。しかし、宝の奪い合いや殺し合いによって引き起こされる衝突や裏切り、人間の欲望、野心は、読者が金銭や富に対する考え方や自己の価値観、しいては人間性についてまで考えるきっかけになるでしょう。

以上のように、『宝島』は大人でも多くの魅力を持つ作品です。あらためて読んでみると、また違う気づきがあるはずです。

「宝島」を読むなら

少年ジムの冒険だけに、小学校高学年から高校生まで十分に楽しめる宝島。本によっては低学年でも分かりやすくまとめたものもありますので対象年齢などを参考に選んでみましょう。

世界名作シリーズ 宝島(小学館)

日本アニメーション (イラスト), 代田亜香子 (翻訳)  2018/4/23  形式: Kindle版 単行本 292ページ

この作品は底本と同じクオリティのイラストが収録されています。また、Kindle版にはテキスト読み上げ機能が付いていますので、キンドルに読んでもらうことも可能です。小学校高学年~。

宝島 (学研プラス世界名作)

館尾 冽 (イラスト), 吉上 恭太 (翻訳) 2015年発売、153ページ。オールカラー。単行本・Kindle版

子どもに親しみやすい一冊です。すべてルビが付いています。挿入イラストは、船の全体図、パーツの説明から人間関係図、宝島の地図まで詳細にわたって図解紹介されています。

小学館世界J文学館 宝島(電子版)

1冊に125作品をおさめた『小学館世界J文学館』に収蔵されている「宝島」電子版。このタイトルだけを単独で購入することもできます。

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海賊の歴史を知ろう

海賊の世界に浸れる『宝島』は、海賊小説の代表的な作品の一つ。船上の戦いや宝探しの冒険、そして海賊たちの生き様などは、漫画「ワンピース」にも通じるところがあり、お子さんもきっと夢中になることでしょう。ぜひ、薦めてあげてください。

【豆知識】カリブ海の海賊って?

16-17世紀にカリブ海で暗躍した盗賊のこと。ヨーロッパ各国が植民地支配のため海外に競争して出ていくようになった16世紀に、イギリスやオランダは、スペインやポルトガルなどに遅れをとります。そこで、宝(砂糖、こしょう、コーヒーなど)を持ちかえっては高額で転売し、国が豊かになっていく他国に対して、業を煮やしていたイギリスのエリザベス女王1世は、政府が認可した船のみ、植民地から持ち帰る宝を乗せた他国の船を襲うことを認めます。つまり、実質的に女王が「海賊行為」を認めたのです。それによって、イギリスは多くの富を得て、豊かになりました。「宝島」が発表される少し前の、1856年のパリ宣言にて、16世紀から続いた海賊行為は禁止となり、終焉しますが、海賊の歴史は、世界史の一部を作ったと言っても過言ではありません。

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文/加藤敬子 構成/HugKum編集部

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