「王子と乞食」ってどんなお話? 著者のマーク・トウェインが伝えたかったことは【3分で結末まで把握】

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映画版や舞台版、ディズニーアニメ版等でも知られる『王子と乞食』。具体的にどのようなお話かご存じですか? 今回は、『王子と乞食』のあらすじや主要キャラクターを押さえた上で、本作品の主題について考えてみましょう。

「王子と乞食」ってどんなお話?

まずは、『王子と乞食』の背景や作者をご紹介します。

アメリカの小説家、マーク・トウェインの児童文学

『王子と乞食』は、1881年にアメリカの作家であるマーク・トウェインが発表した児童文学作品。16世紀のイングランドを舞台に、王子エドワードと彼にそっくりな乞食のトムという2人の主人公を通じて、当時の世情を風刺を交えながら描いた物語です。

原題 :The Prince and The Pauper
作者 :マーク・トウェイン(Mark Twain)
国  :アメリカ合衆国
発表年:1881年
おすすめの年齢:小学校中学年〜

「王子と乞食」は実話?

『王子と乞食』の主人公のひとりであるエドワード6世は、実在した人物です。そのため、「実話なのでは?」と勘違いされることがありますが、本作はあくまでもフィクション。もうひとりの主人公である乞食のトムは架空の人物です。

とはいえ、16世紀のイングランドの世情が投影されているのは事実。当時のイングランドでどのようなことが起こっていたのか、想像しながら読んでみましょう。

映画やミュージカル、ディズニーアニメ版も

また、本作は、多くの映画版や舞台・ミュージカル版でもよく知られた作品です。特に広く親しまれているのは、1977年にアメリカ・イギリス合作で制作されたバージョン。

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『オリバー! 』や『小さな恋のメロディ』で人気を集めた元子役のマーク・レスターが主演を務めており、現在でも多くのファンから愛され続ける一作です。

また、『ミッキーの王子と少年』(1990年)として、ウォルト・ディズニー・カンパニーによってアニメーション映画が制作されているほか、劇団四季では舞台化もされています。

「小説を読むのはハードルが高い!」という場合は、これらの派生作品から触れてみるのもおすすめです。

著者のマーク・トウェインってどんな人?

著者のマーク・トウェイン(1835-1910)は、ミズーリ州出身のアメリカ合衆国の小説家です。ユーモラスかつ社会風刺的な作風が特徴で、当時、最も人気のある作家のひとりでした。『あしながおじさん』の作者であるジーン・ウェブスターは姪の娘にあたります。

代表作には「トム・ソーヤーの冒険」も

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『王子と乞食』以外にも、トウェインは多数の作品を発表しています。

代表作は『トム・ソーヤーの冒険』や、『ハックルベリー・フィンの冒険』『不思議な少年』『人間とは何か』『ハワイ通信』等々。どの作品も、時代や国境を超えて、子ども・大人にかかわらず幅広い人々から愛され続けています。

「マーク・トウェイン」は筆名。テーマパークのアトラクション名にも

マーク・トウェインの本名は、サミュエル・ラングホーン・クレメンズ。ミズーリ州のミシシッピ河畔で生まれた彼は、少年時代からミシシッピ川の蒸気船水先案内人に憧れていました。実際に、水先案内人をしていたこともあり、後に作家となって筆名とした「マーク・トウェイン」とは、水先案内人のかけ声に由来しています。

ディズニーランドのアトラクション「マーク・トウェイン号」は、彼の筆名を引用しているのだとか。

物語のあらすじ

ここでは、『王子と乞食』のあらすじを見ていきましょう。子どもにも説明しやすい簡潔なバージョンもあわせてお伝えしていきます。

あらすじ

エドワードとトムは、同じ日に生まれた、外見のよく似た少年です。

王子として生まれたエドワードは、豪華な宮殿で何不自由ない暮らしをしながらも、堅苦しい生活に嫌気が指し、外の世界の自由な子どもたちに憧れを抱いていました。いっぽう最も貧しい貧民窟に生まれたトムは、働かない父の代わりに物乞いをしながら、飢えとともに生きていました。

物語は、そんなふたりが偶然に出会ったことから動きはじめます。

見た目のそっくりなふたりが好奇心から服を交換していると、宮殿の人々は、トムをエドワードと、エドワードを乞食と、勘違いしてしまいます。そして、エドワードは宮殿から追い出され、トムは王子として残されることになってしまったのです。

トムは憧れていた裕福な生活を体験するものの、次第に、王室の生活の虚しさや王子が抱える重圧を体感することに。

乞食として外の世界を見たエドワードは、貧困や悪法によって苦しむ庶民の生活を知ることになり、王位に戻って人々を救いたいと思うようになります。

そんな時に、エドワードの父親である王・ヘンリー8世が崩御。エドワードは、トムの戴冠式を止めようとしますが……。

簡単に説明すると……

ウリふたつの王子エドワードと、乞食のトム。ある日、ふたりは入れ替わって、お互いの生活を体験することとなります。お互いの暮らしの悩みをはじめて知るふたりが、より慈悲深く成長していく物語。

主な登場人物

ここでは、本作の主な登場人物も押さえておきましょう。

エドワード・テューダー

父・ヘンリー8世の後継ぎであり、将来の王を期待される王子。豪華な宮殿に住み、不自由のない生活をしてきた。

トム・キャンティ

貧しい家庭に生まれ、物乞いをしながら暮らす少年。暴力を振るう父親と、トムを父親から守ろうとする母親・姉に囲まれて育つ。

ヘンリー8世

病気で床についていた国王。わが子が乞食の少年と入れ替わっていることを知らないまま亡くなってしまう。

ジョン・キャンティ

トムの父親。酒に溺れて働かず、トムや家族に暴力をふるう。

ハートフォード卿

エドワードの後見人。エドワード(トム)の異変に困惑するものの、主君として慕いつづける。

『王子と乞食』から、学べること・教訓は?

当時のイングランドの社会情勢が描かれた本作。「権力者と弱者」のような身分による格差のほか、「中身よりも外見にとらわれやすい」人間の性質など、あらゆる課題や教訓が読み取れる作品です。

さまざまな教訓がある中でも、本作でぜひ注目したいのは、主人公のふたりが互いの暮らしを知ることで、相手を慈しむ心を得ていく点です。

人の立場や暮らしを想像し、慈しむ心

はじめは互いに想像もつかない生活を送りながら、羨み合っていたふたり。ですが、一度入れ替わってそれぞれの生活を体験してみることで、相手の苦難を知ることになります。

マーク・トウェインは、入れ替わったエドワードとトム、ふたりの物語を通じて、人の立場や暮らしを想像し、慈しむことの大切さを伝えようとしたのではないでしょうか。

「王子と乞食」を読むなら

明治期に初版として翻訳・出版されてから現在まで、日本国内でも読み継がれいている『王子と乞食』。ここでは、日本語で読めるおすすめの『王子と乞食』の書籍をご紹介していきます。

王子とこじき (子どものための世界文学の森 6)

小学校低〜中学年頃のお子さんにおすすめの、絵本のような形式の一冊。ひらがなが多めに使われ、挿絵も満載なので、読書に慣れていないお子さんでも読みやすいと好評です。

王子とこじき (10歳までに読みたい世界名作)

お子さんの「自分で読み切れた!」という達成感・成功体験をサポートする『10歳までに読みたい世界名作』シリーズ。アニメ風のフルカラーのイラストと、短い章立てや、お話をわかりやすく紹介する「物語ナビ」付き等々、読みやすい工夫が凝らされています。『王子とこじき』のお話も、きっと楽しく完読できるはず。

王子と乞食 (岩波文庫 赤 311-2)

『赤毛のアン』シリーズの翻訳で知られる村岡花子さんによる訳書。クラシカルな文章で、オリジナル版や当時の時代の雰囲気を存分に味わうことができます。大人にも十分読み応えがある一冊です。

【ネタバレ】トムとエドワードの結末はどうなる?

ここでは、『王子と乞食』の結末をネタバレありでご紹介します。「結末は自分で読みたい!」という方は、ご注意ください。

トムが国王になってしまって…

ヘンリー8世の崩御後、“エドワード6世”となってしまったトム。これを知ったエドワードは、戴冠式を阻止するために、宮殿へと戻ります。

しかし、外見でしか相手を判断しない宮殿の人々は、エドワードが本物の国王であることを信じません。結局、玉璽(王様が使う印章)をトムが「くるみを割るのに使っていた」ことから、トムがエドワードではないことに、宮殿の人々はようやく納得。誤解は晴れて、エドワードは正式に国王になります。

その後、エドワードはトムに生涯の仕事を与え、王の保護と援助がずっと受けられるように周囲に命じました。トムは一生、人々から崇拝・尊敬され、エドワードは、当時にしてはめずらしく慈悲深い治世を行いました。

奥深く、時々シニカル。大人にとっても読み応えある一作

本記事では、『王子と乞食』について紹介してきました。子どもはもちろん、大人にとっても読み応えがあり、深く考えさせられるお話です。所々で散見されるシニカルな描写も、トウェインならではの魅力。ぜひ、一度手に取ってみては。

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文・構成/羽吹理美

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