被子植物と裸子植物の違い
被子植物(ひししょくぶつ)と裸子植物(らししょくぶつ)には、具体的にどのような違いがあるのでしょうか? 違いや見分け方を紹介するので、実際に観察する際に役立てましょう。
胚珠が見えるかで見分ける
陸上で生息している植物は、コケ植物・シダ植物・種子植物の3種類に分かれます。被子植物と裸子植物は、種子をつくる種子植物に分類されています。
被子植物と裸子植物は、外から「胚珠(はいしゅ)」が見えるかどうかで区別することが可能です。種になる部分の胚珠が子房(しぼう)で包まれており、外から見えないものは被子植物です。対して、子房がなく、胚珠がむき出しの状態になっているものは裸子植物になります。
子葉にも違いがある
被子植物と裸子植物では「子葉(しよう)」の数にも違いがあるため、どちらに属するのか見分ける判断材料になります。子葉とは胚の一部を形成しているもので、種子から最初に出る葉のことです。
被子植物には1枚あるいは2枚の子葉があり、枚数によってさらに分類されています。一方、ほとんどの裸子植物の子葉は2枚以上です。そのため、被子植物のように子葉の数で分類されておらず、「多子葉」として一括りにされています。
被子植物の分類について
被子植物は、子葉の枚数によって2種類に分類されています。どのような種類があるのか、それぞれの特徴や違いとあわせてみていきましょう。
「単子葉類」と「双子葉類」に分かれる
被子植物のうち、子葉が1枚のものは「単子葉類」、2枚以上のものは「双子葉類」に分けられており、葉脈や茎、根などに大きな違いがあります。
単子葉類の葉にみられる葉脈は、線が平行に並んだ「平行脈」です。茎の断面を見ると、水分や養分を送る管があちこちに散らばっています。根は、1箇所から細くひげ状に生える「ひげ根」です。
双子葉類の葉脈は網目状の「網状脈」で、茎の断面は管が円を描くように並んでいます。根は、「主根」と呼ばれる真ん中の太い根から、「側根」と呼ばれる細い根が生えています。
被子植物の祖先は双子葉
かつて被子植物は、単子葉類と双子葉類の二つの系統に分かれると考えられていました。しかし、実際には単子葉類が双子葉類から進化し、新たな形質を獲得したことが明らかになっています。もともと先祖が持っていた形質は「原始形質」、新たに獲得した形質は「派生形質」と呼ばれます。
なお、単子葉類に進化する以前から独自に進化した、スイレンやモクレンのような双子葉類を除いたものは、「真正双子葉植物」と区別されているので、覚えておきましょう。
それぞれの代表的な植物は何?
それぞれに属する植物の中から代表的なものを紹介します。このうち、被子植物は特徴によって細かく分類されているので、分類ごとに見ていきましょう。
被子植物の代表例
単子葉類の代表例は、ユリ・スイセン・ヒガンバナ・アヤメなどです。そのほか、イネ・トウモロコシ・ススキ・パイナップル・バナナなども属しています。
双子葉類はさらに、花びらが密着している「合弁花類」と、密着していない「離弁花類」に分類されます。代表的な合弁花類は、アサガオ・タンポポ・ヒマワリ・ツツジ・キクなどです。離弁花類には、サクラ・バラ・アブラナ・ホウセンカなどが属しています。
裸子植物の代表例
いっぽう裸子植物は、マツ・スギ・モミ・ヒノキなど細い針のような葉をしている針葉樹や、イチョウやソテツなどが代表的です。日本でみられる裸子植物は限られており、どれも身近なものばかりですが、世界には珍しい変わったタイプもみられます。
その一つが、アフリカに位置するナミブ砂漠に生息している「ウェルウィッチア」です。この植物には、「奇想天外」「サバクオモト(砂漠万年青)」という和名が付いています。
ウェルウィッチアは、一生を通して2枚しか葉を付けないにもかかわらず、数百年から、長いものだと2,000年近く生き続ける非常に珍しい植物です。茎や葉脈に被子植物のような形質も持ち合わせていることから、裸子植物の進化の終点や被子植物との架け橋に位置付けられています。
植物を観察する際のポイント
より理解を深めるために、実際に身近な植物を観察してみましょう。観察をする際に意識したいポイントや注意点を紹介します。
観察前の準備をしっかり行う
実際に観察を始める前に、しっかり準備をすることが大切です。まず「被子植物と裸子植物の違いを見分ける」というように、観察の目的を明確にしましょう。
次に、筆記用具やルーペ、虫眼鏡など必要なものをそろえます。ルーペや虫眼鏡は、観察対象のものに近づけたり遠ざけたりして、しっかり見える位置を探すことがポイントです。
ルーペや虫眼鏡を使う際、太陽を見ると目を傷める可能性があるため、注意して使ってください。
いろんな植物を観察して楽しもう
被子植物と裸子植物は、胚珠が外から見えるか見えないかで見分けられます。子葉の枚数を目安にするのもよいでしょう。
さらに、被子植物の葉脈や茎、根を観察することで、単子葉類か双子葉類かを見分けられます。身近にあるさまざまな植物を、子どもと一緒にルーペや虫眼鏡を使って観察してみましょう。
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構成・文/HugKum編集部