睡眠って、どんな役割があるの?
ヤクルト1000でも話題の“睡眠の質”改善ブーム。その先がけである医学博士の西野先生は、小学生でも分かりやすく、睡眠の主な役割について学べる、児童書の新刊『ドラえもん探究ワールド ねむりと夢のふしぎ』の監修者でもあります。
睡眠の主な役割は?
先生は、睡眠には私たちの体にとって大切な、主に5つの役割があると教えてくれました。
1, 体と脳を休ませる
2, 成長ホルモンを分泌させる
3, 記憶を整理したり、定着させたりする
4, 免疫力を上げて病気を寄せつけないようにさせる
5, 脳の老廃物を捨てる
今回は、特に、2の成長ホルモンと3の記憶の情報整理について、西野精治先生にお話を伺いました。
「黄金の90分」の間に成長する!
睡眠で最も重要なのは、入眠して最初に訪れるノンレム睡眠(深く寝る睡眠)の90分間。これを「黄金の90分」と呼んでいます、と西野先生は語り出します。
あれ?
2児の母でもある筆者は、何年か前に「22時~深夜2時の間に成長するからその時間は寝ていた方がいい」と聞いたことがあり、我が子には、何としてでも22時までには寝かしつけようと必死になっていました。
黄金の90分とは、寝る時間も関係があるのでしょうか。
すると、意外な答えが返ってきました。
―22時から深夜2時の間に寝ていた方がいいと聞いたことがあったのですが、寝る時間は関係ないのでしょうか?
西野先生:あぁ~、シンデレラタイムと言われていた時間帯ですよね。
私はその当時からアメリカで睡眠の研究をしていたのですが、日本でそういう話が出ていると聞いて、何を言っているのかよく分からないなぁと思っていましたよ(苦笑)。
おそらく、美容と新陳代謝、修復、免疫の回復を担い、睡眠時に放出される成長ホルモンとの関係が注目され、それにシンデレラの物語での時間制約をこじつけて美容の“シンデレラタイム”が提唱されたのではないでしょうか? しかし、だからと言って、22時から深夜2時の時間帯に寝ると美しく健康になるということではないのです。
何時に寝るか、ということは重要ではない
西野先生:何時に寝るかより、入眠の最初の90分の深い睡眠中に、最も『成長ホルモン』が出ると言うことが1960年代の日本人の研究結果により明らかになっていましたので、シンデレラタイムには根拠がありません。
なので、お子さんが寝始めたら、特に、最初の90分は物音で睡眠を妨害したり、無理に起こしたりしないようにすると良いでしょう。
もし、最初の90分に邪魔をしてしまうと、そこで睡眠が浅くなり起きてしまいます。そうなると、成長ホルモンも出にくくなるだけでなく、その後の健康な眠りが妨げられます。そして、どんなにたくさん寝たとしても、スッキリした感じが得られにくくなるでしょう。
―黄金の90分に分泌されるという『成長ホルモン』で背も伸びるのでしょうか?
西野先生:成長ホルモンは、主に、細胞の成長や新陳代謝を促進させ、骨や筋肉を丈夫にするので、子どもの成長には欠かせないんですよ。夜間に出る全体量の70~80%が黄金の90分の間に分泌されているので、とても大事な時間。黄金の90分をぐっすり眠れると自律神経も整えられ、交感神経と副交感神経のシフトがスムーズになり、リラックスもできます。
大人でも骨や筋肉が丈夫なるので、黄金の90分を意識して寝てみて下さい。
記憶力をアップさせるには?
睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があるのですよね。2つの睡眠は、どのような違いがあるのでしょうか?
― レム睡眠とノンレム睡眠の役割についても教えてください。
西野先生:ノンレム睡眠は、体も脳も眠っている深い眠りの状態のこと。レム睡眠は、体は眠っているけれど脳は起きている明け方に多い睡眠で、夢見の睡眠とも呼ばれます。
入眠して、まずやってくるのはノンレム睡眠。その後にレム睡眠がきて、睡眠中はそれを繰り返し体のメンテナンスを行います。
レム睡眠では、体は麻痺していますが、脳は起きた状態です。夢を見ることが多く、明け方に多いことから起きる準備をしているとも考えられています。
―学校でその日に学んだ勉強などは、レム睡眠とノンレム睡眠のどちらのときに定着するのですか?
西野先生:記憶の課程は複雑で、単純には割り切れないのですが、新しい記憶を定着させるのは、最初のノンレム睡眠(一番深い眠り)の時間と言われています。まずは黄金の90分を意識して眠りにつくと良いでしょう。良いリズムを繰り返すことで、どの段階でも記憶は定着はしますよ。
家族ぐるみで取り組んで、子どもが寝やすい環境を作ることが大切
西野先生によると、大人の脳に近づくのは、12歳前後なんだそう。睡眠は子供の脳の発達においても重要な役割を果たすので、この年齢になるまでに、脳と体にとっていい睡眠習慣を身につけられるように、日々心掛けることが重要だと教えてくれました。
日本の子どもの睡眠時間は世界で最も短い!
株式会社ブレインスリープの創業者 兼 最高研究顧問でもある西野先生。
ブレインスリープ社では、子どもの睡眠についても調査をされており、その調査結果によると、日本の子どもの睡眠時間は世界で最も短く、もっと深刻な点はこの事実を知らない人が全体の68.7%ということだとか!
また、子どもの年齢別に推奨される睡眠時間は3~5歳で10~13時間、6~9歳は9~11時間なのに対し、ほとんどの年齢で推奨される睡眠時間に足りていない結果も。
さらに、親に睡眠負債(慢性的な睡眠不足)がある場合の方が、明らかに子どもにも睡眠負債がある割合が大きいこともわかったとか。
働き方の多様化や変化により、親が毎日一定のリズムで生活ができているかどうかが子どもの睡眠に大きく関係していると、西野先生は語ります。
―「早く寝なさい!」ではなく、家族ぐるみで取り組んで、子どもが寝やすい環境を作ることが大切なのですね。
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ドラえもんと睡眠は深い関係がある!?
今回の取材では、西野先生監修の『ドラえもん探究ワールド ねむりと夢のふしぎ』をもとにお話を伺いました。
西野先生は「子どもがいる家庭に睡眠の重要性を啓蒙してくれる効果があってうれしいなぁ。それにしても、のび太くんは眠りの天才だよね」と話しながらマンガを読み出します。
たしかにのび太は、黄金の90分を毎日いとも簡単に体感できる天才かも!
西野先生は「そうそう! 思うんだけどね、ドラえもんって、眠りと密接な関係があるよね!? だって、ドラえもんの誕生日は9月3日で『睡眠の日』と同じなんですって! これは偶然の一致じゃないと思うよ?」とにっこり。
ドラえもんと睡眠の秘密、先生の推理、真相はいかに!
今回ご紹介した『ドラえもん探究ワールド ねむりと夢のふしぎ』には、夢や催眠にまつわるドラえもんのマンガも12本収録されています。
また、ルビもふってありますので、親子でたっぷり楽しめるはず。ページの端にはクイズも付いていますので、お子さんと一緒に楽しく睡眠について学んでみませんか。
本書の監修者は、睡眠科学ブームの火付け役である、スタンフォード大学医学部教授の西野精治先生です。最新の睡眠科学のほか、有名人の睡眠術や動物たちのねむりの知恵、催眠療法、夢占い、人工冬眠の将来性など、幅広いテーマを盛り込んでいます。
お話しを伺ったのは…
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取材・文/森岡陽子 構成/HugKum編集部