『かえるの王さま』のあらすじ知ってる?「蛙化現象」の由来にも。背景や登場人物、教訓を一挙解説

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ディズニー映画『プリンセスと魔法のキス』の原案となったり、心理学用語の由来になったりと、多方面へと影響を及してきた『かえるの王さま』という物語。今回はそんな『かえるの王さま』の、意外と知られていない原作のあらすじや、登場人物、おすすめ書籍等を一挙にお伝えしていきます。

『かえるの王さま』ってどんなお話? 背景と豆知識をチェック

まずは、『かえるの王さま』が書かれた背景や、知っておきたい豆知識を見ていきましょう。

グリム童話の「かえるの王さま」

『かえるの王さま』とは、グリム童話のひとつとして知られる物語です。日本では、サブタイトルまでを含めた『かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ』というタイトルで出版されている場合もあります。

1812年にドイツで出版された『グリム童話集』の初版から収録されており、最終決定版の7版まで、毎回加筆と修正が重ねられました。

グリム童話とは

現在までに170以上の言語に翻訳されたと言われる『グリム童話集』。ドイツのグリム兄弟が、主に口承によるメルヘンを編纂・収録した童話集を指します。

日本では、学校の英語教材として扱われたことからはじまり、1886年には収録作のいくつかがローマ字訳されたこと、さらに、1887年にはジャーナリストであった菅了法(桐南居士)によって『西洋古事神仙叢話』として翻訳・出版されたことから、徐々に浸透したといわれています。

タイトルが2つあるのはなぜ?

先述したとおり、『かえるの王さま』は『かえるの王さま、あるいは鉄のハインリヒ』と題されることがあります。

ハインリヒとは、作中に登場する「かえるの王子さま」の忠実な家来。王さまがかえるになってしまった悲しみのあまり、胸が破裂しないように、鉄の輪で胸を縛っていたという逸話が描かれるキャラクターです。ハインリヒが物語に登場するのは、終盤の一部分のみですが、かえるの王さまが人間に戻ったことで、彼の鉄の輪がひとつずつ取れていくさまは非常に印象的に描かれます。

ハインリヒのように、誰かを慈しみ、誰かのために悲しんだり、喜んだりすることの尊さは、本作の大きなテーマのひとつなのかもしれません。

「蛙化現象」の言葉の由来

『かえるの王さま』は、「蛙化現象」という心理学用語の由来であることでも知られています。「蛙化現象」とは、好きな相手が振り向いた途端に、相手に対して嫌悪感を抱いてしまう現象のこと。

本作には、主人公のお姫さまがカエルになった王子さまを「気持ち悪い」と思ったり、王子さまが人間に戻った途端に仲良くなったりする描写があります。相手に対する感情の急激な変化が描かれていることから、本作がたとえとして用いられ、「蛙化現象」という言葉の由来となったと考えられています。

『かえるの王さま』のあらすじ

ここからは、『かえるの王さま』のあらすじを見ていきましょう。詳しいあらすじと、お子さんに説明する際に便利な簡潔版のあらすじ、さらに、本作から読み取れる教訓をそれぞれまとめました。

あらすじ(詳細版)

カエルとお姫さまの出会い

ある日、ある国のお姫さまが、森の泉に金の鞠を落としてしまいました。泣いていたお姫さまに声をかけてくれたのは、一匹のカエルです。

カエルは、自分をお友達にしてくれて、隣に座って食事を取って、同じベッドで一緒に寝かせてくれるのなら、拾ってきてあげようと提案します。お姫さまはすぐにその提案を受け入れますが、鞠を受け取ると、カエルを置き去りにしてお城へと帰ってしまいました。

お城にやってきたカエル

そのあくる日、お姫さまが食卓についていると、あのカエルがやってきました。お姫さまは嫌がりますが、事情を聞いた王様(お姫さまの父親)は、一度約束したことはきちんと守るよう言い聞かせます。

カエルは約束通りに一緒に夕食を食べると、今度はお姫さまと同じベッドで一緒に寝たいと言い出します。お姫さまが泣きながら嫌がると「約束を守らないと王に告げ口する」と忠告するカエル。お姫さまは腹を立ててカエルを掴むと、壁に向かって力いっぱいに叩きつけてしまいました。

人間に戻ったカエル

すると不思議なことに、カエルが美しい王子へと姿を変えました。実は王子は、わるい魔女に魔法をかけられて、醜いカエルに変身させられていたのでした。

ふたりはすぐに仲良くなり、王さまのはからいによって婚約します。

ハインリヒの喜び

あくる朝、ふたりを迎えに来たのは、王子の国の忠実な家来であるハインリヒでした。ハインリヒは王子がカエルにされた日から、悲しみに暮れ、自分の胸が破裂してしまわないように、胸に鉄の輪を三本はめていました。ハインリヒは自分のご主人が助かったことを心底喜びます。

お姫さまと王子さまがハインリヒの馬車に乗っていると、たびたび、パチンと何かが割れるような音が響きました。王子様は馬車が壊れているのではないかと心配しましたが、それは、ハインリヒの鉄の輪が、ひとつずつ外れていく音でした。

あらすじを簡単にまとめると…

 

ある日、ある国のお姫さまが、森の泉に金の鞠を落としてしまいました。

お姫さまはそこにやってきたカエルと、鞠を拾ってくれたら、お友達になって、隣に座って食事を取って、同じベッドで一緒に寝ることを約束しました。それにもかかわらず、お姫さまは鞠を拾ってもらっても、約束を守りませんでした。

その後、「一度した約束は守らなければいけない」と王さまに言い聞かされたお姫さま。いやいやながら言う通りにしますが、カエルと一緒にベッドで寝ることだけはできません。

怒ったお姫さまがカエルを壁に叩きつけると、なんと、カエルは美しい王子さまに姿を変えました。実は、王子さまは、わるい魔女によって醜いカエルに姿を変えられていたのです。お姫さまと王子さまはすぐに仲良くなり、結婚する約束をしました。

教訓

本作に込められた教訓でもっとも目立つものといえば、やはり「守れない約束をしてはいけない」ことではないでしょうか。逆説的に言えば、王さまがお姫さまに言ったように、一度した約束は守らなければいけません。できないことを約束すると、後から後悔しかねない、ということを、本作はお姫さまと王子さまの話を通して教えてくれています。

そのほかにも、醜いカエルが実は美しい王子さまだったりと、人を見た目で判断してはいけないこと等も、教訓として読み取れますね。

主な登場人物

合わせて、本作の主な登場人物も押さえておきましょう。

お姫さま

ある国の美しいお姫さま。ある日、金の鞠を泉に落としてしまう。

カエル

金の鞠を泉に落としたお姫さまと、「お友達にしてくれて、隣に座って食事を取って、同じベッドで一緒に寝かせてくれるのなら、拾ってきてあげよう」と約束するカエル。実の姿は、ある国の美しい王子さま。

王さま

お姫さまの父。お姫さまに約束を守ることの大切さを教える。

ハインリヒ

王子さまの忠実な家来。王子さまがカエルになった悲しみから、胸が破裂してしまわないように、鉄の輪を胸にはめていた。

「かえるの王さま」を読むなら

ここからは、『かえるの王さま』のおすすめ書籍をご紹介。小さなお子さんや大人でも楽しめる絵本を中心に集めました。

かえるのおうさま (はじめての世界名作えほん)

かえるのおうさま (はじめての世界名作えほん)

国内・国外の名作を、子どもに親しみやすい絵と文で描いた「世界名作えほん」シリーズ。物語も簡潔にまとめられており、まだ幼いお子さんのはじめての読み聞かせにもぴったりです。『かえるの王さま』のちょっと奇抜なお話も、ユーモアたっぷりに語られます。

かえるの王さま: グリム童話 (岩波書店)

かえるの王さま: グリム童話 (岩波書店)

幻想的な挿絵が特徴的な、岩波書店出版の『かえるの王さま』の大型絵本。子ども向けかつ単調なイメージを持たれやすいグリム童話ですが、本作には、挿絵のタッチも相まって、不思議で奥深い、ちょっぴり大人な雰囲気が漂います。一味違った『かえるの王さま』の魅力を楽しみたい方におすすめの絵本です。

かえるの王さま (教育画劇)

かえるの王さま (教育画劇)

こちらの『かえるの王さま』は、日本昔話の絵本で親しまれる梶山俊夫さんの挿絵が目を引く一冊。カラフルな色合いと力強いタッチで描かれ、ページをめくるたびに、子どもの興味・好奇心を刺激してくれます。

唐突な展開の連続に唖然? 余白に想像を巡らせてみよう

今回は、グリム童話の代表的な作品のひとつである『かえるの王さま』のあらすじや背景、おすすめ書籍をご紹介してきました。

原作を読んで、急に結婚したり、急にハインリヒが登場したりするジェットコースターのような展開に「あまりにも唐突じゃない?!」と驚いた方もいるかもしれません。もとは口承文学(口頭のみで伝えられてきた文学)なので、ある程度は目を瞑りつつ……お子さんといっしょに、余白に想像を巡らせてみるのも本作の楽しみ方ではないでしょうか。

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文・構成/羽吹理美

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