関西ジャニーズJr.池川侑希弥が初主演!珠玉の青春映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』昭和の小学生たちに感情移入

『百円の恋』(14)や2023年度後期放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本家として知られる足立紳。そんな足立さんが、『喜劇 愛妻物語』(20)以来、3年ぶりに放つ監督作『雑魚どもよ、大志を抱け!』が、3月24日(金)より全国公開されました。

令和に届け!小学生7人が織りなす、ノスタルジックな青春物語

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

まるで土から力強く生える雑草のようにパワフルなタイトルである『雑魚どもよ、大志を抱け!』。本作の主役は、7人の小学生男子たちで、舞台はノスタルジーが漂う昭和末期の田舎町となっています。彼らが気の合う仲間たちと無邪気に笑いあったり、いたずらをしたり、自転車で疾走したりと、やんちゃな日常を過ごしていくなかで、いろいろな家族の事情や学校でのヒエラルキー、いじめ問題などにぶちあたり、大奮闘していきます。

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

足立作品でおなじみの情けない主人公の瞬を演じるのは、関西ジャニーズJr.内のグループ「Boys be」のメンバーである池川侑希弥。親友の隆造役に、日本版『CUBE』(21)などに出演した田代輝など、オーディションで選ばれた子役たちが、実にはつらつとした表情で、等身大の物語を体現しました。

また、瞬の教育ママに臼田あさ美、仕事づけのパパに浜野謙太、隆造の前科持ちの父親に永瀬正敏と、実力派俳優陣が脇を固め、みずみずしい子役たちとのアンサンブルを繰り広げています。本作は足立監督が20年がかりで温めてきた企画の映画化作品だけあって、クオリティーはお墨付き。時代は昭和なのに、令和の世代にも響く青春映画となっています。

小学校での人間関係は社会の縮図でもあると実感

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

瞬(池川侑希弥)は、親友の隆造(田代輝)、トカゲ(白石葵一)、正太郎(松藤史恩)らと駄菓子屋で万引きしたり、学校のオオサンショウウオを逃したりと、いたずらをして怒られながらも楽しい毎日を過ごしていました。町はずれには、トンネルの向こう側まで走り抜けると願いが叶うといわれている「地獄トンネル」がありますが、誰も足を踏み入れる勇気はありませんでした。この4人の少年がトンネルの前でたたずむ姿は、まさに往年の青春映画『スタンド・バイ・ミー』(86)を彷彿させそう。

やがて6年生になった瞬たち4人は、クラスが分かれても仲良くやっていましたが、瞬は塾で知り合った映画好きの西野(岩田奏)とつるむようになったり、いじめっ子のアキラ(蒼井旬)がトカゲにちょっかいを出したり、偉そうな転校生の小林(坂元愛登)が隆造にすりよってきたりして、少しずつ関係性も変化していきます。

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

ある日、アキラにカツアゲされていた西野が転校。日頃は気の弱いトカゲですが、西野のために意を決してそのことを先生に告発します。瞬もカツアゲのことを知っていたのに黙っていたため、小林から「仲間を見殺しにした」と責められて落ち込み、トカゲとの関係性もぎくしゃくしてしまいます。

本作を観て、学校での人間関係は社会の縮図であり、それは昭和でも令和でもきっと変わりないんだろうなと、改めて想像してしまいました。劇中には、誰もが体験していくであろう友情の絆や家族愛とともに、人間関係のしがらみも散りばめられているので、大人が観れば、きっと自分の子ども時代を懐かしみ、今の小学生たちからすれば、もしかしたらリアルな課題として向き合い、何かのヒントを得られるのではないかと。

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

いずれにしても、足立脚本が描く生き生きとした人間模様がすばらしくて、心がチクリと刺されるような痛い台詞や、身も蓋もないトホホな台詞、隠れた愛情を感じさせる台詞などが実に味わい深く、気がつけばいろいろなキャラクターの心情にシンパシーを感じていきます。

子どもを見守る大人の立ち位置が感慨深い

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

家は子どもを守ってくれる場所であるべきですが、そうではない子どもたちもいます。本作では、そんな過酷な状況に置かれた隆造の家庭も描かれていきます。酔っ払った父親に乱暴された隆造が、憎悪をむき出しにして父親に立ち向かうシーンには、思わず息を呑みました。

ぐっと心をつかまれたのが、この一件を経たあと、隆造が瞬に「俺はお前みたいに普通の子になりたい」と心の内を明かすシーンです。そんなふうに本音をさらけ出せる友こそ、人生における宝だなとも思いました。

©2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会

また、瞬のママ・佳子役を臼田あさ美が演じていますが、その肝っ玉母ちゃんぶりが出色でした。隆造の父親が前科持ちであることをなじるという心ない大人もいますが、佳子はちゃんと隆造のことを心配し、声をかけることを忘れません。また、そういう佳子の姿勢を隆造も見ていて、ちゃんとリスペクトしている点もすてきだなと思いました。

子どもが育つ環境はそれぞれに違うけど、どんな子どもも平等にいろんな可能性を秘めていることは間違いないですし、どの子どもたちにも“大志を抱いてほしい”。それはきっと足立監督の強い願いでもあるのかなと。また子どもを見守っていくべき大人たちにも、さりげないけどいろいろなサポートの仕方があるんだなと、佳子を見て、改めて実感させられました。

観終わったあと、『雑魚どもよ、大志を抱け!』というタイトルが、がつんと心に響く本作。明るい未来を築けるであろうパワーが満タンに詰まった子どもたちの演技が白眉です。こういう力強いメッセージをもらえる映画こそ、親子で観ていただきたい!

『雑魚どもよ、大志を抱け!』は3月24日(金)より公開中
監督:足立紳 脚本:松本稔、足立紳
出演:池川侑希弥(Boys be/関西ジャニーズJr.)、田代輝、白石葵一、松藤史恩、岩田奏、蒼井旬、坂元愛登、臼田あさ美、浜野謙太、新津ちせ、河井青葉/永瀬正敏…ほか
公式HP:zakodomoyo-movie.jp/
文・構成/山崎伸子

編集部おすすめ

関連記事