「ピラミッド漢字」ってどんな漢字か知ってる?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

同じ字を3つ並べた漢字「ピラミッド漢字」は、どうして生まれたか

漢字には「品」「森」「轟」のように、同じ字を3つ並べた漢字がたくさんあります。

どうしてこのような漢字が生まれたのでしょうか?

 このような漢字は「品字様(ひんじよう)」と呼ばれています。

平安時代に編纂(へんさん)された現存する日本最古の漢和字書『新撰字鏡(しんせんじきょう)』に、「品字様」としてこのような漢字の例が示されています。たとえば、「贔」「毳」「姦」「磊」といった漢字です。「品字様」というのは、おそらく「品」のような漢字、といった『新撰字鏡』独自の呼び名だったのでしょう。

最近では放送作家の倉本美津留さんが、このような漢字を「ピラミッド漢字」と名付けました。とてもわかりやすい呼び名だと思います。

 この「ピラミッド漢字」はどうして生まれたのでしょうか。

同じ漢字を3つ重ねると、多い、重なる、集まる、という意味合いになる

ご想像の通り、同じ漢字を三つ重ねると、「多い」「重なる」「集まる」という意味合いとなるからです。

『新撰字鏡』で示された漢字で説明してみましょう。

・「贔」

「ヒ」と読みます。「貝」は宝の意味で、これを3つ合わせて力強いという意味となります。ふつう「贔屓」という熟語で使われ、ヒイキと読んでいますが、これはヒキが変化した読み方です。

・「毳」

セイ、ゼイと読みます。密生したやわらかい獣毛を表しています。

・「姦」

カンと読みます。男女のみだらな関係やよこしまであるという意味を表しています。

・「磊」

ライと読みます。石が重なり合ったようすを表しています。

ピラミッド漢字で一番画数が多い漢字とは

ちなみに、「ピラミッド漢字」でいちばん画数が多い漢字は「龘」です。

「龘」

「トウ」と読み、龍が行くさまという意味です。なんと48画もあります!

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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