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『大王製紙』が取り組む「SDGs」 身近な紙おむつを紙パッケージに
2030年に向けて持続可能な開発を地球規模で行うための共通目標、「SDGs」を達成するために、日本企業ではさまざまな取り組みが行われています。資源の使用量や使用素材を見直したり、商品のリサイクル化を進めたり、また、働き方を変えたり、新たな環境整備をしたり……。その取り組み方は企業ごと、じつにさまざまです。
紙おむつは、新生児時代からおむつがはずれるまで子育てには欠かせないアイテムで、『HugKum』読者の皆さんにとっては気になる商品ですよね。今回は、『大王製紙』が取り組んでいる「SDGs」や、地球環境にやさしい紙パッケージで出来た「グーンプラス」について開発の背景を伺いました。
お話をお伺いしたのは
左 『大王製紙』経営企画本部サステナビリティ推進部の飯島恵一さん
右 実際に商品開発に携わったマーケティング本部ベビーケア・ブランドマーケティング部の成塚達哉さん。
「グーンプラス」は機能性を高めた上で、約33%の脱プラを実現!
――まずは、ベビー用紙おむつ「グーンプラス」とは、どんな商品なのか教えてください。
成塚さん(以降成塚):「グーンプラス」は、赤ちゃんの敏感肌に配慮して、肌への刺激を減らすことに着目したベビー用おむつのシリーズです。肌への刺激を抑えるため、「エリエール 贅沢保湿ティシュー」と同じ保湿成分を表面シートに配合して、柔らかくなめらかな肌触りを実現しています。
2021年にはシリーズの全面リニューアルを行いまして、パンツタイプの商品「肌快適設計」では、おなかまわりに新技術の‶超音波接着〟を施したクッションプリーツを採用することにより、赤ちゃんの肌を締め付けない快適なはき心地に生まれ変わりました。
――そうしたリニューアル商品のうち、Mサイズの30枚入り紙パッケージがECサイト限定で発売されているのですね。
成塚:はい、そうです。紙パッケージ化によってプラスチック使用量を約33%削減して、「環境にやさしい」商品となっています。また、従来品は58枚入りでしたが、それを30枚入りのハーフサイズとして展開することで、スペースをとらない「保管のやさしさ」、気軽にお試しいただける「パンツタイプ デビューのやさしさ」を実現しています。
「世界中の人々へやさしい未来をつむぎたい」、この想いが商品開発の根底に
――商品開発の背景には、どのような想いがあったのでしょうか?
成塚:当社では、廃棄プラスチックによる世界的な海洋汚染問題に対して、製品の内容物や梱包資材に、紙や植物由来素材など持続可能な素材を使って、プラスチック量の削減を図ることで地球再生を目指しているのですが、それを紙おむつで実現できないかと思い、開発をスタートしました。
飯島さん(以降飯島):その根底にあるのが、当社の経営理念です。
『大王グループ』では、‶世界中の人々へ やさしい未来をつむぐ〟を実現するため、「3つの生きる」ビジョンを掲げています。
それは、「衛生」「人生」「再生」という観点から描く、当社の未来ビジョンです。
具体的には、「人々の健康を守る」「人生の質を向上させる」「地球を再生する」というビジョンです。当社はこのビジョンを実現するため、全事業活動を通じて社会課題解決に取り組んでいるんです。
今回の紙おむつの開発は、その中のひとつ「再生」に向けての取り組みの中で展開されたものです。
――ベビー用紙おむつは、乳幼児期に本当に多くの量を消費しますから、プラスチック量の削減にとって大きな意義がありますね。
成塚:ええ。紙おむつというのは今のパパやママだけでなく、その子どもたちが将来親となって、次の世代の子どもたちにもつながる商品ですので、その点においても意義があるものだと考えています。
紙パッケージの強度を高めることが、大きな課題に
――開発の際に大変だったことには、どんなことがありましたか?
成塚:いちばんの課題は、パッケージを紙素材にしたことで、おむつを詰める製造工程においてパッケージが破れやすく、また表面にシワが入りやすくなってしまった点でした。
従来品のパッケージは樹脂フィルムなので、柔軟性・伸縮性があって丈夫なんですよね。だから、おむつを詰めても破れたり、シワになったりしません。けれども、紙パッケージは、樹脂フィルムに比べて柔軟性も伸縮性も劣る。だから、ちょっとしたことで破れてしまったり、シワ入りが多くなってしまいました。
――なるほど。では、それをどのように克服したのでしょうか?
成塚:まず、紙とラミネート素材を一から選定し直して、シワが入りにくい素材にしました。
また、それと同時にパッケージの寸法も見直して、おむつをパッケージに詰めるときに、パッケージに負荷がかからないような形状に変更しました。
樹脂フィルムパッケージの従来品には、持ち運びがしやすいように取っ手が付いているのですが、紙パッケージの新商品ではそれをなくしました。また、内容量も少なくしてハーフサイズとすることで、紙パッケージの負荷を軽減させています。
お客様からは環境にやさしいだけでなく、便利になったと言っていただけています!
――確かに、紙素材とは思えないほど丈夫そうなパッケージですね。また、この大きさなら取っ手がなくても軽いので持ち運びしやすいと思います。
成塚:おかげさまで、お客様からは好評をいただいています。「紙パッケージでエコ」「プラスチック削減していてよい」「紙なのでごみも出しやすく、環境にもやさしくてよい」といったように、環境に配慮した商品であることに、いちばん共感していただいています。
また、紙パッケージにしたことで、「中身のおむつが少なくなってもパッケージが自立しているので、最後まで使い勝手がいい」というメリットもあるようです。収納性や実用性の部分でも評価をいただいています。
樹脂フィルムのパッケージは柔らかいので、使うためにいったん破くと、おむつが少なくなるに従って、積み重ねているおむつの段がくずれて外に飛び出してしまうことが多いんですよね。ですから、おむつ専用の収納ケースに入れて使う人が多いのですが、それが紙パッケージの商品では、使い終わるまでパッケージのまま置いておくことができるようになったわけです。
現時点で明確にお伝えできるものはありませんが、今後は大容量枚数の紙パッケージ商品や、Mサイズ以外の紙パッケージ商品をどのように実現させるのか、加工方法も含めて検討・開発していきたいと考えています。
――『大王製紙』では、今回紹介させていただいたおむつ以外にも‶環境や人にやさしい商品〟を開発・販売されていると思います。この機会に、ぜひ赤ちゃんがいる家庭に向けて、おすすめの商品を教えてください。
成塚:「グーンプラス」シリーズの中では、おむつ以外にも「グーンプラス 汚れすっきりおしりふき」がおすすめです。当社で初めて乳液成分を厚手のぽこぽこした手触りのシートに配合したおしりふきで、乳液成分がうんちになじんでうんちを浮かせて、しっかりかき取るように設計されています。
ぽこぽこした突起が、しっかりとうんちをかき取ります。
また、この商品は、シアバターやヒアルロン酸配合で、ノンアルコール、パラベンフリー、しかも無香料なので、おしりふき用途のほかに手やカラダ拭きにも使うことができるんですよ。
飯島:紙パッケージ化した商品では、ほかに「キレキラ®!トイレクリーナー」や、リサイクルパルプ100%の「エルヴェール ペーパータオル」、ECサイト限定販売品の生理用ナプキン「エリス 素肌のきもち ナチュラルシリーズ」などがあるので、おすすめしたいです。
ベビー用品以外にも、ティシューやトイレットペーパー、ウエットティシュー、マスク、生理用品など、皆様の生活に寄り添うやさしい商品がたくさんございますので、ぜひいろいろ試していただけましたら幸いです。
――ご案内いただいた商品は、どれもパッケージや個包装をペーパーにすることで、プラスチック量の削減を実現しているのですね。こうした‶やさしい〟商品を生み出す原動力はどこにあるのでしょう。
飯島:最初に申し上げました経営理念として掲げている「3つの生きる」ビジョンですね。このビジョンがあるからこそ、当社はその実現に向けて誠意と熱意を抱いて、事業活動を展開していけるのだと思います。
――多くの企業には、経営理念が存在しますが、それを具体的に事業活動に落とし込んでいくのはなかなか大変ですよね。
飯島:それを実現していくためのノウハウと、具体的な活動については、ぜひ後編でお話させてください。よろしくお願いします。
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文・構成/山津京子
撮影/五十嵐美弥