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体調の悪さを訴える不登校初期の子ども
お腹が痛い、頭が痛い、だるい……。
子どもの不登校は、朝、このような「体の不調」を訴えることから少しずつ始まることが多いようです。学校へ行けたとしても、保健室で休んでいる子もいます。そして次第に元気がなくなり、朝起きられない日が続き、学校を休みがちになっていきます。
親はそんな子どもが心配なのはもちろんですが、同時に「なぜ学校に行けないのか」という疑問が不満になり、さらに怒りに変わることも。「なぜ行けないの!」と叱ったり、無理やり着替えさせたりと強硬手段で学校に連れて行こうとして、その結果、抵抗する子どもと激しいバトルになる……。このような親子の風景は、とくに子どもの不登校の初期に見られがちです。
無理をすると親子関係は余計にこじれる
「子どもの突然の不登校を受け入れられず、どうしたらいいのかわからなくて気が狂いそうになった経験は私にもあります。でもここで無理に行かせようとしても、子どもは学校に行くようにならないどころか、かえって親子の関係をこじらせ、不登校を長引かせる可能性のほうが高く、逆効果です」と不登校コンサルタントのランさんは話します。
予兆は不登校になる前から見え始める
ランさんは、娘さんが中1の3学期ごろから不登校になり、完全に脱出できるまでに約5年かかったという経験をしています。「今振り返ると、娘は小学校中学年ごろから時々体の不調を訴えていました。それだけストレスを抱えていたことに当時の私は気づかず、ましてこれが不登校の予兆だなんてまったく思ってもいませんでした」と話します。
不登校には前半期、後半期がある
当時の経験と心理学やコーチングから得た学びから、現在は不登校の子どもに対する親のサポート法を編み出し、ブログやオンライン講座などで多くの悩める親を救っているランさん。
子どもが不登校になると、親は訳がわからず奈落の底に突き落とされたような気になりますが、ランさんは「不登校は怖いものと捉えるのではなく、落ち着いて対応すれば大丈夫です。そのためにも前半、後半と子どもの精神状態や言動に特徴があるので、その全容を‶あらかじめ知っておく〟ことで、子どもが今いる状態や親の取るべき対応を冷静に考えられるようになります。親はかなりラクになれますよ」と言います。
日々の小さなストレスの積み重ねが不登校の始まり
親の目にはある日突然、我が子が不登校になったと映ることが多いのですが、じつは子どもはそれ以前から心の葛藤が続いていて、ストレスをため込んでしまっているケースがとても多いといいます。
「そもそも不登校は子どもの自己肯定感の低さが大きく関係しています。例えば親から‶あれしなさい、これしなさい〟‶あれはダメ!〟‶まだできないの?〟などと命令や否定する言葉を言われ続けたり、イライラした親にきつく当たられたりする経験を繰り返すうちに、子どもは〝自分はダメな人間なんだ〟と思うようになり、次第に自信を失っていきます。そして何かトラブルが起きた時に一気に‶もう無理!〟と耐えることができなくなり、学校に行けないという状態になるというパターンが非常に多いのです」
つまり不登校の初期は子どものエネルギーが枯渇して動けなくなっていて、学校へ行けない自分に罪悪感を持っている状態、自己肯定感が非常に低くなった状態だということを親はまず理解してあげましょう。
親の対応を不登校前半期と後半期で変えていく
不登校には「前半、後半」で、親の関わり方を変えるのがポイントです。
前半(最初の約6か月)は、子どもは自己肯定感が低くなっている状態で、何かをやろうというエネルギーもまったく湧いてきません。
この時期に大切な親の対応は
・無理やり学校に行かせない
・行かない理由をしつこく聞いたり、質問攻めにしたりしない
・親の意見を言わない
・つとめて笑顔で子どもの話をよく聞いてあげる
ことです。
例えば子どもが「今日は学校に行きたくない」と言ったら、穏やかに「じゃあ、今日は休む?」と聞いて、休みたいということなら「学校に連絡しておくね」という対応です。親は何日もこのような状態が続くと「いい加減にして!」と言いたくもなりますが、グッとこらえて。難しくてもできるだけ「笑顔」で話を聞いてあげましょう。
ゆっくりエネルギーをチャージ
子どもが行き渋りや不登校を始めてから「約6か月間」が前半の目安。その間はつとめて子どもを見守ることに注力し、家を安全安心の場所にして、エネルギーを溜めさせることを心がけましょう。同時に子どもにこれまで多くのことを頑張らせ過ぎていなかったか、親自身の行動や言動を見直すことも大切です。
「お母さん自身の心のケアも同じくらいしっかり考えてください。反省は大事ですが、自分を責めすぎないで、今日からできることを考えていきましょう」
後半は3つの選択肢を与えて、子どもに決めさせる
子どもの不登校状態が安定し、子どもが「ヒマだなぁ」などと言い出したら、不登校「後半」の始まり。子どもの心にエネルギーが溜まってきた証拠です。
とはいえ、急に学校に毎日行ける状態になるわけではなく、一進一退を繰り返すのが普通です。なので子どもが「今日は学校どうしよう……」と迷っている様子なら
「休む?」
「午後から行く?」
「お母さんに何かできることある?」
と3つの選択肢を与えて、自分で考えて答えを出すようにさせるのがいいでしょう。
無理強いはせず、子どもにとっての安心感を大切に
「大切なのは子どもを否定せず、子どもが‶お母さんは私を受け止めてくれている、応援してくれている〟という安心感をもてる接し方です。お母さんが学校までいっしょに来てくれれば安心というなら、いっしょに学校に行ってあげましょう」
後半は不登校が始まってから約6カ月以降が目安ですが、子どもの特性や精神状態、親子関係の改善具合により差があり、前半が長引く子もいれば、後半が長引く子もいます。厳密に「はい、今日から後半戦」という線引きはできませんが、子どもがエネルギーを溜められてきたな……ということなら子どもの様子が変わってくる可能性が高くなります。親は子どもをよく観察して、「行動を促す声掛けはするが、決して無理強いさせない」を意識しましょう。
子どもをコントロールして解決しようとしないこと
ランさんが娘の不登校経験やオンライン講座受講生の子どもたちの不登校の状態を聞くなかで、親がやってしまいがちで「逆効果」なことに共通点があるといいます。
それは、親が子どもを一生懸命コントロールして解決しようとすること。例えば無理やり学校に連れていくこと、朝、無理やり起こすこと、「学校に行かないのだからとせめて家で勉強しなさい」と勉強を強制すること、学校に行けない理由をしつこく聞くこと、有無を言わさずスマホやゲームを取り上げること……など。親の愛情や子育ての責任感の強さゆえなのですが、それでもNGです。
褒める、励ますも言い方に注意
そして子どもを元気づけるために褒めたり、励ましたりというのも注意が必要です。
「〇〇できるあなたは素晴らしい、という褒め言葉は、同時に〇〇できないあなたはダメだという条件付きの愛なのです。子どもはこう言い続けられると、〇〇できない私を親は認めてくれない、ということを学びます。励ましも同じ。〇〇がんばって、と言われると、子どもは無理してでもそれをやらなくては、親は自分を認めてくれないと考えます」
親が思わず本心から褒めるのはいいのです。しかし、子どもによかれと願って言う褒め言葉、励まし言葉には、「よくなってほしいから」という目的、下心があり、不登校中の子どもには大きな心の負担になることが多いのです。
ねぎらいの言葉は子どもに染みる
「それよりもねぎらいの言葉がいいですね。‶朝自分で起きてえらいね〟と褒めるのではなく、‶自分で起きれたんだ。まだ眠いんじゃないの?〟とねぎらう。そして‶朝ごはん食べる?〟など普通の会話を続けるほうが、子どもはうれしく感じるものです」
ただ必要以上に神経質になる必要はありません。「学校で何かあったの?」とか「お腹が痛いなら病院に行く?」など、気になることは聞いていいのです。そのときに「親の意見や考えは言わない」ことが大事だということです。
子どもの言葉を真に受けない
子どもとのやりとりで親がイライラし、ヒートアップしてしまうことはあるでしょう。そんなときは、子どもの言葉を文字通りに真に受けないという心がけも大事。例えば、「ママなんか大嫌い!」というのは、「ママのこと大好き。だからわかってほしいの!」という痛切な叫びだと受け止めましょう。
「よく‶勉強についていけなくなったから、学校に行けない〟という子どもがいます。これは‶学校に行きたいのに、いけなくて辛いんだ!〟という意味なのです。言葉通りに理解して‶じゃあ塾に行こう〟ではなく、子どもが本当は言いたいメッセージを読み取ることが大事。親だからこそ、子どもの言葉を翻訳することができると思いますね」
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記事監修
中1で不登校が始まった娘との数々の失敗を乗り越え、約5年かかって不登校から脱出した経験と、その時に学んだ心理学やメンタルトレーニングを活かし、同じような悩みをもつ母親に向けたブログやオンライン講座を展開。全国の不登校の子どもを抱え悩む母親たちのサポートをしている。著書に『子どもが不登校になっちゃった!』(すばる舎)がある。
不登校ママから脱出した!ランのブログ https://ameblo.jp/ran-consulting/entrylist.html
不登校脱出オンライン講座 https://www.ran-consulting.com/