『竹取物語』とは?
光り輝く竹の中から、かぐや姫が生まれる。そんな誰もが知っているストーリーが、『竹取物語』です。でもこの作品について、だれが、いつ、作ったものか知っている人は少ないかもしれません。あらためて『竹取物語』の背景から見てみましょう。
平安時代に生まれた作品
『竹取物語』は平安時代前期に生まれた物語で、日本に現存する最古の物語と言われています。作者は不明で、作品ができあがった正確な年もわかっていませんが、研究者によって「9世紀後半」という説と、「10世紀中頃」という説があります。
国: 日本
作者:不詳
発表年:平安時代前期(9~10世紀)
作者はどんな人?
『竹取物語』ができたのは、平安時代。今から1000年以上も前の時代です。作者はわかっていません。
しかし当時の人々の識字率は今より低いことや、貴族の情報が物語に織り込まれていること、漢語や漢文の使用もあり漢学にも精通していることなどを考慮すると、仏教や和漢の知識をもった男性と推定されていますが、その真実はわかっていません。
いつの時代の話?
平安時代にできたという『竹取物語』は、仮名文でできた日本で最初の文学とも言われています。平安時代につくられたことから当時を舞台にした物語とも、登場人物に擬せられた歴史上の人物から奈良時代が舞台とも考えられます。
物語のあらすじ|「詳しく」&「簡単に」2バージョンでご紹介
かぐや姫が主人公の『竹取物語』。日本昔話でおなじみの話ですが、どんなストーリーだったか、あらすじを覚えていますか?「詳しく」と「簡単に」の2バージョンでご紹介しましょう。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
昔々、あるところにおじいさんがいました。おじいさんは山に入り竹を取って細々と毎日を送っていました。ある日、いつものように竹を取りに山に行くと、光る竹を1本見つけたのです。不思議に思ったおじいさんは竹に近づき、竹を切ってみました。すると、中には三寸(約9㎝)ほどの小さなかわいらしい女の子がいたのです。神様が授けてくれた女の子にちがいないと思ったおじいさんは、女の子を家に連れて帰りました。おばあさんも喜び、2人は「かぐや姫」と名付け、一緒に育てていくことにしたのです。
かぐや姫が家にきてからというもの、おじいさんが竹取りに行くと小判が出てきたり、不思議なことが続きます。おじいさんとおばあさんはあっという間に大金持ちになっていきました。
また、かぐや姫は人間とは思えない早さですくすくと大きくなっていき、美しい女性になりました。すると、かぐや姫の美しさは噂となり、多くの男性がその姿を一目見ようと家に集まるようになります。しかし、男性が手紙を送ったり、家に行ったりしても、かぐや姫は一向に姿を見せることはありませんでした。そして、結婚を申し込んできた5人の男性に、かぐや姫は「私の望むものを手に入れた方と結婚します」と言うのです。それらは、入手がとても難しいものばかり。結局、5人の誰もかぐや姫と結婚することはできなかったのです。
さらに、天皇(みかど)にもかぐや姫の評判が伝わり、次は天皇がかぐや姫を宮仕えさせようとします。しかし、かぐや姫は宮中に仕えることもかたくなに断ってしまいます。かぐや姫を連れて帰ることをあきらめた天皇ですが、その後はかぐや姫と手紙でやりとりするようになります。
そんな日々を送っていたとき、かぐや姫はふと物思いにふけり、思い悩んだり泣いたりするようになりました。心配したおじいさんが聞くと、かぐや姫は自分は月の者で、15日には月に帰らなければならないことを打ち明けたのです。嘆き悲しんだおじいさんは、天皇に護衛の人々を依頼します。
そしてやってきた15日。夜中なのに昼間のような明るさになり、月の使者が舞い降りてくると、月の不思議な力によって護衛の人々は何もできずにいます。泣き続けるおじいさんに、かぐや姫は手紙と着物を残し、天皇には手紙と月の使いが持ってきた不老不死の薬を渡し、月に帰ってしまったのです。
かぐや姫がいなくなってしまった後、おじいさんとおばあさんは生きる希望を失ってしまいました。一方の天皇は、かぐや姫からもらった不老不死の薬を飲んで新しい人生を始めようとするものの、それでもかぐや姫に会うことはできないからと、手紙と不老不死の薬を焼き払ってしまいました。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
昔々、竹を取って生活していたおじいさんがいました。ある日、いつものように山に竹を取りに行くと、光り輝く竹を見つけます。不思議に思って竹を切ってみると、中には小さな女の子がいたのです。おじいさんは女の子を連れて帰り、おばあさんと一緒に「かぐや姫」と名付け、大事に育てていくことにしました。
すると、おじいさんは山で小判を見つけたりして、大金持ちになります。また、人間とは思えないスピードで成長していったかぐや姫は、どんどん美しい女性になっていきました。そんなかぐや姫は、次々と男性から求婚されるようになっていくのです……。
竹取物語の主な登場人物
『竹取物語』のあらすじを追ううえで知っておきたい、主な登場人物を確認しましょう。
かぐや姫
『竹取物語』の主人公で、月の都の人。罪を犯したことから地上に送られてしまいます。
竹取の翁(おきな)
竹取(竹を取ることを仕事とする人)の老人。野山などに竹を取りに行き、そこでかぐや姫と出会い、かぐや姫を育てることにします。文献によって「さかきのみやつこ」「さるきのみやつこ」などの名前がついています。翁はかぐや姫を見るだけで、心が苦しいときもその苦しみが消えたと言っています。
翁の妻
かぐや姫を見つけた翁とともに、かぐや姫を自分たちの子どものように育てていきます。
5人の公達(きんだち)
公達(きんだち)とは、皇族の人のこと。かぐや姫の美しさに心を奪われた男性は、こぞって翁の家のまわりに集まり、かぐや姫に求婚します。彼らに出された求婚に応じるためのお題はどれも難しいことばかり。後述します。
竹取物語が読み継がれている理由
『竹取物語』がいまでも人々に読み継がれているのは、なぜでしょうか?
日本最古の物語で、昔話でもおなじみ
先にご紹介したように、『竹取物語』は日本最古の物語です。作者も成立年もわかっていませんが、平安時代というはるか昔にできた物語で、今なお読み続けられている点は驚きに値します。
また『竹取物語』は、「かぐや姫」の題名の日本昔話でもおなじみ。小さい頃から絵本の読み聞かせなどで、多くの子どもたちが親しんできた作品のひとつです。挿絵にしても美しく、絵本作家や読者たちの想像力をかきたてるストーリーも魅力です。
さまざまな読み方ができる
『竹取物語』は、さまざまな読み方ができます。例えば、かぐや姫はなぜ罰を受けて地球に送られたのか? つらい別れをして月に帰ることも、もう一つの罰になったのではないか? などと考えることもできます。
また、おじいさんとおばあさんにとってみれば、大金持ちになれたものの、かぐや姫を失う悲しみで物語は終わることで、バッドエンドの物語と言えます。そんな風に、さまざまな読み方ができる物語の奧深さがあります。
5人の求婚者に課された無理難題、そのディテールが面白い
かぐや姫の求婚者と、彼らに「これを手に入れてくれたら」と求められたお題は以下のとおり。
石作皇子には「仏の御石の鉢」。インド(天竺)にひとつしかないという逸品です。
車持皇子には「蓬萊の玉の枝」。根が銀、茎が金、実が真珠という伝説の木の枝です。
右大臣阿倍御主人には「火鼠の裘(かわごろも)」。焼いても燃えない貴重な布といわれています。
大納言大伴御行には「龍の首の珠」。その名のとおり、龍の首に光っている球です。
中納言石上麻呂には「燕の産んだ子安貝」。鳥が産んだ貝がそもそも実在するのでしょうか・・・。
求婚者たちは当然ながらこの難題をクリアできず、ある者は入手したものが偽物であったり、入手できなかったことを恥じて姿を消したり、なかには命を落とす者も。このあたりのディテールには趣向が凝らされていて、物語としての魅力のひとつです。
また、5人の求婚者たちは実在の人物がモデルで、壬申の乱で勝利した天武天皇の側近たちといわれています。
名作「竹取物語」を読むなら
『竹取物語』に興味を持ったら、子どもも大人もぜひ手に取って読んでみましょう。
『新版 竹取物語(現代語訳付き)』
最新の研究をもとに、原文に注釈や現代語訳をつけた一冊です。広く知られている『竹取物語』の魅力を再確認できるかもしれません。
『現代語訳 竹取物語』
美しい現代語訳で楽しめる『竹取物語』。川端康成による詳しい解説で、はじめて古典に親しむ1冊として最適です。
『マンガでさきどり竹取物語(教科書にでてくる古典)』
授業の前にマンガで物語を先取りできる『マンガでさきどり』シリーズ。表紙のキャラクターと一緒に物語の概要をつかんでおくと、古典の授業がぐんと楽しくなるかもしれません。
あらためて『竹取物語』を読んでみよう
日本で古くからある作品のなかでも、日本昔話の「かぐや姫」でおなじみで、とりわけ多くの人に知られているのが『竹取物語』ではないでしょうか。あらためて作品を読んでみると、以前は気づかなかったことに目を向けたり、何か感じたりすることがあるかもしれませんね。
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文・構成/HugKum編集部