本が大好きだった小学6年生は、高校生2年生の今、どんな本を読んでいる?徹底ルポ【本好きキッズのその後】

中学生になったら本を読まなくなった。小学生の頃はあんなに本が好きだったのに。これ、よく聞く話である。

本好きな子どもたちと、親の関わり方を探った連載ルポ「本好きキッズの本棚、見せて見せて」。2019年の最初の取材から数えると、4年が経った。あの時の子どもたちは今も本を読んでいるのかいないのか? 小学生時代の読書の効果はあるのかないのか? 子どもたちの「その後」を訪ねた。

サッカーも全力で継続中 ファンタジー好きだったヤマト君

最初に向かったのは、連載1回目に登場したファンタジー好きのサッカー少年ヤマト君だ。

現在、高校2年生。県内有数の進学校に通い、中学に続き、高校でもサッカー部に所属している。

「中学時代は部活一色で、それに友達づきあいもワンセットでついてくるような、絵に描いたような男子中学生でした。今も、部活と友達優先というのは変わらないですね」と、母のカズヨさん。

ヤマトくんの本棚

本は?と聞くと、中学生になるとあまり読まなくなったという。しかし、よくよく聞いてみると、読まなくなったと言っても、それは以前に比べてのこと。小学生の頃から好きだった『ハリー・ポッター』シリーズは時々手に取っていたそうだし、『それいけズッコケ三人組』シリーズも楽しんでいた時期があった。

小学校5年生の時のBEST10とは少し毛色も変わって

小学5年生の頃の「好きな本ベスト10」

ヤマト君が『ズッコケ三人組』とは、意外。ヤマト君が小学5年の時に書いた「好きな本ベスト10」には、『ルドルフとイッパイアッテナ』や『びりっかすの神様』などが並んでいたからだ。

「図書カード1万円分が当たったことがあって、2、3冊読んで面白いと思っていたズッコケシリーズを買うことにしたんです。あの三人に共感するというよりは、変なヤツらだなぁと思って読んでいたみたいですよ。どちらかと言うと、学区的には『良い子』が多くて、ヤンチャな子や悪目立ちするような子がいない小学生時代だったので、異世界のような感覚だったのでしょうか。「お母さんが子どもの頃って、こんな感じだったの?なんて聞かれました」と振り返る。

1970年代に始まったシリーズだけに時代性を感じるが、それだけが新鮮だったのではないだろう。カズヨさんの話を聞くうちに、個性豊かな三人組の巻き起こす事件や冒険そのものが、ヤマト君にとってはファンタジーに映ったのかもしれないと思った。

6か月の頃から続けた読み聞かせは?

そう言えば、寝る前の読み聞かせはどうなったのだろう。カズヨさんは生後6ヶ月の頃からずっと読み聞かせを続けてきた。小学校卒業を目前にしていた4年前、「もういいよ」と言われるまでは続けていきたいと話していたけれど。

「絵本を読む代わりに、スポーツマッサージをするようになりました。私、スポーツマッサージの勉強をしたんです。塾にも行くようになって時間がなくなったのもあって、絵本の時間はマッサージにしてというリクエストでした。私自身がフルタイムで働き始めたのもあって、助かるなぁという気持ちと、成長したんだなぁという嬉しさもある反面、寂しさも感じました」

中学生になったヤマトくんにささった作品は?

それでもカズヨさんは時折、ヤマト君に本を薦めてきた。

上下巻の場合は、上巻だけ。上巻止まりのことが多いそうだが、珍しくヤマト君から「下巻、買ってきて」と言われた本があった。『かがみの孤城』だ。

かがみの孤城 上下巻

「本好きの夫も、たまたま読んでいて、『これ、泣いたぞ』と言っていたのを聞いたのも大きかったかもしれません。今回の取材を受けることになったので、中学時代に心に残った本はある?と聞いたら、『かがみの孤城』だと言っていました」

そして、今。
「本を読んでいるのを最後に見たのは、ユーチューバー・コムドットのやまとが書いた『聖域』だったと思います。やまとの『アイドル2.0』も読みかけていましたが、読み切ったのかどうか。

そんなわけで今一番読んでいるのは、動画のテロップ。動画は2倍速で見ているみたいなんですけど、『活字読むの、めっちゃ速いで』と本人は言っています」と苦笑した。


幼い頃からの読み聞かせや小学生時代の読書がもたらしたものはあるのか。最後に尋ねた。

「国語が得意だと言ってくれたらいいんですけど、そうでもないです。テストの問題を作っている人とオレは、感じる場所が違うとか言ってますね。それでも、お葬式のようなスマホを触らない方がいいタイミングでは、本を見繕って持って行きますから、高校生としては本が身近な方なのではないかと思います」と言いつつ、こう続けた。

「国語は別として、読解力はあると思います」

家族で楽しむ麻雀が大切なコミュニケーションに

カズヨさんのお宅では、現在麻雀が“来ている”。この日も、「半荘(ハンチャン/麻雀1ゲームのこと)、やろうよ」とヤマト君から声がかかっていた。

「だんだん親のことは相手にしてくれなくなるので、週末どう過ごしたらいいかと考えてボードゲームをやったりしていました。小6くらいから麻雀も少しずつ始めていたんです。脳トレ効果もあるそうですね。ルールが難しいので、親子3人でルールブックを回し読みしましたけど、ヤマトはすぐに理解していましたから、読解力は身についているのだと思います」

今は本から離れていても、いつか読みたいと思う本に出会うはず。読む力を持っているヤマト君は、また本の世界を楽しむんじゃないかな。そうカズヨさんと話した。

ヤマトくんの小学生時代はこちら

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取材・文/須藤みか

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