新連載【本好きキッズの本棚、見せて見せて!】神戸市・公立小学校6年サッカー少年ヤマトくんの場合

「ウチの子、本の虫で(大好きで)・・・」
あ~こんなセリフ言ってみたい!

親にとって「本好きな子」は永遠の憧れ!?そして願いですね。
そこで、JPIC読書アドバイザーで小学生男子の母でもある、ノンフィクションライター・須藤みかさんにいろんな本好きキッズの本棚を報告してもらう連載がスタートします。
本が好きな子はどんな本を読み、どんな本棚に収納しているのか、親の関わり方は?など、ルポを読むと参考にしたいあれこれがきっと見つかるはず!

サッカー漬けでも本好き少年に。カギは母親とのリセット・タイム

本の好きな子になってほしいーー。

理由はさておき、多くの親が願うことだ。赤ちゃんの頃から読み聞かせを始める家庭も多いだろう。始めがあれば、終わりもある。「いつまで続けるか」問題は、読み聞かせに熱心に取り組んできた家庭ほど、悩むところだ。「子どもが読んでと言ってくる間は読んであげましょう」というのが最近の通説のようだが、それこそ個人差もある。

サッカー大好き少年、ヤマト君(小6)の場合

神戸市在住のカズヨさんが、読み聞かせを始めたのはヤマト君が生後6ヶ月。小6になる今も読み聞かせは続けている。ヤマト君はひとりっ子。サッカーが大好きで、強豪チームに所属。週5回練習に通う。将来の夢はサッカー選手。コーチに勧められた生活習慣ノートも毎日欠かさず書いている。サッカーを中心に回っている生活だ。

「今のところ、いやとは言わないので、寝る前の読み聞かせは続けています。私にとっても楽しい時間です。一日いろんなことがありますが、絵本を読む時間がちょうどいいリセットの時間になっているんです」

読む本は図書館で借りてくる。カズヨさんの習い事の場所と図書館が隣接していることもあって、週2回通う。今回話を聞いた日、借りていたのはこの5冊だった。

サッカー選手になることを夢見た少年が、ワールドカップのピッチに立つまでを描いた『ミラクルゴール!』や、機関車の大好きな少年の冒険を描いたミヒャエル・エンデ作品の絵本版『ジム・ボタンがやってきた』『ジム・ボタンのたびだち』。そのほか、お父さんの帰りを待つ間の女の子の想像がハラハラドキドキの『おとうさんは、いま』に、『もりのアイスクリームやさん』『ビッグフェイスくん』。

小学6年生でも、読み聞かせは欠かさない。

「楽しい話を聞くと、楽しい気分で眠れる」

ヤマト君のリクエストで、寝る前の読み聞かせの絵本はハッピーエンドのものを選ぶ。「楽しい話を聞くと、楽しい気分で眠れる」…なるほど。図書館では、カズヨさん自身が読みたい小説や育児書、実用書なども借りてくる。

「私自身は小学生の頃、『キュリー夫人』『ヘレン・ケラー』などの伝記や『ズッコケ3人組』は人並みに読みましたが、本を読む習慣はあまりありませんでした。家で読み聞かせをしてもらってもいません。中学生になり、塾に行くようになって、ある時、国語の自由記述式の問題があって、ほめられたんです。塾の先生に、『あなたは、もっと本を読んだらいい』と筒井康隆を勧められたのがきっかけで、本を読むようになりました。絵本も児童書も、いい本がたくさんありますよね。私は大人になってから知ったので、子どもには本の好きな子になってほしいと思っていました。読書の習慣は、サッカーを続ける上でも、今後の勉強や受験にも支えになってくれるのではないかと思います」

母の願いはかなって、ヤマト君は本好きな子になった。幼い頃、特に好きだったのは電車の本だ。1冊1冊の絵本がいとおしい記憶として心に残っている。

電車好きな幼児の頃にハマったのが、この5冊

『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』はモノクロの地味な絵本にも関わらず、子どもを惹きつける不思議な絵本ですよね。怖がりだった息子は、ちゅうちゅうが迷い込んだ廃線のページで、ものすごく怖がるのに何度も読みたがりました。『やこうれっしゃ』は文字のない絵本です。電車に乗ってから降りるまでの夜行列車の様子が描かれていますが、それぞれの乗客にストーリーがあるんです。それを2人で探しながら話すのが本当に楽しくって! 『きかんしゃやえもん』も大好きでしたし、『せんろはつづく』にも本当にハマりました。児童書への移行時期によく読んだのは、『ふたごのでんしゃ』です。すっかりボロになった二人の機関車が、最後はこども図書館として生まれ変わるという素敵なおはなしです」

そして、現在。ヤマト君が好きなジャンルは、ファンタジー。5年生の時に書いたという「好きな本ベスト10」を見せてもらった。

1位は『ルドルフとイッパイアッテナ』で、2位が『びりっかすの神さま』。サッカー選手を夢見る少年たちの物語『フットボール・アカデミー』も4位に入っている。このシリーズはもう3、4回は読み返していて、トイレやお風呂の中でも読んでいるそう。本も好きだが、マンガも読む。大好きなのは、サッカー少年が主人公の『アオアシ』だ。

親の下心で渡した本は、見破られます(苦笑)

本は図書館で借りることが多いが、買うことも少なくない。クリスマスには本を贈るし、ヤマト君が興味を持ちそうな本を見つけると買うのだが、時々、親目線で買ってしまうことがある。

「この前は、『大草原の小さな家』を原作とした安野光雅さんの絵本をつい買ってしまいました。(本を見せてくれながら)ほら、すごく素敵でしょう。でも、息子は読まなかったですね。私の“こんな本を読んでほしい”という下心が見えてしまうんでしょうね」と苦笑いする。

4月からは中学生。「もういいよ」と言われるまでは読み聞かせを続けていくそうだ。

ヤマトくんが夢中になった本はこちら

幼少期の5冊


『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
文・絵/バージニア・リー・バートン 訳/むらおかはなこ 福音館書店


『やこうれっしゃ』
作/西村繁男 福音館書店


『きかんしゃえもん』
作/西村繁男 福音館書店


『せんろはつづく』
文/竹下文子 絵/鈴木まもる 金の星社


『ふたごのでんしゃ』
作/渡辺茂男 絵/堀内誠一 あかね書房

小5のおすすめ/ファンタジー10選


『ルドルフとイッパイアッテナ』
作/斉藤洋 絵/杉浦範茂 講談社


『びりっかすの神様』
作・絵/岡田淳 偕成社


『エルマーのぼうけん』
作/ルース・スタイルス・ガネット 絵/ルース・クリスマン・ガネット 訳/わたなべしげお 編/子どもの本研究会 福音館書店


『フットボール・アカデミー』
作/トム・パーマー  訳/石崎洋司 訳 絵/岡本正樹 岩崎書店


『ぼくたちのリアル』
著/戸森しるこ 絵/佐藤真紀子 講談社


『大どろぼうホッツェンプロッツ』
作/プロイスラー 作 絵/トリップ  訳/中村浩三 偕成社


『きまぐれロボット』
作/星新一 角川つばさ文庫


『さかさ町』
作/F.エマーソン・アンドリュース 絵/ルイス・スロボドキン 訳/小宮由 岩波書店


『9月0日大冒険』
作/さとうまきこ 絵/田中槇子 偕成社文庫


『学校ウサギをつかまえろ』
作・絵/岡田淳 偕成社

小6のおすすめ


『ミラクルゴール!』
作/マイケル・フォアマン 訳/せなあいこ 評論社


『ジム・ボタンがやってきた』
原作/ミヒャエル・エンデ 、再話/ベアーテ・デリング 絵/マティアス・ヴェーバー  訳/酒寄進一 長崎出版


『ジム・ボタンのたびだち』
原作/ミヒャエル・エンデ 、再話/ベアーテ・デリング 絵/マティアス・ヴェーバー  訳/酒寄進一 長崎出版


『おとうさんは、いま』
文/湯本香樹実 絵/ささめやゆき 福音館書店


『もりのアイスクリームやさん』
作/舟崎靖子作、絵/舟崎克彦 偕成社


『ビッグフェイスくん』
作・絵/DAIGO ワニブックス

サッカーマンガ


『アオアシ』
作/小林有吾 取材・原案協力/上野直彦 小学館

母の推薦本


『小さな家のローラ』
作/ローラ・インガルス・ワイルダー  絵・監訳/安野光雅 朝日出版社

番外/母が読んだ本


『キュリー夫人 おもしろくてやくにたつ子どもの伝記9』
文/伊東信 ポプラ社


『ヘレン・ケラー おもしろくてやくにたつ子どもの伝記7』
文/砂田弘 ポプラ社


『それいけズッコケ三人組』
作/那須正幹 絵/前川かずお ポプラ社

 

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取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。

イラスト/カラスヤマミライ

※学年は取材時のものです。

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