「ウチの子、本の虫で(本が大好きで)・・・」
あ~こんなセリフ言ってみたい。
親にとって「本好きな子」は永遠の憧れ!? そして願いですね。
そこで、JPIC読書アドバイザーで小学生男子の母でもある、ノンフィクションライター・須藤みかさんにいろんな本好きキッズの本棚を報告してもらいます。
目次
好きは上手の元、本好きの元!”好き”がイモムシ、イモリでも!?
虫が好きなのは男の子だけ? いやいや、そんなことはないでしょう。古くは平安時代に書かれた短編集『堤中納言物語』の『虫めづる姫ぎみ』のように、どの時代にも虫を愛する虫ガールはいるのだから。
虫嫌いの親だけれど…虫好きの少女は育つ!?
ヒスイちゃんは、小さい頃から虫ガールだった。好きな虫は、イモムシやスズメガ。また、ダンゴムシやイモリもお気に入りだ。
さぞかし親も虫好きなのだろう。そう思いきや、
「私は虫が好きなわけではないですし、主人にいたっては虫が一番嫌いなんですよ」
と母のユウコさん。
ユウコさんが読み聞かせを始めたのは、生後半年から。どんな絵本を読めば良いか分からなかったので、月齢に合わせて毎月絵本と玩具が届くサービスを利用した。しばらくすると図書館を利用したり、書店でユウコさんが本を選んだりするようになったそう。
絵本には見向きもしない幼少期。唯一、どっぷりハマった本があった
当初、ヒスイちゃんは絵本にはあまり興味を示さず、虫や生きものを見たり触ったりするほうが好きだった。
ところが・・・虫の図鑑には夢中になった。
初めて自分から欲しいと選んだ最初の本も、幼児向けの図鑑『むし ポカポカフレンズのえほんずかん』。何はなくてもこの図鑑。公園に行く時はもちろんのこと、それ以外でもこっそり自分のカバンの中に入れていたそう。
最初にヒスイちゃんが自分で選んで買ったお気に入り。いつも持ち歩いていたので、壊れてしまいユウコさんが何度も補修した。
「夜の読み聞かせで、これ読んで、と持ってくるのは、虫の図鑑。
どう読めばいいの!?
悩みましたが、虫の名前や情報を読むだけで本人は満足していたようです。でも、私はすぐに眠くなってしまうので、大変でした(苦笑)。だから私は、読み聞かせはあんまり頑張ってこなかったほうだと思います」
虫の図鑑はポケットタイプも合わせると、なんと50冊以上あるという。
「春を迎えるたびに、『虫なんか嫌い』と言うかなと実は期待していたんです。でも5歳くらいであきらめました。この子の虫好きは変わらないと思ったので。であればもう、バックアップしていこうと決めたんです」
やがて絵本好き少女に変身。虫・生き物が題材のものばかりだけれど・・・
「私たち親は虫が好きではないので、一緒に虫捕りはできませんでしたが、博物館や虫関係のイベントなどにはよく連れて行きました。『図鑑』もいろいろなタイプがあるんですよね。どんどん詳しく、細分化しています。
やがて虫や生き物が出てくる『絵本』も好きになっていきました。「娘の持っている絵本のほとんどが、虫か生きものの出てくるものなんです」
なるほど本棚に並んでいたのは、虫たちが暮らす「やなぎむら」を舞台にしたシリーズの『サラダとまほうのおみせ』『ほたるホテル』『きんいろあらし』『ふわふわふとん』や、イキなクモの親分が事件を解決する痛快時代劇絵本『くものすおやぶんとりものちょう』など。おそろいの自転車で森や海、野原におでかけする『チリとチリリ』シリーズもあった。
ゲームもマンガも好き。もちろん読書も好き。
そして現在。ヒスイちゃんの好きなことは、読書とゲーム。好きな教科は、理科。
好きな有名人は、「照之さま」。昆虫好きで知られる俳優の「香川照之さん」だ。
好きな本のジャンルも、もちろん虫。『ファーブル先生の昆虫教室』シリーズや『虫と遊ぶ12か月』『ぼくらの昆虫採集』などのほか、虫の雑誌(『月刊むし』や季刊誌があるのだとか!)も読む。
虫以外の本も手に取るようになった。ゲームで知った『レイトン教授』シリーズなどのミステリーのほか、オカルトものも。ユウコさんは「女の子の友だちが好きな本を読まないのが少し気になっていた」が、高学年になると友だちから勧められてつばさ文庫などの続きものも読んだりするように。マンガも好きだ。
読書量には、波がある。先月は9冊。多い月だと20冊ということも。少ない月でも3冊は読むそう。
「親としては、『精霊の守り人』などの物語も読んでほしいなという気持ちはあります。本を通して、ちょっとずつステップアップというか、世界を広げてあげたいとも思っています。でも、私自身が子どもの頃、自分が読みたい本を読んできたので、『こんな本があるよ~』とは伝えますが、読むかどうかは本人に任せています。
最近私が勧めた本で娘が読んでいたのは、やっぱり虫系ですが『昆虫楽園』ですね。ちょっと大人っぽいかなと思いましたが、楽しんでいたようです」
「『昆虫楽園』は虫ぎらいなお母さんにも読んでほしい」と、ユウコさん。
将来の夢はやっぱり、昆虫学者!
高学年ともなると洋服やファッションに興味を持つ女の子も多くなるが、ヒスイちゃんが気にするのは服については着心地がいいかどうか。服を買いに行きたいと言い出すことはあまりないが、「本屋さんに行くよと言うと、ついてくるんですよ」と、ユウコさんは少し嬉しそう。
本好きなのは、家族共通。“出かけたついでに本屋へ”は、鉄板コース。高速で約1時間の金沢の大型書店へ行くことは、家族そろっての楽しみだ。書店に着くと、集合時間を決めてそれぞれの好みのコーナーに散って行く。
「以前は本なら無条件で買い与えていましたが、置く場所の問題やジャンルも増えてきてキリがないんですよね。12歳の誕生日プレゼントは図書カードにしました。自分で考えて買うように話しました。あっという間に使いきってしまいましたが…」
最近、ヒスイちゃんには好きなことが増えた。それは、物語を書くこと。将来の夢は、昆虫学者と小説家だ。
「お話を書いて友達と交換し合ったりしているようです。その影響なのか、以前は知らない言葉が出てくると、どういう意味?と私にすぐ聞いていましたが、自分で『大辞林』をひいて調べることが増えました。私はしめた!と、ほくそ笑んでいます。
ゲームに夢中になった時もあったので、もっと本を読んでほしいなと思った時期もありましたが、無理強いせずに見守って来た甲斐もあってか、本を読むことは大好きと言っています。
私が感じた“本との楽しい時間”を娘も持てているのかなと、嬉しく思っています」
ヒスイちゃんが夢中になった本はこちら
先ほどもご紹介しましたが、ヒスイちゃんが「初めて選んで買った本」やヒスイちゃんの「本棚の本」などを一挙ご紹介します。
【初めて選んで買った本】
『むし(ポカポカフレンズのえほんずかん)』
監修/矢島稔 絵/さつきねむ ミキハウス
【本棚からチョイス】
『サラダとまほうのおみせ』
作/カズコ・G.ストーン 福音館書店
『ほたるホテル』
作/カズコ・G.ストーン 福音館書店
『きんいろあらし』
作/カズコ・G.ストーン 福音館書店
『ふわふわふとん』
作/カズコ・G.ストーン 福音館書店
『くものすおやぶんとりものちょう』
作/秋山あゆ子 福音館書店
『チリとチリリ』
作/どいかや アリス館
『てとてとだんごむし』
作・絵/みなみじゅんこ ひさかたチャイルド
『ととととだんごむし』
作・絵/みなみじゅんこ ひさかたチャイルド
【ただ今、夢中】
『ファーブル先生の昆虫教室1 本能のかしこさとおろかさ』
文/奥本 大三郎 絵/やましたこうへい ポプラ社
『ファーブル先生の昆虫教室2 昆虫研究の楽しさ』
文/奥本 大三郎 絵/やましたこうへい ポプラ社
『虫と遊ぶ12か月』
著/奥山英治 デコ
『ぼくらの昆虫採集』
監修/養老孟司・奥本大三郎・池田清彦 デコ
【虫 以外の本】
『月刊むし』
むし社
『レイトン教授とさまよえる城』
原案・監修/レベルファイブ 著/柳原慧 小学館
【母の推薦+それでハマった本】
『精霊の守り人』
作/上橋菜穂子 絵/二木真希子 偕成社
『昆虫楽園 インセクト・パラダイス』
著/澤口たまみ 山と溪谷社
【おまけ】
『虫めづる姫ぎみ』
文/森山京 絵/村上豊 ポプラ社
取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。
※学年は取材時のものです。