「ウチの子、本の虫で(本が大好きで)・・・」
あ~こんなセリフ言ってみたい。親にとって「本好きな子」は永遠の憧れ!?そして願いですね。
そこで、JPIC読書アドバイザーで小学生男子の母でもある、ノンフィクションライター・須藤みかさんにいろんな本好きキッズの本棚を報告してもらいます。
目次
鉄道と歴史LOVEの子ども達に今週も図書館の本を渡すも…(^_^;)
本を読まない子をもつ親なら、どんな本でもいいから読んでほしいと思うかも知れない。でも、本を読む子をもつ親なら、どうせ読むのだからもっといい本を読んでくれたらと思う。それも親心だ。
好きなら鉄道以外でも読む、と知って・・・
「上の子は本当に好きなジャンルの本しか読まなくって。子ども時代の今だからこそ読める本を、もう少し読んでくれたら…」
アズミさんと最初に本の話をしたのは、お兄ちゃんのカイ君が小6で、妹のサララちゃんは小3のころだった。
カイ君は無類の電車好きで、読むのは電車の本ばかり。本好きのアズミさんは週に1回、図書館へ行く。子どもたちが興味を持ちそうな本も選んで借りてくるが、そこにアズミさんが読んでほしいと願う本も混ぜる。しかし、ファンタジーなどを図書館で借りてこようものなら、
「こんな、しょうもない本を借りてきて」
と見向きもされない。
しかし、好きなものなら電車以外の本も読む。
例えば、料理に興味を持ち始めた頃。世界各地のさまざまな家庭に居候して食べた「ごはん」について書かれた本『世界中からいただきます』を手渡した。
すると、カイ君は楽しんで読んでいたという。
一方、サララちゃんは学校で「読書記録」をつけていることもあって、毎週、短い感想などを書いて提出しているとか。そのおかげで毎週末、本を読む習慣がついたのだそう。
反発しながら読む本は楽しくない
アズミさんの図書館通いは現在も続いている。2人のために本を借りてはくるが、心境の変化があったという。
「こんなにたくさんのいい本があるんだから、自分の好きなジャンルばかりでなくて、ふだん読まないような本にも挑戦して読んでほしいと今も思っています。でも、親から言われて反発しながら読んだとしても、楽しい読書経験にはならないんですよね。少しあきらめるようになったかな。だから、子どもたちが読まなければ、おとなしく返却するようになりました」
前のように『読んでみたら』とも言わなくなったそう。
いつから?
「そうですね、半年くらい前からですね」
動画を見る時間で、読書時間は激減だけど・・・
2人ともタブレットで、動画やドラマを観るようになり「動画を観る時間がすごく長くなって、読書の時間が減った」とアズミさんはため息をつく。
カイ君もサララちゃんも、毎月の読書は、2、3冊。
サララちゃんが学校の図書館から借りてくるのは、歴史関係の本が多くなった。
一方、カイ君が学校で本を借りてくることはほとんどない。理由はいたってシンプル。学校に鉄道関係の本はあまりないからだ。カイ君が読むのは鉄道関係はもちろんだが、料理の盛り付けの本など。新たな変化は、「法律の条文」を読むのが好きになったことだ。
2人にとって、母が図書館から運んでくる本は、口にはせずとも今も楽しみなものに違いない。そうでなければ、サララちゃんが「もっと面白い本を借りてきて」とは言わないだろう。
2人に「これまで読んだ本の中で一番おもしろかった本は?」を聞いたところ、
カイ君は、宮脇俊三著『最長片道切符の旅』と月刊誌の『鉄道ファン』、
サララちゃんは、司馬遼太郎著『最後の将軍』。3冊ともアズミさんが手渡した本だったから。
乗り鉄・カイ君のベスト1
カイ君のベスト1『最長片道切符の旅』は、鉄道関係の面白い本はないかと検索するなかで引っかかった。カイ君が5年生の時だった。同書は、「乗り鉄(鉄道に乗ることを楽しみとする鉄道ファン)」のバイブル的な存在。乗り鉄のカイ君にとっても愛読書だ。
↓カイ君のコレクションもここで紹介。
歴女・サララちゃんのベスト1
サララちゃんのベスト1『最後の将軍』は、カイ君のためにアズミさんが借りてきたものだった。しかし、当のカイ君は読まず、まだ読むのは難しいだろうと思っていたサララちゃんが夢中になった。大河ドラマ「西郷どん」が好きだったことから興味を持った。意味の分からない言葉が出てくるたびに、アズミさんに聞きながら読んでいたそう。
サララちゃんが一番好きな武将は、「石田三成」。理由は、辞世の句「筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり」が好きだから。
おじいちゃんは司馬遼太郎の大ファンで、サララちゃんと歴史の話をするのを楽しんでいる。司馬遼太郎記念館に連れて行ってくれたり、映画『関ヶ原』を一緒に観に行ったりしているとか。
「面白い本をーー」。そんな漠然としたリクエストではなく、自分で検索してくれれば。アズミさんはそう思いつつも、これからも2人のもとにそっと本を置き続けて行くだろうし、子どもたちは塾だ、部活だと世界が広がり、忙しくなっていったとしても「今週はどんな本かな?」と母が借りてくる本を気にし続けていくような気がする。
【はみだしコラム】では、2人の将来の夢は?
カイ君の将来の夢は、「検事」。
鉄道関係の職業につきたいのかと思ったが、「鉄道はあくまで趣味」なんだそう。
サララちゃんは「バイオリニスト」を夢見て、練習に励んでいる。
(学年は取材時点のものです)
カイ君・サララちゃんが夢中だった本はこちら
先にも紹介した本ですが、アズミさんが2人へ「読み聞かせた本」やカイ君、サララちゃん「おすすめの本」などをまとめてご紹介します。
幼少の頃の「読み聞かせリピ」ベスト4
『世界中からいただきます』
中山茂大 文、坂口克 写真、偕成社
『綱渡りの男』
モーディカイ・ガースティン 作、川本三郎 訳、小峰書店
『ぶたぶたくんのおかいもの』
土方久功 作、福音館書店
『ちいさいケーブルカーのメーベル』
バージニア・リー・バートン 作、かつらゆうこ・ いしいももこ訳、ペンギン社
電車内で読み聞かせした本
『子どもに語るグリムの昔話3』
佐々梨代子・野村ひろし 訳、こぐま社
乗り鉄・カイ君のベスト2
◆カイ君ベスト1
『最長片道切符の旅』
宮脇俊三著、新潮文庫
◆カイ君ベスト2
『月刊鉄道ファン』
交友社
歴女・サララちゃんのベスト2
◆サララちゃんベスト1
『最後の将軍』
司馬遼太郎 著、文春文庫
◆サララちゃんベスト2
『別冊み〜なvol.1 これぞ石田三成』
長浜み〜な編集室
取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。