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本好きキッズの本棚はどうなっているの?
子どもにはたくさん本を読んでもらいたい、と思うパパママも多いのではないでしょうか。幼いころからの読み聞かせに始まり、読書の量がその後の国語力に影響をすると言われることも多く、親にとっては我が子も「本好きな子」になってほしいと願わずにいられません。「ウチの子、本の虫で(大好きで)・・・」こんなセリフ、言ってみたいものです。
そこで、JPIC読書アドバイザーで小学生男子の母でもある、ノンフィクションライター・須藤みかさんが、「とにかく本が大好き!」という全国の本好きキッズの本棚をリサーチする連載をスタート!その本棚から、どうして本が好きになったのか、きっかけになったのはどんな本なのか、また今はどんな本を読んでいるのか、などなど、実際に本好きキッズのお宅にお邪魔して、詳細にレポートしてもらいます!
子どもの興味のある川魚をきっかけに本に夢中に!
「うちの3人きょうだいの末っ子は魚が大好きなんですが、マニアックでして川魚専門(笑)。だから、本は好きですけど、読むのは魚の本や図鑑が多いですね」
そう話すのは、大阪市在住のヨウコさん。川魚専門というのは、小3のミノル君だ。中1と小5のお姉ちゃんがいる。
ヨウコさん自身が、小さい頃から大の本好き。続きが気になると、道を歩きながら本を読んでしまうほど。「『あぶないよ』とオジサンに言われた途端に、電信柱に頭をぶつけたこともありました」と苦笑する。
家にも巨大水槽が!本好きのきっかけは、川魚にあった!!
「図書館の近くに住みたい」という願いがかなって、図書館から徒歩3分の一軒家に住んでいる。子どもたちの本棚があるという2階のリビングへ行くと、本棚よりも先に目に飛び込んできたのは、幅が1メートルは軽く超える巨大な3つの水槽。そう言えば、玄関にもあった、あった。家には全部で8つの水槽があるという。
悠然と泳ぐこの魚は?
「ライギョです。ミノルが主人と一緒に釣ったんですが、どんどん大きくなっていきました。今はライギョたちのエサをとるために、毎週土曜日は、車で1時間くらいの川に小魚を取りに行っています。そもそも主人が川魚好きなんですよ」
なるほど。ミノル君の川魚好きは、お父さんから受け継いだものだったのだ。ミノル君の将来の夢はいくつもある。獣医、魚屋、水族館職員、絶滅危惧種・天然記念物の保護をする人、ペーパークラフト屋…。ほとんどが魚や生き物にまつわるものだ。
おもしろベスト2は、『ウナギとりの夏』と『図鑑NEO危険生物』
そんな川魚専門少年が、これまで読んだなかで「一番おもしろかった本」は2冊。
1冊は、『ウナギとりの夏』。ウナギの住み家探しから、ウナギを待ち伏せして捕る伝統的な漁法をわかりやすく紹介している。一番上のお姉ちゃんのために買った本だったが、今ではミノル君の愛読書だ。
もう1冊は、『小学館の図鑑NEO危険生物』。一緒に書店に行き、小2のクリスマスプレゼントとして贈った。ふと見ると、ページをめくっていることが多いそう。
「リビングに本棚」作戦で、いつでも読める環境作り
ヨウコさんは、本のある環境づくりに努めてきた。家族が集まるリビングダイニングに子どもたちの本棚を置いているのも、そのひとつ。寝る前の読み聞かせは、3人ともに小さい頃から続けてきた。図書館や本のイベントなどにも連れて行った。
自然に本の世界を楽しむようになった姉弟は、今もそれぞれのペースで読書を楽しんでいるようだ、勉強が忙しくなってきた中1の長女は月2,3冊。マンガも大好きな次女は、マンガも含めて30冊くらい。ちなみに「一番おもしろかった本」は、長女が『モモ』。次女は、『こぶたのプーと青いはた』『もりのへなそうる』『黒魔女さんが通る!!』『ふしぎな駄菓子屋銭天童』だ。
月100冊!近所の図書館の魚や生物関係の本は制覇
ミノル君はというと、月に100冊近く。「図鑑系が多いですからね。学校から帰ってくると、まずトカゲとカメの世話をします。その後は外に遊びに行くことも多いですが、家にいれば絵を描くか図鑑などを開いていますね」
長女や次女は自分で好きな本を選ぶようになったが、ミノル君からは今も「図書館で本を借りてきて」と頼まれる。近所の図書館の魚や生物関係の本はひととおり読んでしまったので、今は、図書館のHPを見て、ミノル君が興味を持ちそうな本を他区の図書館蔵書から予約する。
「本当はもう少し物語を読んでほしいなという気持ちもあるんですが…」と、ヨウコさん。時々だが、物語をまぎれこませることがあるそう。「1、2年生の頃は、文字の多い絵本を入れたりしたこともありました。たかどのほうこさんの『へんてこもり』シリーズは、気に入って読んでいました」
「置いておくだけ」作戦で、子どもの興味を釣る!?
ヨウコさんが環境づくりで気をつけてきたことが、もうひとつ。子どもたちが興味をもちそうな本を図書館で借りて、目のつくところに置いてきた。ただ、勧めはしない。置くだけ、だ。読んでくれればラッキーと思って、子どもが読まなくても文句は言わない、と決めている。
「書店に本を買いに行く時も、それよりこっちのほうが面白いよ、こっちのほうがいい本なのに、と思うことはありますが、ぐっと我慢しています」
本好きキッズ・ミノル君が夢中な本はこちら
先ほど本棚でもご紹介した、ミノル君のおもしろベスト2がこの2冊。また川魚専門のミノルくんおすすめの魚や生物の本と、好きで読んでいる物語の本もご紹介します。
小3ミノル君のおもしろベスト2
『ウナギとりの夏(月刊たくさんのふしぎ第329号)』
文・絵/みやわきまさお 福音館書店
『小学館の図鑑NEO危険生物』
指導・執筆/塩見一雄ほか 小学館
ミノルくんお気に入り!魚の本&物語7選
『琵琶湖の魚』
著/今森洋輔 偕成社
『ウナギのなぞを追って(調べてみよう!生きもののふしぎ)』
監修/塚本勝巳 金の星社
『微生物の図鑑 ミクロの世界の住人たち』
著/赤木かん子、正道 絵/荒井和人 編/造事務所 新樹社
『ため池の外来生物がわかる本 池の水をぬいた!』
文/加藤英明 イラスト/越井隆 徳間書店
『ギョギョギョ!おしえて!さかなクン』
著・絵/さかなクン 朝日学生新聞社
『ギョギョギョ!おしえて!さかなクン2』
著・絵/さかなクン 朝日学生新聞社
『へんてこもりにいこうよ』
作・絵/たかどのほうこ 偕成社
中1長女の一番のお気に入りは『もも』
本が好きな中学1年生のお姉さんの一番のお気に入りはこちら。
『モモ』
作/ミヒャエル・エンデ 訳/大島かおり 岩波書店
小5次女のお気に入りはこの4冊
月に30冊読むという小学校5年生のお姉さんのお気に入りもご紹介します。小学生に人気のシリーズものがしっかりと入っていますね。
『こぶたのプーと青いはた』
作/カーラ・スティーブンズ 絵/レイニイ・ベネット 訳/代田昇 童話館出版
『もりのへなそうる』
作/わたなべしげお 絵/やまわきゆりこ 福音館書店
『黒魔女さんが通る!!』
作/石崎洋司 絵/藤田香 講談社
『ふしぎ駄菓子屋銭天童』
作/廣嶋玲子 絵/jyajya 偕成社
須藤みか ノンフィクションライター
長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。
※学年は取材時のものです。