Q:ときどき、夫と口論になります。翌日には自然に仲直りする程度のものなのですが、2歳の子供の前ではやめたほうがいい?
子どもにとってのよい夫婦関係ってどんなものでしょうか? 子供の前で夫婦喧嘩をすることが、子どもにとってどんな影響をもたらすのか、夫婦喧嘩についての読者ママのお悩みについて、東京家政大学ナースリールーム主任保育士 で、子育てに詳しい井桁容子先生に伺いました。
目次
●たとえ赤ちゃんであっても、子どもの前では夫婦喧嘩をひかえ、 好意的なやりとりを
子どもは、その場の雰囲気をかなり正確に読みとることができます。そのため、感情的ではない議論であっても、両親が強い口調で言い争っていれば「ケンカをしている」と不安を感じてしまいます。また、生後6~10か月の赤ちゃんの段階で、道義的(正しい・正しくない)な判断ができるという実験結果も。子どもの心の安定のためには、両親がお互いに好意的なやりとりを心がけることが重要です。
●夫婦喧嘩をしたときは 必ず「仲直り」を見せ、子供の気持ちをフォローして
夫婦喧嘩は子供のトラウマに
両親が言い争う姿などを見ると、子どもは不安になります。そして、「おとうさんはおかあさんが嫌いなんじゃないか」といった思いから、「自分は親に愛されている」という自信までゆらいでしまいます。そうなると、自信のなさから、遊ぶ意欲がそがれたり、些細なことで気持ちが不安定になったりすることが、思いがけない場面で出てきます。子どもの心の安定を保つためには、子どもの前でケンカをしたり、互いの悪口を言ったりするのは避けるべきです。仮に夫婦間にトラブルがあったとしても、子どもは巻き込まないように配慮することが、親である最大の責任ではないかと思います。
たとえ演技でも、子供の前で仲直りしてみせて
万が一、子どもの前でケンカをしてしまったときは、必ず「仲直りした姿」を見せましょう。その際は、「ごめんなさい」の言葉の後、握手やハグなどをして見せると、子どもにもきちんと伝わるでしょう。そして、時間をおかずに「おとうさんとおかあさんは、ケンカをしちゃうこともあるけれど、本当は大好きなんだよ」と、わかりやすい表現で伝え、安心させてあげましょう。大人には「なんとなく水に流して終わりにする」ような解決方法もアリですが、子どもは未解決と捉えてしまうため、不安が残ることもあります。たとえ演技でもよいので「仲直り」をアピールし、子どもが納得&安心できるようにすることが大切です。
また、仲直りのしかたは、どちらかが謝るだけではありません。状況に応じて、話し合って解決策を見つけたり相手に譲ったりする姿を子どもに見せることにも意味があります。家族は、社会の最小単位。人とのいろいろな関係修復のしかたを見せることは、友だちとトラブルが起こったときの対処法にも生かされることがあるでしょう。
●認め合い、助け合う家族関係が 子どもの「核」に
子供の尊敬や信頼感は家庭で育まれます
親は、子どもの「命のもと」です。幼児期の子どもにとって、母親は「甘えたり受け止めてもらったりしたい特別な存在」。そのため、この時期の子どもは、自分の母親を大切にしてくれる人を信頼するのです。父親が妻(子どもの母親)を大切にする姿を見ることによって、父親への尊敬や信頼感が深まります。そして成長とともに、父親は、母親とは異なる「かけがえのない存在」と位置づけられていくのです。夫婦が助け合う基本は、「相手が本当にしてほしいこと」をすることです。「家事をするのがよい夫」「子育てを引き受けるのがよい妻」などのイメージにとらわれず、相手が困っていることは何か、自分にできることは何か、を互いに考えることが大切。家族(=最小の社会)の中で、相手をきちんと認めて気持ちを察し、手助けする関係性を見せていくことは、そこで育つ子どもの「核」となっていくはずです。
教えてくれたのは
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子