豊後水道（ぶんごすいどう）の荒波で育ったアジやサバは、筋肉質で身が良く締まり、他の土地で獲れたものと質が違います。この魚を極力新鮮さを落とさないままで販売されるのが、関アジ、関サバです。詳しくみていきましょう。
関アジ、関サバとは
九州の大分県と、四国の愛媛県に挟まれた豊後水道では、瀬戸内海の温かい海水と、太平洋の冷たい海水がぶつかり合い、大量のプランクトンが発生します。それを餌として集まった魚を捕獲し、大分市の佐賀関で水揚げされたマアジ、マサバが「関アジ」「関サバ」と呼ばれます。
特徴
潮流が早い豊後水道で育った魚は、身が締まり、プリプリしているのが最大の特徴です。また、夏と冬で水温差が少ないことから、安定したおいしさを保つ点も注目したいところです。全国トップクラスの高級ブランド魚として名を馳せ、他のアジ、サバとは比べ物にならないくらい、圧倒的においしい味を誇ります。
この味を私たちが味わうためには、漁師さんや、漁協による努力が不可欠です。釣り針と釣り糸による「一本釣り」とは、魚の身に傷をつけずに釣り上げることができる漁です。これによって釣り上げた魚を、生きたままの状態で漁港に運び入れた後、その場で「活け締め」「神経抜き」と呼ばれる丁寧な処理を施すのです。この手作業による処理のおかげで、一級の鮮度が保たれます。
旬
関アジは年間を通して、おいしさが保たれますが、特に8月から9月にかけてのものが絶品といわれます。
他の海域のアジは青みがかりますが、関アジは金色を帯びています。さらに、「頭が小さく、よく肥えて、尾柄がたくましい」と、古くから漁師の間で「関もの」と呼ばれて話題となり、別格視されてきました。
一方の関サバの旬は冬です。秋口から脂がのり、12月から3月にかけてが最もおいしい季節となり、サバとしては珍しく、刺し身で食されることが定番です。これは、関サバの特徴でもある脂肪の少なさによって、鮮度が落ちにくいことが理由に挙げられます。
また、回遊魚のアジ、サバなのにも関わらず、この海では1か所の瀬で釣れるため「瀬付き魚」とも呼ばれています。魚に取っても、それぽど居心地の良い海なのでしょう。
値段
関サバといえば、1尾5000円もの値がつくこともあります。一般的なサバと異なる点は、どこにあるのでしょうか？
ひとつの要因として挙げられるのは、1尾ずつタグ付をするなどのブランド化の育成を図った結果、「刺身でも食べられるサバ」として世の中に広まったことです。そして、これを裏付けているのは、やはり抜群の味の良さです。豊かな海から与えられるおいしさです。
また、豊後水道の対岸にある三崎漁港で穫れるサバは、岬（はな）サバと呼ばれます。同じ漁場で獲れるため、魚の種類としては同一ですが、比較的安価で取引がされています。大分側に水揚げされることにより、漁協をはじめ、漁師さんによる丁寧な扱いを経て味への影響を及ぼしているのは、間違いないようです。
認定シール
高級ブランドとして有名になるにつれ、残念なことに偽物も出回るようになりました。このため、商標登録を行い、関アジ、関サバには一尾ずつ佐賀関町の認定シールがつけられています。厳格な取り扱いにより、品質が高く評価されたことから、ブランドを保護、育成する取り組みもより強化されました。
直売所
大分県、佐賀関半島と、愛媛県、佐多岬半島に挟まれた豊後水道の中でも、最もせまい部分の豊予海峡（ほうよかいきょう）は、「速吸の瀬戸（はやすいのせと）」と呼ばれます。ここは、日本有数の一本釣りの漁場です。
この海域の特徴は潮流が早く、海底地形が複雑で、これにより豊富なプランクトンが発生することです。
地元でもなかなか手に入らないといわれる、関アジ、関サバを購入できるお店を挙げました。
道の駅 佐賀関
別府湾に面した立地で、販売所やレストランが併設されています。関アジ丼、関サバ丼の他、関サバカレーも話題です。
あまべの郷 関あじ関さば館
1階に加工品の販売所があり、2階はレストランです。注文を受けてからさばく「関の海鮮丼」が大人気のメニューです。道の駅「佐賀関」から、車で10分足らずです。
お取り寄せ
現地や、認定店でしか食べられなかった鮮魚ですが、冷凍通販によるお取り寄せもできます。現地での味に限りなく近い刺身の他、一夜干し、またはタレ漬けにした郷土料理など、種類も豊富です。
大分漁業協同組合佐賀関支店 関アジ一夜干しとりゅうきゅう
佐賀関の漁協から、直接商品をお取り寄せすることができます。多くの取引先へと送られる魚と同等のものが手に入ります。
関アジまたは関サバの厚切り 刺し身盛り
夏はアジ、冬はサバがおすすめです。地元の漁師が一本釣りで収穫し、さばいた後に瞬間冷凍されました。流水解凍にてお召し上がりください。海の状態や、収穫時期によって発送の有無があるため、注文は余裕をもって。
関アジ・関サバ一夜干しセット
アジが2尾、サバが1尾、それぞれの一夜干しが冷凍で届くセットです。これもまた、絶品の味です。
大分県の郷土料理 「関のりゅうきゅうセット」
「りゅうきゅう」とは、魚の切り身をしょうゆ、みりん、酒などで漬けこんだ大分県の郷土料理です。もともとは、魚をさばくときに出る切れ端や余った身をタレに漬けた漁師飯でした。ブランド魚の関アジ、関サバを用いるところが贅沢な品物です。
最後に
高級魚として有名な、大分県関漁港の関アジと関サバを詳しくみてきました。漁場の豊かさだけでなく、釣り上げた後の努力に、おいしさの秘密が隠されていました。これだけの味を保つには、相当な技術と手間暇がかかります。一度、その味を確かめてみてはいかがでしょうか。
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構成・文・写真（一部を除く）／もぱ（京都メディアライン）
