自分の口臭に気付いてますか? アフターコロナで脱マスク…気になる口臭の原因と対策【歯科医が解説】

コロナ禍のマスク生活でうすうす気づいていた自分の口臭。脱マスクがすすむ昨今、どのようにコントロールすべきでしょうか。歯学博士で現役の歯科医でもある島谷浩幸さんに、多岐にわたる口臭の原因とその対策について解説していただきました。

脱マスクで気になる口臭

今年5月のコロナの5類引き下げでマスク着用のルールが緩和され、暑い夏の季節を迎えてマスクを脱ぐ人が増えつつあります。

それに先立ち、2021年に第一三共ヘルスケア株式会社は「マスク着用によるオーラルケアに関する意識と行動」にフォーカスを当てて、20代~50代の働く男女を対象にアンケート調査を実施しました。

図1.脱マスク後、自分の口臭が気になるか?(723人の回答)

その結果、コロナ終息後、マスクを外して人と会話をする際に「自身の口臭が気になる」と回答した人は6割を超えました(図1)。

子どもたちも学校などで集団生活を送る上で、意識したいエチケットの一つです。

では、口臭について詳しく解説します。

口臭には様々な原因がある

他人の口臭は分かるとは言え、自分の口臭はなかなか気付きにくいものです。コロナ禍でマスクを装着する日々を経験し、初めて自分の口臭に気付いた人も多いと思います。

口臭の原因は、主に食物と細菌です。ニンニクなどの食物による口臭は、自分でも気付きやすく一過性のため大きな問題にはなりません。しかし、細菌性の口臭は臭気が常時あるため、慣れてしまうと本人が自覚できません。

口臭の原因は5つに大別されます。

  • ①生理的口臭

誰にでもある臭いで、起床直後や空腹時、緊張時に特に強まります。これは自律神経の影響で唾液分泌が減少し、細菌が増殖して口臭の原因物質の一種である揮発性硫黄化合物(VSC)が多く発散されるからです。VSCの中でも卵が腐った臭いと形容される硫化水素やメチルメルカプタンは悪臭の代表格です。

特に朝の起床時の口臭はモーニング・ブレスと呼ばれ、一日で最も強い口臭です。睡眠時の唾液減少などで増殖した細菌のガスが主な原因です。しかし、食事や水分補給、歯磨きなどで口が潤い、唾液分泌が増えると細菌やVSCが減るため、口臭は急激に弱まります。

  • ②飲食物・嗜好品による口臭

ニンニク、ネギなどの食品や酒、タバコ等の嗜好品による一時的な口臭です。

  • ③病的口臭

消化器系の病気呼吸器系の病気糖尿病、肝臓疾患などが原因になることがあります。が、病的口臭の大半は口の中に原因があり、歯周病や虫歯、舌苔(舌表面の白~褐色の角質等)義歯(入れ歯)の清掃不良、口腔乾燥症(ドライマウス)などが挙げられます。

特に歯周病の原因となる歯周病菌は酸素がない環境下で増殖しやすい特徴(嫌気性)があり、悪臭を発することで知られます。歯周病菌のガスはVSCだけでなくアンモニアやインドールなどの臭い物質も含み、実は私たちのオナラの成分(大腸菌などのガス)と類似します。

  • ④ストレスによる口臭

ストレスで唾液の量が少なくなることによって発生する口臭です。

  • ⑤心理的口臭

自分自身で強い臭いがあると思い込むもの。実際には臭いはなく仮性口臭とも呼ばれます。

1999年に新潟大学の宮崎秀夫氏らが報告した口臭の頻度別原因では、新潟大学歯学部附属病院・口臭クリニックの初診患者210名に対して行った調査で病的口臭が最も多く(40%)、次いで仮性口臭症が35%を占めることが明らかになりました(図2)。

図2.口臭の原因別頻度(210人の回答)

ところで、口臭は親しい間柄でも相手に伝えるのに、ちょっとした勇気が必要でデリケートなものです。この厄介な口臭を客観的に評価するのが口臭測定器で、吐く息に含まれるVSC濃度を測定し、数値化して評価します。一般の歯科医院に置いている場合があるので興味があれば問い合わせてみてください。

口臭予防の基本は、歯磨き(口腔ケア)

口臭予防のために一番大切なのは、やはり歯磨き(口腔ケア)です。口臭の原因となっている食べかす(食渣)や細菌の集合体である歯垢(プラーク)を歯ブラシなどを用いて丁寧に取り除くことが大切です。

強い臭いを発する歯周病は大人の病気だと思われがちですが、それを進行させる要因の一つである歯石が下顎前歯の舌側(裏側)に付着している子どもも少なくありません。口臭防止に歯石除去は必須です。

2001年に明海大学の吉田美香子氏らが報告した研究では、明海大学歯学部付属病院小児歯科外来を受診した年齢9カ月~173カ月の子ども300人(男児159名、女児141名)を対象として、保護者記載によるアンケート調査を行いました。

その結果、子どもの口臭が気になる保護者は45.7%に達し、口臭が気になり始めた時期は、図3に示すように37歳を中心に幅広い年齢層に及びました。

図3. 子どもの口臭が気になり始めた時期(保護者300人の回答)

口臭の原因となる磨き残しは、子どもの歯磨きだけではやむを得ないと考えられます。ですから、親の仕上げ磨きは不可欠で、小学校高学年くらいまでを目安に実践してください。子どもの清掃状況を見ながら、自立させるタイミングをはかりましょう。

また、口呼吸する子どもは口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなり、口臭の原因になります。噛み合わせや歯並びが原因の場合もありますので、子どもがポカンといつも口を開けがちなら歯科医院を受診しましょう。

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また、口臭の原因で大きなものの一つに舌表面の舌苔があります。舌の表面に白色や茶色の舌苔がある子どもは、専用の舌ブラシ(子ども用も市販されています)を使って舌清掃をしてください。

舌ブラシの例

歯磨剤のマスキング効果とは?

市販されている歯磨剤は、お口をスーッと爽快にさせる清涼剤や香味剤を含みます。

爽やかな息を作るのに不可欠な配合成分ですが、歯磨剤が含むハーブの種類はミント(ペパーミント、スぺアミント)を中心にジャスミン、ローズマリーなど、実に多彩です。

ただし、歯磨剤のハーブによる口臭改善はマスキング効果が中心で、ハーブの香りを口臭の上にかぶせて元々の臭いを感じにくくさせているに過ぎません。効果はあくまでも一時的だということを知っておきましょう。

異常な口臭は病気の危険サイン

口臭がするのに口の中が清潔に保たれ、かつ臭いの原因となる、または推測される食物を食べていない場合、原因として病的口臭を考慮する必要があります。

例えば、胃の酸が食道に逆流して炎症を引き起こす逆流性食道炎胃潰瘍、便秘症、さらにのどの扁桃炎など、様々な疾患が口臭と関わることが明らかにされています。

私の病院歯科を受診された患者でそのようなケースは、消化器内科や耳鼻咽喉科へ受診を勧めるようにしています。

また、糖尿病の人は特有の口臭で知られ、熟し過ぎた果実のような甘酸っぱい臭いが特徴です。臭いの原因物質はアセトンであることが明らかにされています。

2014年に公表されたオックスフォード大学の研究では、オックスフォード小児病院に通院している718歳の子ども113人、および20人の1型糖尿病の子どもを対象に呼気(吐く息)に含まれるアセトン量を測定しました。その結果、血中のケトン濃度に相関し、口臭と糖尿病の進行度合いが反映されました。

もし異常な口臭に気付いたら、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

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記事執筆

島谷浩幸

歯科医師(歯学博士)・野菜ソムリエ。TV出演『所さんの目がテン!』(日本テレビ)等のほか、多くの健康本や雑誌記事・連載を執筆。二児の父でもある。ブログ「由流里舎農園」は日本野菜ソムリエ協会公認。Twitterも更新中。

参考資料:
・第一三共ヘルスケア株式会社:コロナ禍における人との距離とオーラルケアに対する意識と行動に関する調査.2021年10月12日配信
・日本口腔外科学会ホームページ:口腔外科相談室「口臭がひどい」
・宮崎秀夫ほか:口臭症分類の試みとその治療必要性.新潟歯学会雑誌 29(1): 11-15, 1999
・吉田美香子ほか:小児の口臭に関する研究-アンケートと口臭測定-.小児歯科学雑誌39(3):694-703,2001
・Tom P J Blaikie et al. : Comparison of breath gases, including acetone, with blood glucose and blood ketones in children and adolescents with type1 diabetes. Journal of Breath Research, Published 25 November 2014.

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