童話「ジャックと豆の木」のあらすじを覚えてる?「巨人がかわいそう」「ジャックひどい」との意見もある本作の教訓や豆知識、おすすめ絵本をご紹介

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ディズニー映画版や絵本版でも知られる童話『ジャックと豆の木』。古くから伝わる有名なお話ではありますが、中にはタイトルは覚えているけれど内容は忘れてしまった……なんて方もいるのではないでしょうか。
今回は、そんな『ジャックと豆の木』のあらすじやおすすめ書籍、さらには豆知識までを一挙にお伝えしていきます。

「ジャックと豆の木」ってどんなお話?

まずは、本作『ジャックと豆の木』の基本情報や登場人物を押さえておきましょう。

基本情報

『ジャックと豆の木(Jack and the Beanstalk)』はイギリスのおとぎ話で、5000年以上前に始まった古典に基づいたお話だと考えられています。

さまざまなバージョンがありますが、もっとも有名なのは、イギリスの民族学者であり歴史学者、再話者でもあるジョセフ・ジェイコブス(Joseph Jacobs, 1854-1916年)が1890年に編んだ43編の民話集“English Fairy Tales(『イングランド民話集』)”に収録された一篇です。

ジョセフ・ジェイコブス(Joseph Jacobs, 1854-1916年) Wikimedia Commons(PD)

登場人物

あらすじの前に、作中に登場するキャラクターもおさらいしておきます。

ジャック

主人公の貧しい少年。ずぼらで怠け者で、賢くはないが、気立てが良く優しいところもある。

ジャックの母

ジャックの貧しい母。身の回りのあらゆるものを売り尽くし、ついに残った1匹の牛も売り払うことを決意する。

おばあさん

空の上の国で出会った、ジャックに親切にしてくれる不思議なおばあさん。

巨人

ジャックの父親を殺し、すべての宝を奪い取った巨人。

巨人の奥さん

巨人の奥さんながら、お人好しなところがある。

あらすじ・ストーリー紹介

イギリスの総画家/Walter Crane による挿絵 Wikimedia Commons(PD)

むかしむかしあるところに、ジャックという少年とその母が二人で暮らしていました。ジャックは怠け者で遊んでばかりいたので、家は貧しく、二人は身の回りのものを売りながら飢えを耐え忍んでいました。

ある日、母に言われて牝牛を売りに市場へと向かったジャック。しかし、途中で会った肉屋の親方に言われて、ジャックは豆と牝牛を交換してしまいます。

豆から大きな木が生えて……

母は怒り、豆を庭に捨てますが、次の朝にはその豆が空へと高く伸びた巨木に成長していました。誘われるように豆の木を登ったジャックは、雲の上のうつくしい国に辿り着きます。そこで、ジャックは妙なおばあさんに出会いました。

おばあさんは「近くの城に、おそろしい巨人が住んでいる。その巨人は昔、お城にもともと住んでいたお前のお父さんを殺して、城といっしょに宝を残らず取ってしまった。もう一度、その宝を取り返すのがお前の役目だ」とジャックに言い聞かせます。途端に勇ましい気持ちになったジャックは、巨人の城へと向かいました。

巨人の城にて

巨人の城に到着すると、意外にも、巨人の奥さんは「うちの夫は人喰いだから食べられてしまうよ、早くお逃げ」とジャックに親切に言います。しかし、ちょうど巨人が帰ってきてしまったため、ジャックは身を隠すことに。

ジャックが隠れていると、巨人は金の卵を生む鶏の卵を食べていたので、ジャックはそれが自分の父の宝なのだと確信。巨人が寝ると、その鶏を奪って家へと逃げ帰りました。

Walter Crane による挿絵 Wikimedia Commons(PD)

さらなる宝を取り返すジャック

さらに、その後日には、再び巨人の城を訪れて金貨や銀貨が入った袋を奪うジャック。また別の日には、魔法のハープを奪って帰ろうとしましたが、ハープが喋り出してしまったため、ジャックの奪取は巨人に気づかれてしまいます。急いで地上に戻ったジャックは豆の木を斧で切り、途中まで追って来ていた巨人を落として殺しました。

すると、以前、城に巨人が住んでいることを教えてくれたおばあさんが美しい姿になって登場し、こう言います。
「豆から伸びた巨木をただぼんやり眺めていただけでは、あなたたちはずっと貧乏のままでした。あの巨木をどこまでものぼって行こうという気を起こしたことが、ジャックの運が開けるきっかけだったのです。」

こうしてジャックは、幸せは怠けていても掴むことができないことを知り、真面目に働くようになって母と共に幸せに暮らしました。

物語から得る教訓

イギリスの民俗学者/Andrew Langによる、巨人から逃げるジャックの挿絵 Wikimedia Commons(PD)

本作『ジャックの豆の木』から得られる教訓は、どのバージョンにおいても一貫して「ジャックが豆の木をのぼったこと」からの一連のエピソードに集約されているように思います。

それまではぐうたらで怠けてばかりいたジャックが、ようやく一歩を踏み出したのが豆の木を登った瞬間。ジャックはせっせと木を登ったことで、空の上に不思議な国があることや父の過去を知り、ちょっとした冒険をして、宝やその後の幸運を手にしたのです。

本作の中心となるこの展開から、「何事もただ待つのではなく、行動を起こしてみることで道が開ける」といった教訓が読み取れるのではないでしょうか。

「ジャックと豆の木」の豆知識|豆の種類は? 結末違いのバージョンも

そんな『ジャックと豆の木』には、つい“へ〜っ”と感嘆したくなるような豆知識も存在しています。ここでは、本作にまつわるちょっとした雑学をチェックしておきましょう。

豆の種類は何?

オーストラリアビーンズ Photo by KENPEI’s photo, CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

本作の要となる「豆」は何の豆なのか気になる方も多いのではないでしょうか。実際には、作品の中では「豆」としか書かれていないため、実在のモデルがあるのかは分かりません。

しかしながら、「オーストラリア・ビーンズ」という、日本語では「ジャックと豆の木」と呼ばれる植物なら存在しています。豆から生えて大木となる植物なので、その見た目や特徴からこの名前が付けられたと考えられます。

「巨人がかわいそう」「ジャックはひどい」との意見を反映? 別のバージョンも

版によっては「巨人が持つ宝=ジャックの父の物」という設定がない・省かれている場合もあるため、ジャックが他人のものを盗んで幸せになる結末に「ひどい」「巨人がかわいそう」といった意見が寄せられることも少なくないようです。そのためか、本作には別の結末が用意されたバージョンも存在しています。

それは、豆の木を切ったことで魔法が消え、ジャックが持ち帰った鶏も金貨もハープもすべて消えてしまう、というもの。

その後、ジャックは人から盗んだものには価値がなく、幸せは自らの努力によってこそ掴めるものであることを悟ります。そして、心を入れ替えて真面目に働くようになり、母と共に幸せに暮らすという結末に至ります。

絵本や映画のおすすめ3選

最後に、『ジャックと豆の木』のお話を楽しむ際におすすめの絵本や映画をご紹介します。

ジャックと豆の木 (世界傑作絵本シリーズ)

イギリスの作家ジョン・シェリーさんによる精緻なイラストが魅力的な絵本版『ジャックと豆の木』。ジャックも巨人(本作内では「人食い鬼」)も豆の木も生き生きと描かれており、子どもたちを惹きつけます。小さなお子さんのはじめての『ジャックと豆の木』におすすめの一冊です。

ミッキーのジャックと豆の木 [DVD]

ミッキーマウスとドナルド、グーフィーが出演する『ジャックと豆の木』。ディズニーのキャラクターたちによって繰り広げられるお話に、大人も子どももつい没頭してしまいます。ところどころにオリジナルなアレンジも効いた、ディズニーアニメーションの魅力がつまった作品です。

トムとジェリー ジャックと豆の木 [DVD]

『ジャックと豆の木』には、なんと『トムとジェリー』バージョンの映画も!原作に大胆なアレンジが加えられていて、魔法の豆を拾ったトムとジェリーが天空の国でもドタバタ劇を展開するというストーリー。『ジャックと豆の木』と『トムとジェリー』のどちらも好きなお子さんにはたまらない作品ではないでしょうか。

さまざまなバージョン違いが存在。あなたが好きなバージョンは?

今回は、イギリスの童話『ジャックと豆の木』のあらすじや豆知識、おすすめの絵本・映画等をご紹介してきました。

古くから伝わるお話のため、さまざまなバージョン違いが存在する点も本作の面白さではないでしょうか。バージョンによっては「ひどい」「巨人がかわいそう」と評されることもある本作ですが、絵本や映画版を含め、みなさんはどのバージョンがお好きですか?

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文・構成/羽吹理美

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