震源とはどこを指す?
震源と聞いて、なんとなく地震の中心地をイメージする人も多いのではないでしょうか。震源には具体的な定義があります。震源の意味と、似ている言葉との違いを見ていきましょう。
地震が発生した場所
地震は、地下の岩盤が押されたり引っ張られたりして、急激にずれが生じる現象です。岩盤が動いてずれることによって生じたエネルギー「地震波」が周囲に伝わって、地表を揺らします。
この岩盤の急なずれが最初に起こった場所(地震波が発生した地点)が震源です。また、岩盤のずれが起こった範囲を「震源域」と呼びます。地震の規模が大きいほど、震源域も広くなります。
震央・震源地との違い
「震央(しんおう)」は、地表における震源の真上に当たる地点です。震央は緯度と経度で示され、通常はその場所の地名や海域名(震央地名)が付けられます。
なお、テレビや新聞などが発表する「震源地」とは、震央地名のことです。ニュースでは震源地を単に「震源」として発表することもあるため、本来の意味と混同してしまう人も多いかもしれません。図のように「震源は地下、震央は地上」と覚えておくとよいでしょう。
震源の基礎知識
地震の揺れは、震源から生じた地震波によって起こります。震源と地震との関係を詳しく見ていきましょう。
震源の深さと地震規模の関係
震源の深さとは、地表からの震源までの距離のことです。地震の強さが同じ場合、地表の揺れは震源が浅いほど激しく、深いほど穏やかになります。逆に揺れの範囲は、震源が浅いほど狭く、深いほど広いのが特徴です。
「平成7年(1995年)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)」は震源の深さが約16kmと浅かったため、震源地付近は激しい揺れに襲われました。
また、深い場所でも強い地震が起こると、広範囲が大きく揺れることになります。「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」では、震源は兵庫県南部地震よりも深い約24kmでしたが、地震の規模が非常に大きかったため、震源から遠く離れた場所でも強い揺れが観測されました。
深発地震と異常震域
世界で起こる地震の約8割は、深さ70~100kmより浅い場所で起こる「浅発地震(せんぱつじしん)」です。深さ100km以上で起こる地震は、気象庁によって「深発地震(しんぱつじしん)」と定義されています。
ただし深さ300kmまでを「やや深発地震」、300km以上を「深発地震」として区別する場合もあり、明確な定義はありません。深発地震は大陸プレートの下に沈み込んだ、海洋プレート内で発生するのがほとんどです。
海洋プレートを構成する岩盤には、地震波の勢いを伝えやすい性質があります。そのため深発地震では、震源の真上の震央よりも海洋プレートの先にある遠い地点のほうが、大きく揺れることも珍しくありません。この現象は「異常震域」と呼ばれます。
震源の最深記録
これまでに観測された深発地震のうち、最も震源が深いと推定されているのは「USGS(米国地質調査所)」の記録にあるフィジー付近の地震で、700km以上とされています。
日本の最深記録は、2015年の「小笠原諸島西方沖」の地震の余震で記録された698kmです。この地震では揺れの範囲が広く、47都道府県全てで震度1以上を観測しました。
また震源地から遠い神奈川県や埼玉県でも、震源地に近い小笠原村と同程度の揺れが起こっています。
震源の位置や深さを知る方法
震源は地下にあるため、位置や深さを実際に測って確かめるわけにはいきません。では、地震のニュースで報じられる震源の位置や深さは、どのようにして求めるのでしょうか。震源を特定する方法を見ていきましょう。
震源までの距離
地震の観測地点から震源までの距離を「震源距離」といいます。震源距離は、地震波の速度の違いを利用して求めることが可能です。
地震波にはP波とS波があり、P波のほうがS波よりも速く進みます。地殻内では、P波は毎秒約8km、S波は毎秒約4kmで進むため、秒速にして約4kmの差があるのです。
このことから、観測地点にP波が届いてからS波が到達するまでの時間は、震源距離が遠いほど長くなると分かるでしょう。なお、P波とS波の到達時間の差を「初期微動継続時間(PS時間)」といいます。
観測地点における初期微動継続時間に8をかけると、大体の震源距離(㎞)が計算できます。地震波の速度は地盤の状態によって変わるため、実際にはもっと複雑な計算が必要ですが、おおまかな計算方法として覚えておくとよいでしょう。
震源の位置
3カ所以上の観測地点で震源距離が分かれば、震源の位置も特定できます。各観測地点を中心に、震源距離を半径とする球体を描いたとき、地下で線が交差する部分が震源です。
ただし家庭学習や学校の授業などでは、実際に球を描いたり、地中に線を引いたりするのは難しいでしょう。その場合はまず震央の位置を特定し、観測地点から震央までの距離(震央距離)と震源距離から、震源の深さを求めて位置を特定します。
震央の位置を特定するやり方は以下の通りです。
1.地図上に各観測地点を中心に震源距離を半径とする円を描く
2.三つの円のうち、交わっている二つの円の交点をそれぞれ線で結ぶ
3.3本の線が交わる点が震央
震源の深さ
震央距離と震源距離が分かれば、震源の深さも分かります。まずは地図を厚みのある地盤に見立てて、震央距離を1辺、震源距離を斜辺とする直角三角形を作りましょう。
このとき残った1辺の長さが、震源の深さです。定規で長さを測ってから地図の縮尺を適用すれば、震源がどのくらい深い位置にあるかが分かるでしょう。
震源の深さは、「三平方の定理」でも求められます。三平方の定理とは「直角三角形の斜辺の長さの2乗は、他の辺の長さをそれぞれ2乗した和に等しい」というものです。
三平方の定理を応用すれば、震源の深さは震源距離(斜辺の長さ)の2乗から、震央距離(1辺の長さの2乗)を引いた数字の、平方根を求めればよいことになります。三平方の定理や平方根は中学校の数学で習うので、考え方だけでも覚えておくとよいでしょう。
震源から地震の特徴を推測してみよう
震源とは、地下で地震が発生した地点のことです。震源が浅いほど地表の揺れが激しく、深ければ広い範囲が揺れる特徴があります。
気象庁では、地震が発生すると震源地や震源の深さ、地震の規模などを発表しています。身の安全を確保した上で、発表されたデータをもとに自宅からの震源距離を測ったり、揺れの程度を推測したりすると、地震への理解がより深まるかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部