目次
読書感想文が簡単に……教育現場に衝撃を与えたChatGPT
ChatGPTなど文章生成AIの登場は、教育現場にも大きな衝撃を与えました。作文や読書感想文、短歌や俳句の創作が簡単に行なえてしまうからです。
2023年7月には、文部科学省から都道府県教育委員会や指定都市教育委員会の教育長等宛に「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の作成について(通知)」という文書が出されました。
同ガイドラインは、主として対話型の文章生成AIについて、学校関係者が現時点で活用の適否を判断する際の参考資料として作成されたものです。基本的な考え方として、現時点では限定的な利用から始めることが適切であるとし、すべての学校で情報活用能力を育む教育活動を充実させ、AI時代に必要な資質・能力の向上を図る必要があるとしています。
また、「長期休業中の課題等について(文章作成に関わるもの)」も触れられており、読書感想文や日記、レポート等に関して、外部のコンクールへの応募を推奨したり、課題として課したりする場合の留意点が述べられています。
参考:初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン」の作成について(通知)
家庭学習でChatGPTの使用は禁止するべき?
子どもが簡単に「答えを知ることができる」時代。生成AIによって生産性向上などのメリットが期待できる一方で、「創造性や学習意欲が損なわれるのではないか」「情報漏えいや著作権侵害などの問題が起こるのでは?」と懸念されています。
RISUで実施したChatGPTに関するアンケート結果は?
今回のテーマに関してRISU(執筆者が代表をつとめるRISU Japan株式会社)で独自に実施したアンケートでは、ChatGPTの利用状況について、親子とも「利用したことがない」という回答が大半でした。
しかし、「子どもがChatGPTを利用することについて、どう思うか?」という問いでは、「絶対に利用させたくない」という回答は全体の3.5%に留まり、過半数の61.3%の保護者が「ぜひ利用させたい/利用させてもよい」と考えていることが分かりました。
ChatGPTの利用を禁止するよりは、時代の移行に合わせて上手く付き合える力を身に付けてほしいと考えている保護者の気持ちが見受けられます。
禁止するより共存する
このような便利なツールは、子どもに「使うな」と禁止しても、子ども自身が使ってみたいと思えば、何とかして使おうとするものです。親に使うなと言われるほど、使ってみたくなるのが子どもの心理ですよね。
私の子どももそうですが、パスワードをかけておいても子どもはあっという間に破ってしまいますよ。私は禁止する形でツールを遠ざけるよりは、上手く共存して付き合える方法を親子で探ってみるほうが良いと考えます。
親が知っておくことも大切
新しいツールがどんなものか、保護者自身が触ってみることも大切です。
人間は「よく知らないもの」というだけで、危ない・怖いものだというイメージを決めつけてしまいます。ChatGPTに限らず、子どもが新しい何かを使ってみたいと言ったとき、「よく分からないから止めておけ」と言うのでは理屈が通らず子どもも納得しないでしょう。
どういった部分が便利で、どういった部分がどう危ないのかを子どもに説明するためには、大人も使ってみなければ分かりません。
ChatGPTを学習に上手く活用するには?
文章生成AIがどのようなものか、学習に上手く活用する方法を紹介します。
生成された文章が正確でない可能性に注意が必要!
現時点での文章生成AIには、「得意なこと」と「苦手なこと」があります。
・作文や読書感想文を代わりに書いてもらう
・「〇〇について教えてください」と調べものする
このような使い方は、文章生成AIの「苦手なこと」であり、誤った情報を示す可能性があるためオススメできません。調べものに使うのであれば、示された回答が正しいかを改めて調べ直す必要があり、余計な手間が増えてしまいます。
下記は、ChatGPTを使って「エルマーのぼうけん」について感想と要約を書いたものです。本を読んだことがある方なら、内容が合っていないことに気が付くと思います。文章も汎用的で個性に欠け、日本語がおかしいところも気になります。
アイデア出しは得意分野
文章生成AIを上手く活用するなら「自分が考えるためのアイデア出し」のような使い方がオススメです。
下記はChatGPTに「夏休みの生活目標」を考えるアイデア出しを手伝ってもらったものです。自分だけのアイデアでいくつも候補を挙げるのは至難の業。このような使い方は生成AIの得意分野と言えるでしょう。
思考力を鍛える練習に
生成AIを使うには、我々使う側にも上手な「質問力」が必要になってきます。上手く尋ねなければ、求めている情報にたどり着けない側面もあるからです。どう尋ねれば自分の意図が伝わるか?と考えることは、思考力を鍛える練習になります。
「もっとこういう使い方ができそうだ」「自分だったらこういう場面で活かす」など、実際ツールに触ってみると、ChatGPT自体をどう使うのが有益かを考えてみる良い機会になります。考えることそのものが、将来に活きる学習であると言えるでしょう。
スマホをかざすだけで答えが見えるGoogleレンズ
「答えを知ることができる」という点では、Googleレンズも同じく付き合い方を考える必要があるツールです。
Googleレンズは、例えば宿題の問題文にスマホカメラをかざすだけで、スマホの画面に解答が表示されるアプリです。理科や社会の文章問題では、内容に沿った検索結果へリンクする形で答えが示されることが多いですが、特に算数の計算問題などは、カメラをかざすと計算結果をそのまま示してくれます。
何のために使うのか目的を明確にしよう
このようなアプリについても、使うなと禁止するよりは付き合い方を親子で考えるほうが良いでしょう。
そもそも何のために勉強をしているのか?という目的から振り返る必要があります。自分で問題を解くことを放棄して、アプリを使ってプリントを100点にしても、自分の実力にならなければ何も意味がないということです。
反対に、すでに内容をしっかり理解しているなら、宿題を効率良く進めるためにツールを上手く利用するのもひとつの手です。学校から出された宿題が、ただこなすだけの作業になってしまいモチベーションが上がらないのであれば、あえてツールを使ってみるのも楽しい学習になるかもしれませんね。
ただ注意しなければならないのは、「アプリはあくまでもツールでしかない」という点です。例えば先ほど例に挙げた計算ですが、上画像中の③のような解き方になります。これはただ順番通りに計算をしただけで、ある意味「コンピューター」だからこそできる解き方です。本来なら、
1.7×(3.8+6.2)=1.7×10=17
という工夫をして解いたほうが早く楽に計算ができます。1つ1つ計算して大変だな、面倒だなと思うことで工夫するようになるのです。
このように、示される解答が全て正しいとは限りません。上手に付き合うには、全てを鵜呑みにしないで、自分で考えることを放棄しない姿勢が大切です。
親子で興味を持って使ってみよう
今回は、ChatGPTやGoogleレンズといった「答えを知ることができるツール」について、どのように向き合うべきか、どう学習に活かすべきか、上手な付き合い方を考えました。
ただ「よく分からないから危なそう」というイメージで禁止して子どもから引き離すよりは、使用のルールや、生じるデメリットを親子で話し合うほうが、将来的にもよほど有益ではないかと私は考えます。
この先はAIと共存し、AIを使うことが当たり前になる時代です。自分の生活の中で、どういう場面で活かすと便利かを思い付くためにも、実際どんなツールなのか体感しておくことは大切です。まずは新しいツールに興味を持って遊んでみる感覚で、親子で新しい技術に触れてみてはいかがでしょうか。
あなたにはこちらもおすすめ
記事執筆
〈タブレット教材「RISU算数」とは〉
「RISU算数」はひとりひとりの学習データを分析し、最適な問題を出題するタブレット教材。タイミングの良い復習や、つまずいた際には動画での解説の配信を行うことにより、苦手を克服し得意を伸ばします。
期間限定のお試しキャンペーンはこちら≪
『小学生30億件の学習データからわかった 算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』
構成/HugKum編集部