「敬遠」には3つの意味がある? 論語由来が野球用語にも。基本の意味や使い方、関連用語を解説

比較的馴染みのある『敬遠』という言葉。この言葉が3つもの意味を持つことをご存じでしたか? 今回は『敬遠』の意味や使い方、関連用語をご紹介していきます。

「敬遠」とは?

まずは、『敬遠』の読み方と3つの意味、由来となった語源を押さえておきましょう。

読み方と意味

この言葉は、『敬遠』と書いて「けいえん」と読みます。

『敬遠』には、3つの意味があります。

ひとつ目は、「表面上では敬っているような態度を見せておきながら、実際には関わりを避けること」。
ふたつ目は、単に「嫌って避けること」。
みっつ目は野球用語で、「投者が打者との勝負を避け、意図的にフォアボール(四球)を選択すること」。

本来この言葉は「敬いつつも近寄らないこと」を意味していましたが、いつの間にか「遠ざける」ニュアンスが強まり、次第に「うわべでは敬っているように見せつつ、関わりを持たないようにする」ことを表す際に用いられるようになりました。

さらに、いつしか「敬いつつも」のニュアンスが薄れ、単に「嫌って避けること」の意味で使われることも一般的に。そのうちに、野球においても「投者が打者との勝負を避け、意図的に四球を与えること」を言い表す際に「敬遠」が使われるようになったと言われます。

由来・語源

『敬遠』の語源は、一説によると、中国の孔子とその高弟の言行が記録された『論語』にある「敬鬼神而遠之(鬼神を敬してこれを遠ざく)」からと言われています。「鬼神に対しては、敬意を表しつつも、深入りはしない」という意味を持つ一節です。

野球で『敬遠』するメリットは?

野球用語で使われる『敬遠』とは、「投者が打者との勝負を避け、意図的にフォアボール(四球)を選択すること」の意味で、正式には『故意四球』と呼ばれます。

野球をやっていないと「どうしてそんなことを?」と首を捻ってしまいますが、敬遠を使うことには、「強打者に長打を打たれることを避けるために、いっそフォアボールでランナーを出してしまおう」という思惑があります。敬遠をすることで、強打者との勝負を避けることができるのです。

使い方を例文でチェック!

では、「敬遠」という言葉は実際にはどのようなシーンで使われるのでしょうか。例文とともにチェックしていきましょう。

1:店長は小言が多いので、アルバイトの学生たちから【敬遠】されている。

こちらは【敬遠】を「表面上では敬っているような態度を見せておきながら、実際には関わりを避けること」の意味で用いた例文です。

仕事上の上司・部下のような関係となると、うわべでは敬っているように見せつつ、本当は関わりを避けている…なんてことも珍しくないかもしれませんね。

2:彼は手先が不器用なので、細かい作業を【敬遠】している。

こちらは【敬遠】を、単に「嫌って避けること」の意味で用いた例文。人だけではなく、物事に対しても使うことができます。

3:次のバッターは有名な強打者だ。彼に打順がきたら敬遠しよう。

こちらは野球用語として【敬遠】を使用した例文です。敬遠するよう監督から指示が出る場合もあるのだとか。

類語や言い換え表現は?

では、『敬遠』にはどのような言葉で言い換えることができるのでしょうか。類語・言い換え表現をご紹介します。

1:忌避(きひ)

「その物事を嫌って避けること」を意味する『忌避』という言葉。口語ではあまり使われませんが、ビジネス文書等ではよく使われます。なにかを「嫌って避ける」「嫌って遠ざける」ことを言い表したいとき、『敬遠』と同じように使うことが可能です。

2:回避(かいひ)

『回避』は、「物事を避けること」を意味する言葉です。一般的には、義務やトラブル、障害等、好ましくないものを避けるときに使われます。「嫌って避けること」を言い表す『敬遠』の類語として使えます。

3:逃避(とうひ)

『逃避』とは、「困難や嫌なことから逃げたり避けたりすること」の意。こちらもまた、「嫌って避けること」を言い表す『敬遠』の類語として使えますが、「避ける」と同様「逃げる」のニュアンスも強くなる点に注意しましょう。

対義語は?

では、『敬遠』とは反対を言い表したい場合、どのような言葉を使うことができるのでしょうか。明確に対となる対義語が存在しないため、反対の意味に近い言葉を探してみました。

1:親近(しんきん)

『親近』とは、「身近なものとして親しむこと」の意味を持つ言葉です。なにかを「遠ざける」というニュアンスのある『敬遠』とは反対の意味を持つ言葉と言えます。

2:懇意(こんい)

『懇意』とは、「親しい間柄であること」「仲良く付き合うこと」の意味を持ちます。「嫌って避けること」を意味する『敬遠』とは反対の言葉として挙げられます。

英語表現は?

では、『敬遠』は英語ではどのように表現することができるのでしょうか。最後に、『敬遠』と近い意味を言い表せる英語表現をご紹介します。

1:give a wide berth

“give a wide berth”とは、「距離を置く」という意味の英語表現です。“a wide berth”とは、「十分な距離」の意で、人を避けるときなどに使われます。誰かを「遠ざける」際に使われる『敬遠』の英語表現として使うことができます。

2:shy away

“shy away”は「避ける」「嫌がる」という意味を持ち、「敬遠する」とも訳される英語表現です。“shy away from〜”とすれば、「〜を敬遠する」という形で使うことができます。

3:an intentional walk

野球用語の『敬遠』は、英語で “an intentional walk”と表現することができます。直訳すると「意図的に歩かせること」という意味で、こちらも野球用語として使われています。

日常生活でも、野球中でも、意味を知って正しく使おう

今回は、『敬遠』の意味や使い方、関連用語を中心にお伝えしてきました。馴染みのある言葉ではありますが、3つもの意味を持つことを知らなかった方はきっと多いはず。日常生活でも、野球鑑賞中でも、意味をしっかり把握して正しく使ってみましょう。

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文・構成/羽吹理美

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