目次
「画竜点睛」とは? 竜の絵に目を加えたら飛び立ってしまった…故事が由来に
まずは、『画竜点睛』の読み方と意味、由来を押さえておきましょう。
読み方と意味
この四字熟語は、『画竜点睛』と書いて「がりょうてんせい」と読みます。「なにかを完成させるために必要な、最後の仕上げ」を意味する言葉です。
由来・語源
この言葉は、中国の唐時代の画史書『歴代名画記』に描かれた故事に由来しています。この故事のなかには、中国の張という絵の名人が、金稜の安楽寺の壁に竜の絵を描いていたところ、最後の仕上げとして目を描き入れたことで、竜が空へと飛び立ってしまった……という逸話があります。
この逸話を語源として、なにかを完成させるための仕上げを「画竜点睛」「点睛」というようになったとされています。
「睛」は「晴」ではないので要注意!
『画竜点睛』を使う際に間違われやすいのが、「睛」を「晴」としてしまうもの。竜が空へと飛び立つイメージからも「晴れ」が適しているような気がしてしまいますが、正しくは「睛」と書きます。
「睛」は「晴」とは異なり、「瞳」の意味をもつ漢字。「竜の絵に瞳を入れること」が4つの漢字によって言い表されていますね。
使い方の例文|文脈によって形が変わるので要注意!
ここからは、『画竜点睛』の具体的な使い方をチェック。この言葉は一般的に、文脈がポジティブか、ネガティブかによって、使い方が異なります。例文を通してしっかり押さえておきましょう。
1:面白い映画ではあったが、締めくくりがイマイチで【画竜点睛】を欠いた印象を受けた。
『画竜点睛』は、「画竜点睛を欠く」と用いてネガティブな意味合いで使われることが一般的です。最後の仕上げが不十分であり、完璧ではないことを指します。
2:完璧にこなしていたつもりだったが、ローンチ後にケアレスミスが見つかった。【画竜点睛】に欠いたプロジェクトとなってしまった。
こちらも同様に、仕上げが不十分であるという意味合いで『画竜点睛』を用いた例。ケアレスミスによって、すべてが台無しになってしまうこともありますよね。
3:作品の【点睛】にこだわり、最後の最後まで時間をかけている。
『画竜点睛』は、同様の意味として『点睛』だけで使うことができます。また、『点睛』の場合においては、ポジティブな言い回しで用いることが可能です。この例文は、作品の仕上げにこだわって、最後まで時間をかけている、といったニュアンスを持ちます。
類語や言い換え表現は?
では、『画竜点睛』は、どのように言い換えることができるのでしょうか。ここからは『画竜点睛』の類語や言い換え表現をお伝えしていきます。
1:「点睛開眼」
『画竜点睛』の「点睛」に「開眼」を加えた四字熟語。「瞳を描き入れて開眼させる」という意味で、『画竜点睛』にもっとも近い意味の四字熟語です。
2:「仕上げ」
ここまでお伝えしてきたとおり、『画竜点睛』は「なにかを完成させるための最後の仕上げ」という意味を持ち、そのまま『仕上げ』と言い換えることが可能です。『画竜点睛』の場合は、「欠く」と合わせてネガティブな意味合いで使う場合が一般的ですが、『仕上げ』の場合はもちろん、文脈がポジティブかネガティブかに関わらず使うことができます。
3:「大詰め」
芝居の最終の幕、またはその場面を言い、そこから「物事の終局の場面」「最後の段階」の意味となった「大詰め」。最終的な大事な局面をあらわす言葉として『画竜点睛』に通底する言葉と言えそうです。
対義語は?
『画竜点睛』とは反対の意味を言い表したい場合、どのような表現を使うことができるのでしょうか。明確に対となる「対義語」は存在しないため、反対の意味合いとなりそうな言葉をご紹介していきます。
1:蛇足
「必要のないものを付け足すこと」という意味のある『蛇足』は、「必要なものを仕上げに付け足すこと」の意を持つ『画竜点睛』とは対照的な語として挙げられます。『画竜点睛』と同じく、故事成語に由来する言葉です。
2:過剰
「多すぎる」という意味を持つ『過剰』。こちらは、『画竜点睛を欠く』と使った場合の「仕上げが足りていない」というニュアンスに重点を置けば、反対の意味を持つ言葉と言えるのではないでしょうか。何事も、多すぎても少なすぎても「完璧」とは言えなくなりますよね。
3:「仏作って魂入れず」
『仏作って魂入れず』とは、「良いものを作っても、最も大切なものが欠けているため完璧ではないこと」を指す言葉です。『画竜点睛を欠く』とほぼ同義の言い換えであることから、単独語としての『画竜点睛』の対義語と言ってもよさそうです。
英語表現は?
最後に、『画竜点睛』を言い表せる英語表現をチェックしておきましょう。
1:finishing touch
“finishing touch”とは、「最後の一仕上げ」の意味を持つ言葉。『画竜点睛』と近い意味ではありますが、『画竜点睛』は「欠く」と合わせてネガティブな意味合いで使うのが一般的なのに対し、こちらはポジティブ・ネガティブ、どちらの文脈でも使うことができます。
ちなみに、『画竜点睛を欠く』は、“lacks the finishing touch(es)”と表現できます。
2:serious defects
『画竜点睛を欠く』に近い意味を表す英語表現としては、「深刻な欠陥」という意味を持つ“serious defects”が挙げられます。『画竜点睛』の「仕上げ」のニュアンスはなくなってしまうので、留意しておきましょう。
文脈によって形が変わる言葉。ルールを覚えておきましょう。
今回は、『画竜点睛』の意味や由来、使い方、関連語をご紹介してきました。一般的に、『画竜点睛』は「欠く」と合わせてネガティブに使用されることが多く、『点睛』だけならポジティブに使われます。「睛」の字とあわせて間違えやすい四字熟語ですが、一度覚えておけば、いろんな場面で使える言葉ではないでしょうか。
あなたにはこちらもおすすめ
文・構成/羽吹理美