「禍福は糾える縄の如し」とは?
まずは『禍福は糾える縄の如し』の読み方と意味を押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は『禍福は糾える縄の如し』と書いて、「かふくは あざなえる なわの ごとし」と読みます。
「災禍」と「幸福」は、ねじり合わせた縄のように表裏一体であることを指し、「そのどちらもが交互にやってくるので、一時の災いや幸福に振り回されても仕方がない」という意味で使われます。
由来・語源
この言葉は、中国の『史記・南越伝』の一節、
「因禍為福、成敗之転、譬若糾纏」
(=禍によりて福となす。成敗の転ずるは、たとえばあざなえる縄のごとし)
を由来とした故事成語が発展した言葉です。
四字熟語「禍福糾縄」で言い表すことも◎
『禍福は糾える縄の如し』は、四字熟語で言い表すこともできます。
『禍福糾縄』と書いて「かふくきゅうぼく」と読むこの四字熟語は、『禍福は糾える縄の如し』と同様の意味で使えるので、あわせて覚えておきましょう。『禍福糾纆』と書く場合もあるので、こちらも読めるようにしておくと◎。
使い方を例文でチェック!
では、『禍福は糾える縄の如し』はどのように使うことができるのでしょうか。例文を通じて押さえておきましょう。
1:今は辛い時ではあるが、【禍福は糾える縄の如し】というように、辛いこともあれば良いこともあるはずだ。ポジティブに過ごそう。
このように、『禍福は糾える縄の如し』は、辛いことに直面している人を、「きっと良いこともある」といったニュアンスで励ます際に使うことができます。
2:良いことが立て続けに起こるとつい浮かれてしまうが、【禍福は糾える縄の如し】だ。どこで状況が転ずるかわからないので、冷静でいよう。
1の例文とは反対に、良いことばかりが起きている場合にも使うことができます。「悪いことが起こる可能性もある」といったニュアンスで、戒めの意で用いましょう。
類語や言い換え表現は?
『禍福は糾える縄の如し』には、言い換え表現として使える類語や、近い意味を持つ言葉があります。さっそく見ていきましょう。
1:人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)
「人間万事塞翁が馬」は、「不幸や幸福は予測ができない」という意味を持つ言葉で、『禍福は糾える縄の如し』の言い換えに適しています。
禍福が交互にやってくる逸話を描いた中国の故事に由来しており、出自も『禍福は糾える縄の如し』と共通しています。
2:沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり(しずむせあればうかぶせあり)
『沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり』は、「川の瀬に浮き沈みがあるのよ同じように、人生にも、良いこと・悪いことどちらもある」という意味のことわざです。
くよくよしている時・浮かれている時、どちらの戒めにも使える『禍福は糾える縄の如し』に比べて、こちらは「くよくよしないように」といったニュアンスが強い印象を受けます。
3:苦あれば楽あり(くあればらくあり)
『苦あれば楽あり』とは、言葉のまま「苦労のあとにはきっと楽しいことがある」という意味です。
『沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり』によく似た言葉ですが、「苦労は必ず報われる」といったニュアンスがより濃い言葉です。今苦労をしている人に、ねぎらいの気持ちを込めて投げかけてみましょう。
対義語は?
『禍福は糾える縄の如し』には、正確には対義語と呼べる言葉はありません。ここでは、『禍福は糾える縄の如し』とある意味で反対の意味ともいえる言葉をご紹介します。
1:二度あることは三度ある
『二度あることは三度ある』とは、「二度あったことは再び起こる可能性が高いため、過ちを繰り返さないよう注意しよう」という戒めのニュアンスのある言葉です。
「災いや幸福は交互に(代わる代わる)やってくる」との意味を持つ『禍福は糾える縄の如し』とは反対の言葉として挙げられるのではないでしょうか。
2:一災起これば二災起こる
『一災起これば二災起こる』は、言葉のとおり、「一度ある災いは二度ある」という意味を持ち、「一度起きた災難は、また別の災難を引き起こす」「悪いことは重なる」といったことを言い表すことができます。
こちらも、『二度あることは三度ある』と同様の理由から『禍福は糾える縄の如し』とは反対の言葉といえます。
英語表現は?
『禍福は糾える縄の如し』は、英語ではどのように言い表すことができるのでしょうか。『禍福は糾える縄の如し』に近い意味を持つ英語表現をお伝えします。
1:Sadness and gladness succeed each other.
“Sadness and gladness succeed each other.”は、「悲しみと喜びは交互にやってくる」という意味の英語表現です。『禍福は糾える縄の如し』と同様の意味を持つ表現として用いることができます。
2:Good luck and bad luck alternate like the strands of a rope.
“Good luck and bad luck alternate like the strands of a rope.”は、「幸運と不運は、よりあわせた縄のように変わっていく」という意味。意味が近いことに加えて「the strands of a rope = 糾える縄」を用いている点においても、『禍福は糾える縄の如し』に近い意味の英語表現といえます。
さりげなく使えると一目置かれる表現!
今回は、『禍福は糾える縄の如し』についてご紹介してきました。
あまり多用されない言葉かもしれませんが、ちょっとした場面でさりげなく使えると一目置かれる表現でもあります。くよくよしている人や、浮かれている人が近くにいたら、使ってみても良いかも。
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文・構成/羽吹理美