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「暖簾に腕押し」とは?
「暖簾に腕押し」という言葉を、きっと多くの人が一度は聞いたことがあるはず。けれども、実際の会話や文章に応用するとなると、少々ハードルが高いように感じる方もいるのではないでしょうか。誤用にも注意したい言葉なので、まずは正しい意味や語源をしっかり押さえておきましょう。
読み方と意味
「暖簾に腕押し」は、「のれんにうでおし」と読みます。
暖簾を腕で押したときのように、手ごたえがなく拍子抜けすることを意味する言葉です。自分の言動や行いに対して相手から誠実なリアクションがなく、物事が進展しないことのたとえとしても使われます。
由来・語源
「暖簾に腕押し」の語源にはふたつの説があります。
ひとつは、「手ごたえや張り合いのないこと」を「暖簾を腕で押す」感覚にたとえたことが由来している、という一般的なもの。
もうひとつは、「腕押し」は「腕相撲」とも捉えられることから、「暖簾と腕相撲をするように張り合いがない」というたとえと解釈したもの。どちらも感覚としてイメージしやすいですね。
【要注意】否定的な表現なので、使用の際は慎重に

「暖簾に腕押し」は、基本的にはネガティブなニュアンスを持つ言葉です。張り合いがない、やる気がない……と相手を評している印象を与える可能性があります。
たとえば、「あの人に真剣に話をしても、暖簾に腕押しだ」と言えば、その人が真剣に話をするには適さない、誠実ではない人物であるかのような皮肉的なニュアンスを含みます。人に対して使う際は、十分に気をつけましょう。
使い方を例文でチェック!

では、「暖簾に腕押し」はどのように使うのが正しいのか、例文を見ながらさらに理解を深めましょう。
早く帰りたい友人をいくら誘っても、暖簾に腕押しだ。
「暖簾に腕押し」が持つ、「手応えがない」といった意味を表した例文です。早く帰りたがっている人をどんなに誘っても、良いリアクションはきっと得られないことから、「暖簾に腕押し」を使うことができます。
不真面目な生徒にどんなに注意しても何も変わらず、暖簾に腕押しだった。
こちらは「暖簾に腕押し」が持つ、「相手から誠実なリアクションがなく、物事が進展しないこと」のニュアンスを含んだ例文。不真面目な生徒に重ね重ね注意をしても、なかなか改善されず、埒が明かないことを言い表しています。
弱った相手と喧嘩をしても、暖簾に腕押しだ。
こちらは、「暖簾に腕押し」の「手応えや張り合いがない」のニュアンスを使った例文です。弱っている相手とやりあっても、互角には争えないですよね。
類語や言い換え表現は?

では、「暖簾に腕押し」はどんな言葉で言い換えることができるのでしょうか? これを機に類語や言い換え表現も学んで、語彙を増やしましょう。
ぬかに釘
「ぬかに釘」は「暖簾に腕押し」と同様に、手応えがないことや意味がないことを言い表した言葉です。「柔らかいぬか床に釘を打っても意味がない(手応えがない)」といったたとえが由来になっています。
馬の耳に念仏
「馬の耳に念仏」は、馬に念仏を唱えても理解できないことから「ありがたみがない」という意味を持つ言葉です。意味だけでなく、言葉の組み立てられ方まで「暖簾に腕押し」によく似た言葉ですね。
豆腐にかすがい
似た言葉として「豆腐にかすがい」も挙げられます。かすがいとは、木材同士をつなぎ合わせるための接合金物です。豆腐のようなやわらかいものにそれを打っても「手ごたえがない、効果がない」といった意味を持ちます。
対義語は?

ここからは、「暖簾に腕押し」の反対の言葉をご紹介。以下の表現は、どれも正確には対義表現とは言えませんが、反対の状況で使える言葉としてぜひ頭に入れておきましょう。
大黒柱と腕押し
「暖簾に腕押し」が持つ「手応えがない」「張り合いがない」といった意味の反対表現としては、「大黒柱と腕押し」があります。家の中心を支える大黒柱は、どんなに腕で押してもびくともしませんよね。このことから、「暖簾に腕押し」とは逆に、相手側の堅固な意思と姿勢を感じさせる表現です。
ただ、「いくらがんばっても力の及ばない」ことのたとえとしては、「暖簾に腕押し」と結果的には同じになるかもしれませんが…。
打てば響く
「暖簾に腕押し」が持つ「相手から誠実なリアクションがなく、物事が進展しない」という意味の反対表現としては、「打てば響く」が挙げられます。
「打てば響く」とは、「暖簾に腕押し」とは反対に、「すぐに反応がかえってくる」様子を言い表す言葉です。刺激を与えれば、与えた分だけ成果を得られるときにも使うことができます。
英語表現は?
では、「暖簾に腕押し」は英語ではどのように表現できるのでしょうか。ここでは、「暖簾に腕押し」に相当する英語表現をお伝えしていきます。
It’s a waste of time
「無駄な努力」という意味を持つ “a waste of time”。「手ごたえがない」「物事が進展しない」といったニュアンスをもつ「暖簾に腕押し」の英語表現として、適しているといえます。
It is like beating the air.
「空気を叩くようなもの」と直訳できるこの言葉は、「全く意味がないこと」という意味を持ち、「暖簾に腕押し」の英語表現として使うことができます。空気を叩く、という発想もまた「暖簾に腕押し」に似ているのが興味深いですね。
It is like plowing the sand.
こちらもまた、「意味がない」「無駄である」ことを意味する言葉。「砂を耕すように無駄である」と直訳することができ、印象としても「暖簾に腕押し」に近い表現です。
皮肉っぽいニュアンスを持つ言葉。使うのは、ここぞという時のみに。
今回は、「暖簾に腕押し」の意味や使い方、関連表現をご紹介してきました。
皮肉っぽいニュアンスを含むこの言葉。誰かに対して使うには、少々注意が必要なことわざではありますが、ここぞという時に使ってみると、一枚上手な印象をもたらすかもしれません。
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構成・文/羽吹理美