「二度あることは三度ある」の意味
同じようなことが二度続いて起きたときは、近くもう一度繰り返される。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
「二度あることは三度ある」の意味は上にあるとおりですが、このことわざが何を由来として、いつ頃から言われるようになったかは定かではありません。
江戸時代中期の浄瑠璃にはすでに「二度あることは三度めの~」という言い回しが使われていたことから、少なくともその頃には用いられていたようです。
「二度あることは三度ある」は本当?
では、「二度あることは三度ある」は本当なのでしょうか。
かつては、同じ一族で二人続けて亡くなったときに、三人目の死者の代わりに人形を葬ったり、醤油を二度こぼしたときに、わざともう一度少しだけこぼすなど、三度目の禍を避けるための風習が各地にありました。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
上のような風習を生んだということは、昔から人々は「二度あることは三度ある」の気配を肌身にしみて感じていたと思われます。
フランスにも同様のことわざがあることを見ると、この感覚は国や文化を超えて存在するようです。
フランスのことわざ:Jamais deux sans trois.(三のない二は決してない)
「二度あることは三度ある」の反対語? 「三度目の正直」の意味
いっぽうで、「二度あることは三度ある」に対抗するように使われることわざで「三度目の正直」があります。
物事は、最初や二度目でだめであっても、三度目にはしかるべき結果が得られる。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
こちらも普遍的な感覚のようで、英語にもThird time lucky(三度目の幸運)と同様のことばがあります。
「二度あることは三度ある」vs「三度目の正直」 それぞれの確率は?
「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」。互いに矛盾するようなことばですが、さて、それではどちらの事象のほうが起こる確率は高いのでしょうか。
ベイズ推定という確率の理論をつかって計算すると下記のようになるという説があります。
「二度あることは三度ある」=75%
「三度目の正直」=25%
こうしてみると「二度あることは三度ある」は、かなりの高確率という気がしてしまいますね。
「三度目の正直」を応援したい理由
しかし、上のベイズ推定は、私たちが数学の授業でふつうに教わった確率計算(たとえば、サイコロをふって1が出る確率は1/6といったもの)とはちがい、主観確率と言って「すでに二度同じことが起こった」という情報によって導かれた特殊な確率理論です。三度目、四度目の情報によって数値は更新されると考えられ、固定的な確率ではありません。
そして現実世界では、同じことを繰り返す際にコツを習得したり、学習によってタイミングや方法が改善されたりもしますから、「二度あることは三度ある」にそれほど縛られる必要はないと思われます。
人は失敗を通して学習する生き物だからこそ、二度失敗した記憶は一度目より深く刻まれ、三度目の失敗への警戒を強化する契機になるのでしょう。
サイコロの目のようにあらかじめ確率の中に仕込まれている結果や、災害などのように同じ条件がそろえば繰り返されるものについては「二度あることは三度」と肝に銘じつつ、知恵や習熟度が加わるチャレンジには「三度目の正直」をモットーにするというように、賢く使い分けをしていきたいものですね。
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構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
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