「どうして、ママは死んじゃったの?」
妻が他界したばかりの頃、幼稚園児だった娘は僕に「どうして、ママは死んじゃったの?」、「死ななきゃ良かったのに……」と何度も話してくることがありました。
ときには大泣きしながら訴えてくることも……。
そんなとき僕は決まっていつも「ママはいつもお空から見ているよ。だから毎日元気に頑張っているところを見せようね」と娘に言い聞かせていました。
前向きで頼もしい娘
そんな会話を頻繁にしていたことで、娘は友達や先生などに「私のママはお空い居て、いつも私を見ているの」と良く言っていたそうです。
ある時、妻が亡くなったことを知らない娘の友達の親御さんから、質問されたこともあったようですが、当時、小学校低学年だった娘はその姿勢を変えることはありませんでした。
また、「ママはお空から見守ってくれているし、今でも家族。うちにはパパと犬もいるから寂しくない」と娘が友達に話しているのを聞いたこともありました。
そんなふうに前向きになってくれている娘を僕はいつも頼もしく感じていたのですが……。
他界した母親のことを隠すようになった娘
娘が高学年になった頃でしょうか。
「誰かのお母さんにママが死んだこと言った?」
と聞かれました。僕は
「Aちゃんのお母さんに話したことはあるよ」
と答えると、娘は
「え~、もう誰にも言わないで」
と言うではありませんか。
僕は不思議に思いながらも
「別に自分からは言わないけれど、聞かれたら言うよ。変なことじゃないし」
と伝えると、娘は
「ダメ、お願いだから、絶対に言わないで!」
と引き下がりません。僕は
「分かったよ。なるべく言わないようにするね」
と答えて話は終えました。
母親の写真立ても隠すように
その後、娘の友達が家に遊びに来たとき、自分の部屋に飾っていた母親の写真を隠すようになりました。
どうしても、母親が他界したことを知られたくない様子なのです。
母親がいないことは劣等感?
僕は娘が母親のいないことに対し大きな劣等感を持つようになっているのではないか、と非常に心配になり、母親のことを隠したくなった理由を何度か聞いたのですが、いつも答えてくれませんでした。
母親が亡くなったことを隠した本当の理由
そんな様子は、小学校を卒業する頃にはなくなり、また堂々と母親のことを人に話せる娘に自然と戻っていました。
僕はこの話を書くにあたってもう一度、現在高校生になった娘に聞いてみました。
「どうして娘が高学年になった頃から母親のことを隠すようになったの?」
恐る恐る聞いてみると、初めて答えてくれました。
「友達から『お母さんは何しているの?』聞かれた時、どう答えればいいか分からなくなったからと……」
「そっかぁ……。でも、小学校を卒業する頃には、隠すことなく堂々と話せるように戻れたのは?」
「ママはいないけれど、自分のことを大事にしてくれる人が沢山いたことに気が付いたの」
と教えてくれました。
きっと娘は、僕が気づいていなかった様々な悩みを持ちながら、成長してきたのでしょうね。そして、その一つを、周りの人の愛情をしっかりと感じることにより、乗り越えたのだということを知り非常に嬉しく思いました。
お空から見ているママと一緒に、いつまでもそれを感じられる人であって欲しいと願っています。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。すべての親子が幸せになりますように!
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文・構成/ひまわりひであき ※写真はイメージです。