「度量衡」って何? 国内における単位の長くて深い歴史とは。メートル法を使っていない国もある?

計量に詳しい人であれば、度量衡という言葉を聞いたことがあるでしょう。経済を発展させるために、各国でさまざまな苦心をしながら統一を図ってきた歴史があり、日本でも古くから用いられてきました。度量衡の意味や歴史を見ていきましょう。

度量衡(どりょうこう)とは何?

度量衡は、計量の歴史の中でよく登場する言葉です。日常的に使われる言葉ではないので、初めて耳にした人もいるでしょう。どのような意味があるのか紹介します。

長さ・体積・重量の基準を指す

度量衡は長さ・体積・重量などの単位や基準、それらを計測するための器具を指す言葉です。度は長さで量は体積、衡は質量という意味を持ちます。

例えば、日本で古くから用いられてきた度量衡の単位に、尺貫法があります。フランスやイギリスで用いられていたメートル法ヤード・ポンド法も、度量衡の一種です。

世界での度量衡の歴史

世界における計量の歴史は古いものです。古代エジプトの葬祭文書「死者の書」の中にも、天秤を使用して罪の重さを決めるシーンがありますし、聖書には人体の一部が単位として登場することで有名です。例えば「肘を曲げた状態での、肘から中指の先までの長さ」といった単位が出てきます。

人によって誤差が大きくなってしまう単位だと共通の認識を持ちづらく、権力者の都合のよいように運用される恐れがあるなど、公平だとは言い難いでしょう。

古代中国では、中国を統一した秦の始皇帝が、それまでバラバラだった度量衡の統一を図ったとされています。

日本における度量衡の歴史

地域や国をまたいで、物品や金品のやりとりを公平かつスムーズに行うために、世界中で度量衡が重視されています。日本の度量衡には、どのような歴史があるのか見ていきましょう。

体積を量る際は升(しょう)という単位を使用
体積を量る際は升(しょう)という単位を使用していた

日本の伝統的な単位「尺貫法」

日本では701(大宝1)年に、「大宝律令」の中で度量衡の制度が定められました。古くから日本で使われてきた尺貫法は、中国の制度を参考に日本独自の単位として発展させたものだとされています。

尺(しゃく)は長さ、貫(かん)は重さのことです。現代の単位に直すと、1尺は30.303cm、1貫は3.75kgです。他にも、面積を測るときは歩(ぶ)や坪(つぼ)、体積を量る際は升(しょう)という単位を使用していました。

現代でも不動産で坪という単位が使われていたり、真珠の重さを表す世界共通の単位として匁(もんめ)を使用したりと、慣習として残されているものもあります。1匁は1/1,000貫のことで、グラムに直すと3.75gです。

明治時代は3種類の計量法が混在

諸外国の文化が盛んに入ってきた明治時代には、尺貫法だけでなくメートル法やヤード・ポンド法などの度量衡が混在していました。日本は1885(明治18)年に、「メートル条約」に加盟しています。

メートル条約は、国によって異なる長さ・重さなどの単位をメートルやキログラムなどに統一し、混乱をなくそうとするものです。日本が加盟したのは、近代国家として後れを取らないようにするためでした。

1891(明治24)年にはメートル法を導入する「度量衡法」が公布され、1893(明治26)年に施行されます。しかし、尺貫法に慣れていた人々は、これまでのやり方を簡単に切り替えられませんでした。

1921年に改正度量衡法の公布

1921(大正10)年に改正度量衡法を公布し、国内の単位をメートル法に統一しましたが、尺貫法も併用されます。長年親しんできた尺貫法の廃止に対する反発は強く、完全な浸透は望めなかったためです。

1951(昭和26)年に公布、翌年に施行された「計量法」によってメートル法が浸透し始めます。猶予期間を経た後、1959(昭和34)年になってメートル法が完全に実施され、尺貫法は廃止されました。

メートル法完全実施記念切手  Wikimedia Commons(PD)

1993年にも新計量法の施行

1993(平成5)年になって、国際単位系に統一するための新計量法が施行されました。国際単位系とは、メートル法をベースにした「SI単位」のことです。

SI単位は、長さ・質量・時間・電流・熱力学的温度・光度・物質量からなる七つの基本単位と、基本単位を組み合わせて表示する、m/s(メートル/秒)や立方メートルなどの組立単位で構成されます。

ほぼ全ての国でSI単位が計量単位として使用されている中、アメリカではヤード・ポンド法を使用していることを不思議に思う人もいるでしょう。慣用単位としてヤード・ポンド法の使用を継続している理由は、同法がメートルやキログラムを基準にした単位である点や、各種標識などの切り替えにかかる費用を抑えるためだとされています。

緑はメートル法を公式採用している国、赤はメートル法を公式採用していない国。(BlankMap-World.svgUser:NYKevin)Wikimedia Commons(PD)

現在のメートル法はどう決められた?

現在の1mの長さは何を基準に決めたのか、疑問を感じる人は多いでしょう。長さや面積などの単位のもとになっている、メートル法の歴史を紹介します。

1mが生まれたのはフランス

1mという単位は1790年に、フランス革命後のフランスで誕生しました。世界共通で使える長さの単位を定めるため、パリを起点に子午線の計測を行い、地球の子午線における「赤道・北極間の長さの1/1,000万」を1mと定めたことが始まりです。

長さに対して誰もが同じ認識を持つためには、普遍的なものを基準にしなければならなかったので、この案は国際的に採用されました。実際に計測した長さをもとに「メートル原器」が作られ、世界中に公布されます。

メートル原器。1960年まで1mの基準として用いられた。Wikimedia Commons(PD)

以降、1立方デシメートルを「1L(リットル)」、100平方メートルの面積の単位を「1a(アール)」というように、1mを基準に質量や面積が定められるようになりました。

その後、より正確性を高めるために光の速さをもとに定義するようになり、現在に至ります。

度量衡を確認して単位の歴史を紐解こう

度量衡は、長さ・体積・質量などを計るための単位や、その道具を指します。計量の歴史をたどると、地域ごとに度量衡が存在し、統一を図るためには長い時間が必要だったことが分かります。

現代でも日常生活や、歴史を扱った小説などで、尺貫法に出会うことが珍しくありません。昔の日本では、重さや距離の単位を表すものとして当然のように使用され、メートル法と混在していた時期もあると知っていれば、より深く物語の世界を読み解けるでしょう。

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文・構成/HugKum編集部

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