「ヤバい」「キモい」「ガチ」ばかり言う子どもたち。どう対応する?言葉のプロに正解を聞きました!

毎日の会話の中や、咄嗟のリアクションでヤバい、キモい、ウザい、エグいなどの言葉を多用し、「大丈夫かな?」と心配になっているママやパパも多いと思います。2023年6月の発売以来、親子に大反響の本「マンガで笑って、言葉の達人!超こども言いかえ図鑑」(Gakken)の著者でもあり、ブックライター、絵本講師としても活躍する小川晶子さんに「子どもの言葉づかい」についてお話を聞きました。

「ヤバい」「キモい」などの言葉を使う時、気をつけたほうがいい3つのこと

二児の母である著者の小川晶子さん

① 限られたコミュニティの中で使う

小さい頃は、親が使っている言葉をインプットし、子どもは言葉のベースを作っていきます。しかし、小学生になって集団生活がスタートし、友達や先生、メディアなどからも言葉をインプットするようになります。書籍を作るに際して、お子さんがいる方500人ほどにアンケートを取ったのですが、その中でも小学1年生くらいから「子どもの言葉遣いが気になる」という声は多数寄せられました。

  • ヤバい
  • ウザい
  • キモい
  • エグい
  • ガチで
  • このような言葉を子どもから聞いて、びっくりしたという経験がある方も多いのではないでしょうか? つい「そんな言葉遣いはやめなさい」と言いたくなることもあるかもしれません。しかし、このような言葉が、子どもが属しているコミュニティの中の合言葉のようになっていたり、仲間の中で楽しく使われたりして、成立しているのであれば、使っても問題はありません。
    しかし、年下で言葉の意味がわからない子や、目上の人に対して使うなど、相手を選ばずに使うということは良くないことですね。そのため、子どもがふさわしくない場所で「ヤバい」「ウザい」などの言葉を使っていたとしたら、注意が必要です。
  • 逆に、「〇〇ちゃんに『ウザい』って言われた」などと、子どもから報告を受けることがありますよね。『ウザい』と言った子からしたら、または、その子のコミュニティの中では『ウザい』という言葉を軽く使っているのかもしれません。しかし、みんながみんな『ウザい』を軽々しく使えるわけではありません。もし、子どもからそのような報告を受けたら、「もしかしたら、その子は軽い気持ちで言ってしまったのかもしれないね」と、話してあげるといいかもしれません。中には「死ね」「ぶっ殺す」など、暴力的な言葉をかけられることもあります。そんな時も、子どもには「その言葉は、本気で言っているわけではないよ」と伝えてあげたいですね。

② 言葉の意味を理解して使う

「ダルい」の受け取り方で行き違い?

これは、ある中学校の合唱部で実際にあった話なのですが、伴奏者の子が部活に出ずに帰ってしまったことがあり、メールで「なんで来ないの?」と聞いたそうです。すると、「ダルイから」と返信があり、それを聞いたリーダーの子がキレてしまったんだとか。伴奏者の子は体調が悪くて倦怠感があり、そのことを「ダルい」と伝えたのに対し、リーダーの子は「面倒だから」という意味に解釈したのです。
このように、同じ言葉でも違う意味を持ちため、誤解を与えたり、すれ違いのきっかけになることはよくある話。ダルい、ヤバい、ウザいなどの言葉には、その言葉が持つ意味合いやニュアンスに差があることもあります。もし、家庭の中で「ヤバッ!」などと言うことがあれば、

「どんなことが『ヤバい』と思ったの?」

「『ヤバい』以外の言葉で伝えるなら、どのような言葉になるかな?」

という会話をしながら、その時の「ヤバい」の意味を共有するようにしましょう。
意味がわかった上でその言葉を使うのか、大して意味もなくなんとなく出てしまっていることなのか、子ども自身もわかっていないこともあります。

③ 言葉の背景を想像する

例えば子どもが友達に「バカ」と言われたとします。もちろん、その言葉を他人に対して使うのは良くないことではありますが、その言葉の背景を想像する、ということを子どもと一緒にできたらと思います。人によっては、本当に「バカ」だと思っていなくても、まるで相槌かのように使う人もいるかもしれません。また、「バカ」だと思っていなくても、その言葉を言う前に、嫌なことや気になることがあり、イライラしていたことからその言葉が出た。そんな時もあると思います。

今は、この「言葉の背景を想像する」ということが苦手な子どもが増えています。その原因は、SNSの発展に伴い、短文のコミュニケーションが社会の主流となっていることが挙げられます。その短い言葉の応酬をくり返していると、だんだん「言葉の背景を想像する」ということができなくなってきます。そのため、私たち大人が想像することを手伝い、どうやって背景を想像するかを伝えていくのが効果的になります。

【Q&A】子どもの言葉遣いのココに悩んでいます!

ご自身のお子さんも「ヤバい」を使うことがあると話す小川さん

Q1. 小学校に入学すると言葉遣いが悪くなると聞きます。家庭でできる対策はありますか?

A. 絵本の読み聞かせが効果的です

本には言葉や感情の背景が描かれていることが多く、読むことで、言葉の背景を想像することが身につくため、本を読むことが一番おすすめです。
まだ自分で本が読めない年齢、読書が苦手ということであれば、絵本の読み聞かせもいいですね。絵本の読み聞かせ=小さい子というイメージがあるかもしれませんが、小学校高学年でも、中学生でも、読み聞かせをしてあげることはとてもいいことです。絵本に描かれている主人公の心情や、そこに描かれているところがどんな場所なのか、さまざまな描写を通じて、言葉の背景を想像する練習をすることができます。
また、読み聞かせをしてもらった子は、本が好きになるというデータもあります。その年齢でのおすすめ絵本を読むのもいいですが、ママやパパ自身が読みたい絵本を子どもに読んであげると、読んであげる側の大人も一緒に楽しむことができます。

読み聞かせにおすすめの絵本

『くものうえのハリー』

(パイインターナショナル刊)

大切なこひつじを亡くしてしまい悲しみにくれるお母さん。そんなお母さんを雲の上から見ていたハリーは、もう一度お母さんにあいたい! と勇気を出して雲の上からおりていきます。「幸せは、なにげない日常にあるもの」だと気づかせてくれる一冊です。

『のら猫のかみさま』

(星の環会刊)

「かみさま」なんて、いないのだ。何も信じす、誰も頼らず、たったひとりで生きてきたのら猫は、そう思っていました 。そんなのら猫が出会った「かみさま」とは? 優しさに触れられるストーリーです。

Q2. 本を読むのではなく、映像でもいいのでしょうか?

A. 漫画でもいいので、文章を読みましょう

昔から愛されているような名作や、子どもに伝えたいことが描かれている映画ももちろんいいと思います。しかし、映像は情報が一方的に流れてしまいますよね。それが本の場合は、自分のペースで読み進めることができて、わからなかったら戻ったり、いったん止まって考えたりすることができます。そうやって自分で調整しながら、イメージを広げていくことがとても大切だと言えます。

「どうしても本が苦手」という子どもには、怪談話を聞かせるのがおすすめです。怪談話って、気がつくとその世界に引き込まれていて、怖いと思いながらも必死になって話を聞いて、背景を想像するんですよね。抑揚のある語り口調や、独特な言葉選びなど、怪談話にしかない面白さがあります。「死」について語られることも多いので、「死ね!」などと軽々しく使わなくなるきっかけにもなります。私のおすすめは三木大雲さんという住職の方の怪談です。

Q3. 読書はするし、語彙力もある程度はある娘。でも、実際に使っているのは「ヤバい」「マジ?」ばかりです。言葉は知っていても使わなければ、語彙力は失われますか?

A. 日記や作文で実際に言葉を使う機会を持ちましょう

作文を書く機会を持つことが大切。(左のノートは非売品です)

本を読んでいるお子さんなら、言葉の背景を想像するということはできると思います。しかし、語彙力があってたくさんの言葉を知っているなら、実際にその言葉を使いこなせるようになって欲しいですよね。

そんなお子さんには、日記がおすすめです。友達と「ヤバいね」と話したあの時、そのヤバいはどんなヤバいだったのかを残すようにしてみましょう。もしくは、親子で会話している時に「そのヤバいってどういうヤバい?」と聞き出すのもいいですね。

【番外編】作文が苦手な子に良いアドバイスは?

Q. 作文が上達しません。何かコツはありますか?

A. 子どもがどんなテーマなら書きたいかを聞いてみましょう。

学校の課題として出されている作文は、テーマが決められていると思いますが、作文の練習なのであれば、子どもにテーマを決めてもらいましょう。例えば、ゲームが好きな男の子に「お母さんにゲームの良さを教えるための作文を書いて」とお願いします。すると、必死に言葉を選びながらゲームの良さについて語ってくれると思います。そうやって自分の好きなことについて書いているうちに、自分の思いを伝える文章が書けるようになります。

作文は、難しい言葉を使って大人のような知的な文章を書くことが正解ではありません。伝えたい言葉を自分の言葉として、使いこなせているかが大切です。そのためには、「どう思ったの?」「なんで悲しかった?」などと、言葉を引き出すようなコミュニケーションを取ることがおすすめです。

少し上級者向けかもしれませんが、作文の中で“比喩”を使うと、文章に知性を足すことができます。例えば、「雨が強く降っている」ことを「バケツをひっくり返したような土砂降り」と、聞いたことがあるような表現で伝えるのもいいですし、「白い三日月」のことを「大根を半月切りにしたような月」と、自分の感性で伝えるんでもいいと思います。

親子での会話を通して語彙力を伸ばそう

「子どもがスマホやゲームなどを扱うようになると、家族みんながそれぞれのデバイスを持ち、せっかくの家族団欒の時間もスマホやゲームにかかりきりになってしまいがちですよね。しかし、なにげない会話の中で『なんでそう思ったの?』『どうしたらいいと思う?』など、子どもの気持ちを言語化することを意識しましょう。そうすることで、子どもの気持ちを知ることもでき、子ども自身の語彙力を伸ばすこともできます」

小川さんの言う通り、難しい言葉を教えなくても、普段の生活の中でする“親子の会話”に少しフォーカスすることで、子どもの語彙力がアップするのかもしれませんね。

 

小川晶子、川上徹也著Gakken1,430円

言葉の達人とも言える『文豪くん』と『式部さん』というちょっと個性的なふたりが、クラスメイトたちと友情を深めつつ、日本語の面白さとともに多くの言葉を伝えていきます。日常生活はもちろん、中学受験に役立つ言葉も多数掲載!

記事監修

小川晶子|ブックライター、絵本講師
幼い頃から絵本が好きで、幼稚園生の頃の趣味は絵本作り。本と表現に関わる仕事をしたいと、2008年よりフリーのライターになる。『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『プロフィール作成術』(kindle)などの著作を持ち、『読書する人だけがたどりつける場所』(齋藤孝著、SB新書)などベストセラーの制作にも関わる。メディア出演、講演実績多数。2人の男の子の母親でもある。

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