「毛細血管の不思議」髪の毛よりずっと細い!血管の99%を占めるその機能をさらに高めるために【親子で人体を学ぶ】

私たちのからだ中に張り巡らされた毛細血管。直径が1㎜にも満たない、髪の毛よりも細い血管です。毛細血管は、どんな特徴があって、どんな役割があるのでしょうか?「血流をよくする」「血行促進」などと言われるように、毛細血管の流れをよくするために気を付けていくべきことなどもご紹介します。

毛細血管とは?その微細な特徴

毛細血管とは、からだ中に張り巡らされた細い血管のこと。どんなものなのか、具体的に位置や構造などを見ていきましょう。

毛細血管

毛細血管とは、からだの中でもっとも細い血管です。

からだの中を流れる血管には、動脈、静脈、細小動脈、毛細血管の4種類があります。心臓から送り出された血液は、まず動脈という太い血管を通ってからだを巡ります。その太い血管から枝分かれして、細い血管が網の目のよに張り巡らされているのです。その細い血管が毛細血管です。

太い血管から枝分かれして、細い血管が網の目のよに張り巡らされているのが毛細血管
太い血管から枝分かれして、細い血管が網の目のよに張り巡らされているのが毛細血管

毛細血管と動脈をわかりやすく例えると、動脈と静脈は幅が広い高速道路のようなもの。それに対して、狭い路地まで町の隅々まで張り巡らされている小さな道路が毛細血管です。

また、動脈は1秒間に50㎝ほどの速さで流れる場所があるのに対して、からだの末端にある毛細血管では、1秒間に進むのは1cmほどと、血液の流れもゆっくりになります。動脈はできるだけ早く血液を全身に届けることが目的であるのに対して、毛細血管はからだ中に酸素や栄養を届けて物質交換を行うのが目的という点が異なります。

毛細血管の位置と構造

毛細血管があるのは、からだの隅々。からだ中にある血管のすべての長さを足すと約10万kmにもなり、地球を2.5周もするほどの長さになると言われています。そして血管の99%は毛細血管でできているのです。

毛細血管の直径は、8~20マイクロメートル。1マイクロメートルは1000分の1㎜ですから、いかに細い血管かわかるでしょう。髪の毛の10分の1ほどの太さです。

動脈と静脈では、内膜、中膜、外膜と3層構造でできていますが、毛細血管は内皮とそのまわりの細胞壁で構成されています。

他の血管(動脈、静脈)との関係

私たちのからだ中を巡っている血液。そのスタート地点となっているのは心臓です。心臓から、酸素と栄養素を含んだ血液が送り出されて、それが動脈を通って上半身と下半身に送られます。そして、それが枝分かれして毛細血管を通って、からだの隅々まで届けられています。

また血管は、酸素と栄養素を届けたら、帰りにはからだから出た二酸化炭素と老廃物を受け取っていきます。毛細血管はそれらを受け取って、静脈を通って心臓まで送り返しています。

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血液の交換所:毛細血管の役割

毛細血管は、実にさまざまな役割を担っています。主にあるのが、次の5つの働きです。

血液と組織間の物質交換

毛細血管の最初の大切な役割は、血液と組織間の物質交換です。

動脈を通ってからだに必要なものが送り届けられ、また組織から老廃物を受け取って静脈を通って心臓まで送り返します。つまり毛細血管では、からだが必要とする栄養分などと、不要になったものを物質交換しているのです。

酸素供給と二酸化炭素排出の場所

毛細血管が行う物質交換でとくに注目したいのが、酸素と二酸化炭素の交換です。

ご存じのように、私たちは酸素がないと生きていけません。呼吸して肺を通って吸い込んだ酸素は、心臓のポンプ作用で血液に乗ってからだ中に届けられます。そして、毛細血管を通って運びこまれた酸素は毛細血管の薄い血管の壁を通って届けられます。

そして、体内で出た二酸化炭素は同じように毛細血管の壁を通して受け取り、血液に乗って心臓まで戻されて、体外に排出されているのです。

酸素は、心臓のポンプ作用で血液に乗り、毛細血管の薄い血管の壁を通って体中に届けられます
酸素は、心臓のポンプ作用で血液に乗り、毛細血管の薄い血管の壁を通って体中に届けられます

免疫物質を運搬

毛細血管は、ウイルスや細菌が侵入すると、そこに免疫物質を運ぶ役割もあります。血流が悪いと、毛細血管の血流に乗って免疫物質を運ぶ力が低下してしまうため、風邪や病気になりやすくなってしまうのです。

ホルモンを運搬

免疫物質以外にも、毛細血管は他の物質も運びます。それがホルモン。からだの必要な部位に、必要なホルモンを運搬しているのも、毛細血管なのです。

体温の調節

毛細血管の5つ目の働きが、体温の調節です。人の手や足に流れている毛細血管は、もともと皮膚表面の近くにあって、熱を放出しやすいもの。そこで、寒い環境にあると毛細血管を収縮させて、血液を流れにくくして体温が下がりにくいように自動的に調整されているのです。逆に暑い環境では、毛細血管を拡張させて血流をよくして、血管からの熱放出をよくして体温が上がらないように調整されています。

酸素と栄養物の受け渡しの舞台

私たちのからだをくまなく流れる血管。そのほとんどを占めている毛細血管の働きとして最も大切なのが、酸素と栄養を受け渡しです。

細胞への酸素と栄養の供給

血液に含まれる血漿が、毛細血管でわずかにしみだして、「間質液(組織液)」になり、それが細胞内液と混じることによって、一つ一つの細胞に酸素と栄養を届けています。心臓から送り出された血液に乗って、酸素と栄養はこうやってからだ中の細胞まで届けられているのです。

代謝産物の回収と排出

それと同じように、細胞で出た二酸化炭素や代謝産物などの老廃物も、毛細血管に乗って心臓まで戻されていきます。毛細血管は栄養を運搬して、ごみを回収しているのです。

血液をからだ中にめぐらせる循環系において、毛細血管は末端部分をカバーしている
血液をからだ中にめぐらせる循環系において、毛細血管は末端部分をカバーしている

毛細血管の健康を守るために

手や足の指の先端まで、血液を届けている毛細血管の存在。からだを流れる血管の9割以上が毛細血管でできているということを考えれば、毛細血管がいかに大切なのかわかるでしょう。もし毛細血管が劣化してしまえば、隅々まで栄養が届かず、からだのあちこちに不調が出てきてしまいます。

健康的な生活習慣の重要性

まずは、取り入れたいのが運動です。筋肉をつけて、その筋肉を動かすと、血流がよくなります。おまけに基礎代謝が上がったり、血圧が安定したり、ストレス発散になったりと、いいことづくめ。ハードな運動を行って、ムキムキの体を目指す必要はありませんが、すきま時間を見つけて運動を行ったり、エスカレーターではなく階段を使ったりするといいでしょう。

またお風呂では、湯舟に浸かってからだを温めて、全身の血行を良くすることもいい生活習慣です。さらに、睡眠をしっかりとって、健康的な生活を送ることがポイントです。

血流を良くする活動や食生活のヒント

血流に大切なのは、食生活も重要。青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれるためおすすめ。

また、納豆、海藻、野菜などの食物繊維の多い食品もぜひ積極的にとるといいでしょう。

さらに、肉類や揚げ物は中性脂肪やコレステロールが上がって血液がどろどろになりやすいもの。お菓子などの間食などとあわせて、控えめにしましょう。

毛細血管のゴースト化を防ごう!

毛細血管は、あまりの細さのため、血流が滞って“ゴースト化”しやすいのです。血液が最後まで行き届かないと、毛細血管はボロボロになって消失してしまいます。そんなゴースト血管の原因となるのが、睡眠不足や食生活の乱れといった生活習慣や老化です。

ゴースト化した毛細血管をよみがえらせることはできなくても、新しい毛細血管をつくることが可能なんです。そのためには、からだを動かして全身の血流をよくすることが大切です。

毛細血管の大切さを理解して、血のめぐりのいいからだを目指していきませんか?

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