この不調って本当に更年期?『誰でもみんなうつになる』著者ハラユキさんに教えてもらう「うつ」との向き合い方

朝起きても疲れが取れないのは、更年期の症状?それとも...「軽度~中度のうつ」と診断されたイラストレーター・コミックエッセイストのハラユキさんが実体験をもとに、うつの症状の前兆から、うつ抜けしていく過程をじっくり描いたコミックルポ『誰でもみんなうつになる』。本の内容と合わせて、ハラユキさんに当時の症状などについてお話を聞きました。

まさか自分が!?「うつ病のきざし」


まさか自分がうつになるとは!?
几帳面でも神経質でもない(むしろ逆)な性格だというハラユキさんは、うつ病を疑うこともなく、知人の紹介でお祓いに行くことに…。


自分が思っているより弱っているかも。悲しくないのに涙がでてくる。
神社にお祓いに行っても気分は晴れず、むしろ悪化していく一方。悲しくもないのに涙がでたり、もしかしたら自分が思っている以上に弱っているのかもしれないということに気がつきます。

―うつのきざしを感じたときに、自分で特に気になった症状はありましたか?

ハラユキさん:とにかくやる気が出なくて、あらゆるものに対する好奇心が湧かなくなってしまったことです。仕事のモチベーションに関わることなので、本当に困っていました。最初は、仕事で疲れて、燃え尽き症候群状態なのかな、と思っていました。

プチうつを感じたら、やるべきこと


自分でもコントロールできないような気分の浮き沈みが続き、メンタルクリニックを受診することになったハラユキさん。
メンタルクリニックに行こう!と思うまでのハードルが高そうなイメージがありますが、家事育児テーマの連載をしていたときに知り合った精神科医の先生に精神科の基本やうつについて話を聞いたことがあったので、躊躇することなく受診に踏み込めたのだそう。

本の中では各項目ごとに、精神科の先生のコメント付きでわかりやすく、うつの症状や病院選びについてまとめられています。


はじめてのメンタルクリニックに行き、軽度から中度のうつ病と診断され、抗うつ薬を飲みながら治療がはじまりました。

―初めて病院へ行くときに不安に感じたこと、診察後の気持ちの変化はありましたか?

ハラユキさん:もともと、精神科医の知り合いに話を聞いていたこともあり、不安な気持ちは少なかったんです。本の中で監修の先生が、「患者の辛さをある程度想像するための知識があり、辛い人と何度も会ったことがあるのが医療者。病院は、自分に生じた辛い変化がどんな状態なのか意見をもらう場所」という書き方をされてるんですが、実際に行ってみて、その捉え方は的確だなと思いました。

治してもらう場所というより、まずは「プロに意見を聞く場所」というふうに捉えるのがいいのではないかと。まさに私は自分の状態を判断する意見をもらったというかんじでした。

―うつ病と診断されたときの気持ちは?

ハラユキさん:希死念慮や不眠や食欲減退の症状がなかったので、「このレベルでもうつなの!?」という驚きの気持ちが大きかったです。ショックというよりビックリでした。
ですがその一方で、今後もっと症状がひどくなることもありえるので、メンタルクリニックのかかりつけができたことへの安心感もかなりありました。あと、うつ病と診断名がついたことで、自分のストレスや生活を見つめ直そうと決意できました。なので、結果的にはうつと診断されてよかったと思っています。

うつの症状は更年期と勘違いしやすい!?


更年期の症状とうつの症状は似ている?
服薬をはじめてから数日後に体調が悪化し、薬の副反応では?と思いネットで情報を調べてみたものの、当てはまる症状がなく、もしかしたらうつ病ではなく更年期かも!?とうことで婦人科を受診することに。検査を受けた結果、更年期障害ではないことが判明しますが、確かに似た症状で勘違いする人も多そうです。

自分でうつを治す方法


うつ病と診断されてから症状の改善を目指し、さまざまなことを試してきたハラユキさんの経験談や家族との付き合い方もまとめられています。

―婦人科、お祓いなど、メンタルクリニック以外にも診察などに行ってよかったと感じることがあれば教えてください

ハラユキさん:公園の散歩、ストレッチとズンバのクラス、インドカレー屋さん、アーユルヴェーダ、です。うつ治療でカレーって変ですよね笑。もともとスパイスを食べると元気になる性質なのですが、うつになってからは、体がスパイスを欲しているかんじがしたんです。体はしんどいから自分でも謎だったのですが、食べると少しずつ体にパワーが戻ってくる気がしたんです。カレーからの連想で、アーユルヴェーダにも行ってみました。アーユルヴェーダは自律神経の調整にもかなりいいので、とても効果があったと思います。何がいいかは人によって違うので、体の声に耳を済ませて、自分の体が求める場所に行ってみるのが大事なんだと思います。

―自分で試してみて一番効果を感じた方法を教えてください

ハラユキさん:正直に言えば、同時並行していろんなことを試してみたので、どれが一番効果があったのか自分でもよくわからないんです。でも、かなり早くよくなったのは、いろんなことを同時並行でやったからこそだと思っています。いろんなことを試して、自分にあうやり方をたくさん見つけたことで、気持ちが落ちたときのリカバリーカードが増えたかんじがしました。そのことも、精神安定につながった気がしています。

最近疲れているかも…と思ったときに読んでおきたい1冊

「うつ症状入門」であり「精神医療とのつきあい方入門」。子育て中の母でもあるハラユキさんのエピソードは共感できる部分が多く、うつ病になる過程から治療、復調するまでの流れをわかりやすくマンガで紹介しています。自分や家族がうつ病になったときに、落ち着いて行動ができるように読んでおきたい1冊です。

ハラユキさんから子育て中のママ・パパにメッセージ

ハラユキさん:育児って、赤ちゃん時代は心身共にとても大変ですが、その後も形を変えながら大変なことがずっと続きますよね。教育やしつけの悩み、ママ友つきあいやPTAや受験。さらに、新型コロナパンデミックがあったり、震災が起きたり…。
こんな状況で、子どもやいろんなことに毎日対処して頑張ってるんだから、気持ちが落ちたり不安定になるのは当たり前なんです。全然、弱くなんてない。だからこそ、この本のタイトルは「誰でもみんなうつになる」にしたんです。人は誰でも、気持ちが落ちるときがある。だからこそ、自分の状況を他人の状況と比べたりせず、シンプルに「つらいものはつらい」と捉えるのが大事です。認めないと、リカバリーの道がつながらないからです。この本が、うつな気持ちの原因や治療法探しのヒントになればいいなと願っています。

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お話を伺ったのは

ハラユキさん
コミックエッセイスト、イラストレーター。著書に『週末プチ冒険はじめました』(KADOKAWA)、『ほしいのはつかれない家族』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イーストプレス)など。2年間のスペイン滞在をきっかけに、海外でも取材活動をスタート。家事育児分担や家族のコミュニケーションをテーマにしたオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主催・運営中。

■誰でもみんなうつになる 私のプチうつ脱出ガイド

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文/やまさきけいこ

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