小さい時から消極的で人前が苦手な小2の娘。 学校では挙手も発言も一切しません。どう導けばいい?【愛子先生の子育てお悩み相談室】

子育ては日々悩みの連続ですね。保育者歴半世紀あまり。常に子どもに寄り添い、ママたちからの信頼も厚い自主幼稚園「りんごの木」の柴田愛子さんが、豊富な経験を元に、悩めるお母さんにアドバイス。

 

小学2年の長女は、小さいころから消極的。学校での挙手や発表をしたことがありません。少人数でいるときは平気で、お友達からも「学校とは別人だね」と言われるくらいです。夫は精神的な病気が隠れているかもしれないから一度診てもらったらとも。私は病気とは思いませんが、このままだと学校が嫌いになってしまうのでは? と思うことはあります。人前に出ることに慣れていってほしいのですが。

ゆっくりじっくり育っていく子もいます。今、花開かなくちゃいけませんか?

 ご相談のお子さん、私の昔の姿とそっくりです。家庭では「はたち(20歳)」とあだ名をつけられるくらい、口達者で生意気な末っ子でした。が、ひとたび学校へ行くと、黙って口を開きません。しゃべらない、と強い意志があってではなく、話そうとさえ思えないのです。椅子にジッと座っていることはできますが、手を挙げて発言なんてとんでもない。もちろん成績も低空飛行。先生は「やればできる」と言いましたが、やろうという意欲はありませんでした。

今思うと、私はサナギだったのだと思います。薄いベールの中に身をおき、安全地帯から外の世界を眺めていたのです。サナギは死んでいません。眠ってもいません。ちゃんと中で生きて育っているのです。そして「あの先生はえこひいきをするから信用できない」「あの子は乱暴だけどまずい牛乳をおかわりできるからえらい」と、今でも覚えているくらい観察していました。私がサナギから抜け出しはじめたのは、中学2年。身をすべて外界へ出したのは高校生でした。

そのくらい、ゆっくりじっくり育っていくこともあるのです。

サナギが元気に育つためには、居心地がいいことが大事です。学校では本領発揮といかないお子さんですから、心も体も固くなっていることでしょう。帰ってきて発散できていれば大丈夫。家で自分を解放できていれば、学校で静かにしているなんてどうということはありません。

子どもは自分で自分を育てていきます。自信は自分を受け入れてもらえる体験を積みながらついていくもの

質問には続きがあり、赤ちゃんのころからを振り返りあれこれ分析されています。どう導いてあげたらいいのかと思う気持ちはわかりますが、親の分析はわが子の心情の事実とは限りません。もし、母親の分析が当たっていたとしても、それをどうしろというのでしょう? 今、お子さんは精一杯生きている。それでいいじゃないですか。

私が元気なサナギでいられたのは両親のおかげだと思っています。毎朝おなかが痛くなっていた私を母は黙って膝に抱き、手をおなかに当ててくれました。すると「学校行こうかな」と自分から立ち上がる気になったものです。遅刻や忘れものが多く担任に呼び出されたときも「なんだって?」と聞く私に「たいしたことじゃないから気にしなくていいよ」と言ってくれました。ありのままの私に注文をつけることはありませんでした。

子どもは自分で自分を育てていきます。自信は一気に身につくものではなく、自分を受け入れてもらえる体験を積みながら徐々についていくのではないでしょうか?

記事監修

柴田愛子|保育者・自主幼稚園りんごの木代表

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて36年。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。

イラスト/海谷泰水

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