新型コロナがシュウソクする。の「シュウソク」は「終息」「収束」どっち?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

「終息」と「収束」。意味の違いはわかりますか?

コロナは今年(2023年)5月から5類感染症に移行され、感染状況の公表内容も定点医療機関からの報告に変更になりました。ただ、5類移行直後は感染者数が増加し、第9波か、などとも言われましたが、現在は落ち着いているようです。このまま感染は「収束」し、さらには「終息」に向かうのでしょうか。

 さて、ここからはことばに関する話です。私は「収束」と「終息」という、どちらも「シュウソク」と読む語を使い分けてみたのですが、意味の違いはわかりますか?

 この2語は同義語ではありませんが、かなり意味の近い語です。そのためでしょうか、「新型コロナのシュウソク」と書いたり言ったりするとき、どちらを使うのかけっこう混乱しているようです。

どちらも、感染症がおさまるという意味で使われているのですから、どっちを使っても問題はなさそうです。でもいい機会ですから、ここで意味の違いをはっきりさせておきましょう。

「収束」は収まりがつく、という意味

辞書的に説明するとこのようなことになります。

「収束」は、文字通り集めてたばねるということです。これから、ばらばらになっていたり混乱していたりしたものが一つにまとまって、収まりがつくという意味になります。

「終息」は物事が終わること

「終息」は、「終」は物事がおわること、「息」はやむこと、とまることという意味です。

これを新型コロナウィルス感染症に当てはめてみると、こういうことになるでしょう。「収束」は感染者の数を小さくおさめることです。従って、感染者がまだ出ていたとしても、新たな感染者は減少し始めている状態ということになります。

これに対して「終息」は、感染が終わりを告げて、新規の感染者がほとんど出なくなった状態ということになります。つまり、新型コロナではまずは「収束」を目指し、最終的には「終息」を目標にするということになります。

現在の感染状況を見ると、いちおう「収束」に向かいつつあると言えるかもしれません。このままの状況が続き、「終息」したと言える日が一日も早く訪れることを心から願っています。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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