知ってますか?「あがる」「のぼる」の使い方の違い【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

上への移動を表す「あがる」と「のぼる」。どう違うの?

「あがる」と「のぼる」は、どちらも上への移動を表すという点で共通する類義語です。ではその違いは何かと聞かれたら、すぐに答えられますか?

 結論から先に言いますと、この2語の意味の違いは、どこに焦点があるかの違いです。

「あがる」は到達点に焦点があって、そこに達することを表すのに対して、「のぼる」は経過・過程・経路に焦点があるのです。

少し細かな話になりますが、具体例で見てみましょう。

「あがる」は到達点、「のぼる」は経過を表す

「坂道を上がる(登る)」「階段を上がる(登る)」「煙が上がる(昇る)」などでは、どちらの語も使えます。ただ、これらの場合も、「あがる」は到達点(坂道の上・階段の上・空の上)に焦点があり、「のぼる」は途中の状態に焦点があります。従って、「はしごを登って、屋根に上がる」とか、「山道を登って、展望台に上がる」という使い分けができるわけです。

ただ、おもしろいのは、同じ「煙」でも、合図や警報などのために使う「狼煙(のろし)」は、「あがる」とは言いますが、「のぼる」とは言いません。「狼煙」は上に移動する途中の状態には意味がなく、上に達した状態に意味があるからなのでしょう。

「舞台に上がる」「座敷に上がる」「プールから上がる」「席次が上がる」なども「登る」は使いません。これも途中の経過を考える必要がなく、到達することに意味があるからです。

「あがる」「のぼる」の違いは、細かな点を見ていくとさらにありますが、「あがる」=到達点、「のぼる」=経過だと理解していれば、おおかたの説明はできます。

「あがる」「のぼる」の漢字表記について

なお以下は蛇足です。ただ少し大事な話なので、おぼえておいても損はないでしょう。「あがる」「のぼる」の漢字表記についてです。

ふつう「あがる」は「上がる」「挙がる」「揚がる」と書き、「のぼる」は「上る」「登る」「昇る」と書きます。

これらの漢字の使い分けはどう考えたらいいのでしょうか。

これについては、2014年に発表された文化審議会国語分科会による「『異字同訓』の漢字の使い分け例(報告)」がわかりやすいと思います。それによりますと、「あがる(あげる)」の漢字の使い分けは以下のように説明されています。

 【上がる・上げる】位置・程度などが高い方に動く。与える。声や音を出す。終わる。

【揚がる・揚げる】空中に浮かぶ。場所を移す。油で調理する。

【挙がる・挙げる】はっきりと示す。結果を残す。執り行う。こぞってする。捕らえる。

「登る」は確実に上がっていく様子、「昇る」は一気に上がっていく様子を表すときに使う

この場合は「登る」

「あがる」の使い分けは比較的容易かもしれません。

「のぼる」の使い分けに関しては、以下のような注記があります。

 「上る」は広く一般に用いるが,「登る」は急坂や山道などを一歩一歩確実に上がっていく様子,「昇る」は一気に上がっていく様子を表すのに用いることが多い。

 「のぼる」は、上の方向に移動するその移動の仕方や速度によって語を使い分けるということなのです。

こちらの「違い」のウンチクは知ってますか?気になる方はぜひ読んでみてください。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。

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