子連れで被災!どうすれば?!
いつきてもおかしくはない、首都直下型の大震災。都内に住む筆者も子連れで被災した時は、どうしたら良いのかというが大きな課題です。防災食など一応の備えはあるものの、特に子どものいる家庭では、子どもの成長とともに備蓄品などの頻繁な見直しが必要になります。
また、昔の防災対策が今では非常識なことも。子連れ被災については、分からないことも多く、都内でオープンハウスグループが協賛する在宅避難啓蒙のイベントがあるということで参加してきました。
耐災力をつける講座
「一般社団法人BABYSHOWER JAPAN」が運営する産前・産後ママのための「両親学級」の一つで、3月のテーマは「防災と在宅避難」。
被災経験のあるイラストレーターのアベナオミさんから大地震への備えや、今からできる生存率に関わる家の対策、在宅避難のポイントを経験談も交えてお話を聞くことができました。また、在宅避難時の食の備蓄方法については、「デイリーストックアクション」の代表理事の池上紗織さんから、防災食のローリングストックの方法などを伺いました。
子連れ家庭 基本は在宅避難
教えてくれたのは アベナオミさん(イラストレーター・防災士)
災害時、東京都心では避難所が足りず75%が避難所難民化するというデータがあります。自宅が無事であるのが確認できれば、東京都でも在宅避難を推奨しています。この在宅避難の準備が各家庭できちんとできていれば、本当に必要な人に物資や救助をまわすことにでき、早い復興にもつながります。
東日本大震災を経験したイラストレーターであり、防災士の資格を持つアベナオミさんから、子連れでの在宅避難について、実体験をもとにお話を聞くことができました。
家族はバラバラに被災する可能性が高い
アベさんは、お子さんが1歳7ヶ月の時に東日本大震災を経験しました。午後の時間帯だったので、お子さんは保育園、旦那さんは海岸に近い仕事場とバラバラでした。
アベさんは移動中の車内で被災、子どもがミニカーを振り回しているような衝撃だったとのことです。保育園ではお昼寝の時間ということで、児童は一部屋に集まっていて、先生の咄嗟の判断で布団にくるまることで怪我もなく無事でした。
家族が会えたのは夜
この時、今思えばやってはいけない判断だったと後悔したそうですが、沿岸部にいる夫の様子が気になり、車で迎えに行くことに。たまたま海辺の国道ではなく山道を通り、結局その道も閉鎖されて自宅に戻ることに。
後で聞くと国道は津波で壊滅。そちらを通っていたら命はなかったかもしれなかったそう。夫は同僚と高台に避難。結局、家族が出会えたのは夜の10時を過ぎてからでした。
避難で重要なこと
家族が必ずしも一緒にいる訳ではないことを常に意識しておくこと、お迎えの行き違いがないように学校と情報を交換しておくことが大切です。アベさんいわく、良かれと思って近所の人が送迎に行って、そのまま津波に巻き込まれてしまったというケースがあるそうです。
在宅避難の重要ポイント!
アベさんの自宅は幸い無事で、在宅避難を選ぶことに。お子さんにハウスダストや小麦、卵などアレルギーがあり、避難所に行くほうが命の危険があると判断したという理由もあります。
まず防災トイレを準備する!
食料や水はある程度の時間は我慢することはできます。しかし、待ったなしで必要になるのはトイレ! 東日本大震災では、仮設トイレが避難所に行き渡るまでに1週間以上かかった地域が50%にものぼったそう。
今回のイベントの参加者も、食品の備蓄はあっても、非常用のトイレの準備があるという方は少なかったです。水や食料に比べて、後回しになりがちな防災トイレの備蓄も非常に重要です。
筆者宅も防災トイレを用意していますが、一般的な防災トイレは「トイレ」というラベルもあり、物置などにしまいがち。ストック用とは別に、いざという時にすぐに取り出せるように、KING JIMの防災シリーズもオススメです。事務用品の会社の防災用品だけあって、箱がA4とA5 ファイルサイズに統一されていて、オフィスや自宅の本棚にすっきり収まります。
イベントでは、トイレとは想像ができない素敵な防災トイレ「sonae 備絵」も紹介されました。アートとしてリビングに飾ることもできて、身近にあることで防災意識も高めることできる素晴らしい商品です。
水を確保する!
飲料と生活用水を含め、一日一人3リットルは必要になります。断水は長引く可能性もあるので、理想は30日分ですが、スペースの問題で難しいと思うので、1週間分は最低用意したいものです。「東京備蓄ナビ」によると、夫婦+子ども2人の4人家族が、自宅で地震後の1週間乗り切るためには合計76リットル必要になります。2リットルのペットボトルで40本近くになります。(子どもの年齢で多少変わります。)
アベさんは定期的に配達して貰えるウォーターサーバーの利用をおススメしていました。ただし、サーバーは、電源が切れた時に手動でも使えるタイプを選ぶことが大切です。
お風呂にお水を貯めるのはNG!?
飲み水以外の生活用水を確保する時に、お風呂の水を貯めておくという方法があります。東日本大震災レベルの震度だと、お風呂釜の半分以上の水がある場合、ほとんど溢れ出てしまうとのこと。倒壊を免れても自宅が水浸しになってしまう被害もあったそう。
また、そのくみ水も実際に使うのは難しいようです。震災後の上下水道は詰まりやすく、トイレでくみ水を使うことはできません。飲料や洗い物に使うにも衛生面で不安があります。水浸しになる被害の可能性が高いことを考えても、使い道の少ない水を溜めておくよりは、給水袋など個別に貯水するのがベストだそう。
給水袋は、断水時の給水にも利用出来るよう、持ち運べる10リットルくらいまでのものがオススメ。昔の防災対策が現代では合わないということもあるので、情報のアップデートも大切です!
食料を確保する
東日本大震災で被災した当時、アベさんのご家庭の備蓄は少なく、初めの1週間はまともに3食を食べることができませんでした。また、数日後に開店したスーパーは徹夜の行列で、乳飲み子を抱えて並ぶことは大変だったそう。さらに、避難所でも並んだ人しか食料は受け取ることができず、自宅にいる子どもの分は確保できない状態でした。
食料確保は切実な問題です。食料についても「東京備蓄ナビ」でチェックできますので、確認してみてくださいね。
セーフティゾーンを作る
普段から、家具が倒れない、窓ガラスが飛び散らないなど、家の中で安全な場所を作るのが重要。アベさんは、大きな家具がなく、家族が集まりやすいローテブルを挟んだテレビの前のソファーをセーフティゾーンと決めているそうです。
会場では「机の下でなくてもいいの?」という声もありましたが、築浅で耐震構造がしっかりしている建物であれば、机の下が最も安全とは限らないので個々で判断してくださいとのことでした。
防災グッズの置き場所の確認
会場でもママしか防災のストック置き場を知らないという方も多く、実際被災された方のお話でもママが帰って来るまで懐中電灯の場所が分からず真っ暗なままだったというお話も聞きました。もちろん、パパが管理しているという場合もあると思うので、防災グッズや備蓄品については、子どもも含めてすぐに使えるように、家族で置き場所の情報を共有しておくことが大切です。
常温保存ができれば防災食
在宅避難時の食の備蓄方法について、「デイリーストックアクション」代表理事の池上紗織さんから詳しくお話を聞くことができました。
池上さんもアベさんも、常温保存ができて三日以上もてば、立派な防災食と話しており、数年以上保存できないと非常食にならないと思っていた筆者も目から鱗のアドバイスでした。
普段からレトルトの味に慣れることも大切
防災食というとどうしても構えてしまい、長期間保存のものを考えがちですが、常温保存ができるものは防災時にとても役立ちます。スーパーで買える常温保存できる茹で野菜のパックやレトルト食品などを普段から食べ慣れていることも大切だと池上さんは話してくれました。
何年も保存できるものは、いざとなった時に見つからなかったり、賞味期限が切れていたりすることも。ローリングストックとして常温保存の食品を上手く活用しましょう。急いでいるときには家事の時短にもなり、耐災力も上がり、まさに一石二鳥です!
家族の非常事態に強い味方!
災害ではなくても、子育て中の家庭ではいろいろな事が起こります。体調不良で夕食が作れないといった時に活用し、使い方や味に慣れておくのも大切だと思います。特に子どもは初めてのものは食べたがりません。普段の食事にぜひ取り入れてみてください。
災害時に缶詰や瓶はゴミが増えてしまう
缶詰や瓶のほうが長持ちするので良いと思われる方も多いと思いますが、池上さん曰く、災害時に問題になるのがゴミ。ローリングストックであれば、何年も長期保存する必要はないので、丸めて小さくなるパウチで常温保存できる食材を取り入れるのがおすすめです。
添加物などが不安…
食品や缶詰が長期保存が可能なのは、特殊な熱処理をしているためで、保存料が多めに入っているから常温保存が可能という訳ではありません。無添加のレトルト食品もたくさん出ているので成分表を確かめるとよいでしょう。
ちなみに、なんちゃってキャンパーの筆者はレトルト食品を試すのが趣味。保存料・着色料不使用で、普段の食事としても防災食としてもイチオシは、ドウシシャの「シェフズストックシリーズ」。「SDGs・災害食大賞c2023」の優秀賞を受賞した商品で、レトルトでも製造から5年の長期保存ができ、湯煎した後にそのままパウチから食べられるのも非常時に助かります。
「耐災力」を上げる大切さ
今回、イベントで、被災した方の生の情報を聞くことで、災害時に耐えるための「耐災力」を底上げする知識をつけることができたと実感。防災というと構えてしまいますが、今回お聞きしたことは、子育てに追われる忙しい日々の中でも無理なくできることばかり。小さなアクションが命を守ることに繋がります。
まずは、東京備蓄ナビでどれくらいの備蓄が必要なのか確認し、できる範囲で、在宅避難の準備をしてみてはいかがでしょうか?
「パパ・ママのための災害対策・在宅避難啓蒙イベント」
場所:オープンハウス・ディベロップメント 渋谷ショールーム
主催:BABYSHOWER JAPAN 代表理事 池上真麻
ゲスト:デイリーストックアクション 代表理事 池上紗織
アベナオミ(イラストレーター・防災士 ・東日本大震災で被災)
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取材・文/ Rina Ota