GW明け「学校に行きたくない」という子どもに無理やり理由を聞き出すのはNG?モンテッソーリ流に解決する対応とは

ママやパパのお悩みに寄り添った連載「モンテッソーリ教師あきえの子育てROOM」。モンテッソーリ教育は、0~6歳までの乳幼児期にスポットを当てたコンテンツが多いですが、今回は「小学生」をテーマにしたお悩みをお届け! 小学2年生の娘さんがいるあきえ先生に、子どもが「学校に行きたくない」と言った時について、話をうかがいました。

GW明けは学校の行き渋りが増えるタイミング

4月に入学や進級をした子どもたちは、環境が変わり、そわそわした日々を過ごしているかもしれません。約3週間の学校生活のあとに待っているのがGW。友達と遊ぶ、帰省、お出かけなど、さまざま楽しいイベントを予定して、子どもも親も楽しい連休はあっという間。GW明けには日常が戻ってきます。大人でも適応できないことがあるくらいなので、子どもならばなおさら「学校に行きたくない」という気持ちになってしまう場合も多いかもしれません。
そんな時、どんな風に対応すればいいか、あきえ先生にお話をうかがいました。

「学校に行きたくない」対応 ①子どもと対話をする

「お友達ができない」「先生がこわい」「勉強したくない」など、さまざまな理由から学校に行くことを嫌がることがあると思います。子どもが言っていることが全てではないし、本人すら何が嫌なのかわからなかったり、わかっていてもうまく言語化できなかったりします。そんな時は、まず対話をしてみてください。

具体的な声かけ例

  • 「お友達ができないんだね。〇〇ちゃんは、どうやったらお友達ができると思う?」
  • 「先生がこわいって思ったんだね。どんなところがこわいと感じた?」
  • 「勉強をするのが嫌なんだね。どうしたらそう思わなくなるか一緒に考えようね」

この時に大事なのが、子どもの言っていることをジャッジしないということです。
NGな声かけは、「お友達ができないのはかわいそう」「先生がこわくするのはだめなこと」「勉強は楽しいもの」などです。このように良し悪しをつけることなく、まずは「そうだったんだね」と受け止めてあげるようにしましょう。子どもが「嫌」というのは環境に適応できていない証拠なので、その気持ちをまるっと受け止めるためにも、まずはじっくり対話をしましょう。

「学校に行きたくない」対応②適応を助ける

私たち大人でも、休み明けに仕事に行ったり、転職したての会社に行ったりすることを「嫌だな」と、感じることがあるように、子どもにも当然そういうことがあります。大人は「2日がんばれば楽しいことがある」「仕事のあとに好きなものを食べよう」なんて考えて、嫌だと思っていることにも適応していくことができます。しかし、小学生ではそれが難しいこともあるので、大人が勇気づけて励まし、適応を助けてあげましょう。

具体的な声かけ例(子どもと対話をした後)

  • 「お友達作りたい時、ママだったら『おはよう』って言ってみるかな。明日の朝、一緒に言ってみようか?」
  • 「先生のことこわいって思ったら、またパパに教えてね。〇〇くんでは解決できないようなら、パパが先生と話をしてみるから」
  • 「足し算が苦手なんだね。ここは合っているから。小さい数の足し算から一緒にやってみようか」

子どもと対話をして気持ちをいったん受け止めたら、「じゃあこれからどうする?」の部分を話していきましょう。
NGな声かけは、「友達を作りたいならあいさつしたら?」「先生って本当にこわいの?」「ちゃんと授業を聞いていれば足し算なんて簡単」。対話や受け止めることなく、このように伝えてしまうと「お母さんは私の気持ちをわかってくれない」と、思うかもしれません。
子どもと対話をして、しっかりと受け止めることで、「お母さんに話してよかった」という信頼関係を築くことができます。そして、子どもの障害になっているものを少し整備するだけで、環境に適応できるようになります。

学年によって行きたくない理由は違うかも?

今までお話した「対話する」「適応を助ける」は、年齢を問わず有効な方法ですが、学年によってはそれぞれの問題を抱えていることがあります。

小学3~4年生「9歳の壁」

客観的な視点で物事を見られるようになったり、算数の抽象度が上がったりすることから、小学3~4年生は「どうせできない」「私なんて」と、くじけてしまうことがあります。そして、授業についていけないことがきっかけで、学校に行くことが嫌になることも……。しかし、本人はそれが理由だと気づいていないこともあるので、「友達ができない」「先生がこわい」などの理由をつけて、「学校に行きたくない」と、言っていることもあります。この場合も、子どもと対話することで根本の原因を探り、解決の糸口を見つけることができるかもしれません。

小学5~6年生「思春期の始まり」

高学年になると、思春期に突入することもあり、イヤイヤ期の頃のように、わかりやすく「イヤ!」を表してくれなくなりますよね。友人関係や男女の違いなども芽生え始め、親には見えない部分で子どもが悩んでいることもあると思います。
いつもとちょっと様子が違うなと感じる時も「何があったの?言ってみて」と、相手のパーソナルスペースに土足で入ってしまうと、子どもは余計に閉ざしてしまうことがあります。そこは、子どものタイプにもよると思いますが、「何かあったら言ってね」と言って様子を見たり、2人で近所にお出かけしたりして、何も話せなかったとしても、1対1で過ごす時間を持つことで満たされる子もいます。悩んでいることがあったとしても、それを聞いて欲しいのは親ではなく、友達と言う場合もあります。子どもに合ったアプローチの仕方をしてあげるといいでしょう。

学校以外で補える機会と環境が必要

小学生の時期である児童期は、社会的にも身体的にも発達する時期なので、睡眠や栄養はもちろんのこと、日光に当たることや運動をすることなどの規則正しい生活を送ることが欠かせません。認知発達もしている時期です。
今は非認知能力(意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性、自制心、創造性、コミュニケーション能力といった、測定できない個人の特性による能力のこと全般)が大事とされていますが、認知能力(言語能力、論理能力、数学的能力などのいわゆる知能)と非認知能力は相互に作用しながら、発達していくものです。そのため、家族や友達と会話をすることはもちろん、自宅学習やフリースクール、地域の体験など、学びやコミュニケーションの機会や環境を用意してあげることが大切です。

「学校に行きたくない」に大切なのは対話&適応を助けること

子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、心配だからこそ「何があったの?」と無理やり聞き出したり、「行かなくていい」と理由も聞かずにOKしたりすることもあるかもしれません。しかし、そこはいったんしっかりと対話をし、子どもの気持ちを聞いた上で「あなたはそう思ったのね」と、受け止めてあげるのがいいですね。そして、どうやったら子どもが適応していけるかを考え、その子に合った方法で適応を助けてあげるようにしましょう。

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記事監修

国際モンテッソーリ教師(AMI)
モンテッソーリ教師あきえ

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。2021年1月に初著書「モンテッソーリ教育が教えてくれた『信じる』子育て」(すばる舎)、2022年3月に「モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック」(宝島社)を出版。

モンテッソーリ教師あきえHP

あきえ先生主宰オンラインスクールMontessori Parents

取材/本間綾

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