「乗り物酔い」はなぜ起きる?
ゆーまん博士の「説明しよう!」
せっかくの楽しい旅行も台無しにする乗り物酔い。なぜ車酔いや船酔いが起きるのだろう? 防ぐ方法はあるのだろうか。
乗り物酔いがどうして起きるのか? 実は原因は耳の奥にあるんだよね。パパはお腹の中が揺れるからだと思っていたみたいだけど、問題は耳と脳なんだ。
耳の奥には、カタツムリの殻のような形をした内耳がある。内耳には体が動く速度と向きをキャッチする三半規管と平衡感覚を司る耳石があって、体の位置や速度を測り、体のバランスをとっている。
スマホにも方角や速度を測るセンサーが入っていて、地図ソフトを正確に動かしたり、万歩計で歩数を測ったりするよね? その機能は人間の場合は内耳の役割なんだよ。
乗り物酔いの原因は、三半規管と耳石器の体の感覚と、目から入ってくる景色、皮膚や関節などから入ってくる揺れの感覚がうまくかみ合わないためだと考えられている。
自分で走る時は、脳は体がどう揺れるのか理解しているので、酔うことはない。でも乗り物は別だ。
人間が乗り物に乗るようになったのは、ほんの数百年のことだ。時速100キロで動くことなんて、人類誕生から今までなかった。だから乗り物に乗ることに脳は慣れていないんだ。外の景色は時速100キロで流れていくのに、車内の景色は変わらない。脳はそこが理解できずに混乱する。
脳が混乱するとヒスタミンをはじめとするストレスホルモンが出る。乗り物酔いをしやすい人はストレスホルモンの出る量が多く、そのせいで自律神経が興奮し、吐き気やめまい、頭痛などが起きる。
乗り物酔いを防ぐには…
乗り物酔いを酔い止め薬以外で防ぐことは難しいが、多少は楽にする方法ならある。まず脳の混乱を抑えるため、遠くの景色を見るようにする。移動中でも、遠くの山や雲はあまり動かないので脳の混乱を抑えられる。
呼吸を深くゆっくりにする。これは南極調査船でわかったことで、船酔いしにくい人は呼吸が深く、呼気に二酸化炭素が多いのだそうだ。深呼吸をして、乗り物酔いを抑えよう。
ミントガムを噛むのもいいそうだ。三重大学とお菓子メーカーの共同研究で、ミントガムを噛んでいると乗り物酔いの不快感が薄らいだという。実験にはミントガムが使われたが、噛むことに効果があるそうなので、ミント味にこだわらず、コーヒー味でもソーダ味もかまわない。
空腹も満腹も良くないし、何より急停止や急発進、速度の上下が乗り物酔いの原因だ。運転は丁寧にやさしく行おう。
ゆーまん博士のワンポイント
●乗り物酔いの原因は、脳と三半規管が受け取る情報の混乱
●乗り物酔いを防ぐには「遠くの景色を見る」「呼吸は深くゆっくり」「ガムを噛む」
●空腹と満腹時の乗車を避け、運転もやさしくおだやかを心がけて
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構成・文/川口友万 漫画/まめこ
参考:「乗り物酔い (動揺病) 研究の現状と今後の展望」(人間工学 2006年42巻3号)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje1965/42/3/42_3_200/_pdf/-char/ja
「乗り物酔いは克服できるの? 対策を考える」(サワイ健康推進課 2022年3月)
https://kenko.sawai.co.jp/theme/202203.html
「南極航海中の船酔い研究 ~呼気中の二酸化炭素濃度との関係」(国立極地研究所 2017年10月16日)
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20171016.html
「ミントガムによる乗り物酔い軽減効果」(人間工学(2023年59巻5号))
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002135.000002360.html
https://www.lotte.co.jp/kamukoto/body/63
「”噛むこと”と”自動車”の関係 自動車運転・乗り物酔いに関する効果を解説します」
https://www.lotte.co.jp/kamukoto/body/63#