「NATOって何?」と聞かれたら答えられる? ウクライナ侵攻以降、よく耳にするNATOを分かりやすく解説【親子で語る国際問題】

いま知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、ロシアによるウクライナ侵攻以降、頻繁に耳にするNATOについて、学びます。

NATOは多国間の軍事同盟

一昨年2月にロシアがウクライナへ侵攻して以降、新聞やテレビでNATOという言葉をよく耳にするようになりました。NATOとは何なのでしょうか。

NATOとは、北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization)のことで、2次世界大戦後の19494月に誕生した多国間の軍事同盟です。加盟国は米国とカナダの北米2カ国と欧州30カ国の計32カ国で、発足当時は米国、カナダ、英国、フランス、イタリアなど12カ国でしたが、その後冷戦が終結して以降、1999年にポーランド、チェコ、ハンガリー、2004年にルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、そしてエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国が加盟するなど、NATOは東方へ拡大していきました。NATOの最大のポイントは、NATOが集団防衛体制になっているということです。NATO条約の5条には、加盟国1国に対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなし、当該国へ反撃などの対応をとる集団的自衛権の行使が規定されています。

ウクライナ侵攻以降、近隣の国々は次々とNATOに加盟

このNATOがテレビや新聞で頻繁に取り上げられるようなったきっかけが、ロシアによるウクライナ侵攻です。2014年のロシアによるクリミア併合など、欧州、特にロシアと距離が近い東欧諸国を中心にロシアへの警戒はありましたが、今日のウクライナ侵攻はその警戒を決定的なものにしました。

ロシアは長年、NATOの東方拡大に強く反発してきましたが、ロシアがウクライナに侵攻したことで、NATOに加盟していなかったフィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟を急ピッチで進め、フィンランドが昨年4月、スウェーデンが今年3月に正式に加盟しました。ロシアと隣接するフィンランドは自国だけではロシアの軍事力には到底対処できないので、NATOの傘の下に入ることで自国の安全を担保しようとしたのです。フィンランドがNATOに入ると、ロシアとしてもフィンランドに侵攻すれば32カ国を相手にすることになるので、迂闊な行動を取れなくなりました。

ウクライナが攻撃された理由のひとつは、NATOに加盟していなかったから

また、ウクライナと同じく旧ソ連圏を構成したバルト3国もNATOに加盟しましたが、仮に加盟していなければ今日のウクライナのような状況になっていた可能性もあります。ウクライナが侵攻を受けたのはNATOに加盟していなかったことが大きな要因であり、プーチン大統領はウクライナがNATOに加盟しようとしていたので、それを防ぐ目的で侵攻したとも指摘されています。

ウクライナの隣に同じく旧ソ連圏に入っていたモルドバという小さな国がありますが、モルドバもNATOに加盟しておらず、ロシアへの警戒を強めており、今後はモルドバのNATO加盟へのプロセスが進む可能性もあります。

この記事のポイント

①NATO(北大西洋条約機構)は、19494月に誕生した多国間の軍事同盟

②NATO加盟国1国に対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなされ、ロシアはNATO加盟国への攻撃がしにくい

③ウクライナが侵攻されたのはNATOに加盟していなかったことが原因のひとつであり、周辺の未加盟国は加盟を急いでいる

記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う

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