反ロシアの欧米や日本では、経済制裁のほか企業の撤退ドミノも
ロシアによるウクライナ侵攻から2年が過ぎますが、プーチン大統領は4月に新たに15万人を動員する大統領令に署名し、ロシアは今後ウクライナでの攻勢を強化する見込みです。米国によるウクライナへの軍事支援を可能にする法案も可決され、今後双方の間で再び戦闘がエスカレートすることが懸念されます。
欧米や日本は侵略したロシアを強く非難し、ロシアへの経済制裁を強化し、多くの企業がロシアから撤退しました。マクドナルドやスターバックス、アップルなどの世界的な米国企業のほか、トヨタや日産、マツダなど日本の大手自動車メーカーの間でも撤退ドミノが発生しました。
世界中が反ロシアな訳ではない
日本国内にいると、当然ですが「ロシアが加害者、ウクライナが被害者」という認識で、世界が一体となってロシアに対峙しているように見えますが、実態は全くそうなっていません。先に結論になりますが、各国はそれぞれの国益に基づき、それぞれのスタンスでロシア外交を展開しています。
2022年3月、国連総会ではロシア非難決議が賛成多数(141カ国)で採択されましたが、ロシアのほかに北朝鮮とシリア、エリトリア、ベラルーシの5カ国が反対、中国など35カ国が棄権に回りました。そして、欧米や日本など141カ国が賛成に回りましたが、過半数以上の国はそれ以上のことはしていないのが実状です。
ロシアとの関係を深めている国も多く存在
冒頭でも指摘しましたが、欧米や日本、韓国や台湾、オーストラリアなどはロシアへの制裁を強化しましたが、その数は40カ国ほどしかありません。非常に親日的な東南アジアの国々でも、ロシアへの制裁を行っているのはシンガポールくらいです。インドのモディ首相がウズベキスタンでの会議で、プーチン大統領に「今は戦争をしているときではない」と釘を刺したことはありましたが、インドは長年ロシア製の武器に依存し、エネルギー分野ではロシアとの関係をむしろ強化しています。中国も同様で、ウクライナ侵攻自体を良く思っているわけではありませんが、欧米によるロシアへの制裁により、ロシア産エネルギーの価格が安くなり、中国もロシアとのエネルギー分野を中心とする経済関係を深めています。これは中東やアフリカ、中南米の国々の間でも同じでしょう。
このような状況は、プーチン大統領にとっては大きな安心材料になります。欧米などから経済制裁を発動されても、他の国々との関係を強化すればその影響を極力回避できることで、ロシアは欧米に対してもっと強い態度で臨むことができます。
この記事のポイント
①ロシアによるウクライナ侵攻により、欧米や日本の多くの企業が撤退し、経済制裁も行っている。
②それぞれの国が国益に基づき、ロシアと外交を続けており、中には関係を深める国もある。
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う